ギリギリ探偵白書・57(前)


 ギリギリ探偵白書



天気の良い日であった。
雲一つない青空というのは、こういう空かと思わせるほど快晴であった。

その日、私(阿部)は、前日からの雑務に追われ
事務員さんのようにパチパチ計算をしていた。


阿部    「う~ん、調査に出た方が楽だなぁ・・・・」


こういう時、私は事務所の側にある貝塚公園へ散歩に出掛ける。
公園内には、小さな水路があり、その水路は小さな池に繋がっていて
鯉が泳いでいるのだ。

公園には、保育士さんが園児を大きなカゴに乗せ、運んできていた。

私は缶コーヒーのプルトップを空け、タバコに火をつけた。

チビッ子達は大はしゃぎで走り出している。


(元気がいいなぁ・・・・。)


ボケーッとしながら空を仰いでいると、差すような視線を感じた。


(んっ、何だ?)


そこには、一人の園児が私の方を身を固めて私を凝視している。


(何だ?このちびっ子は?)


園児   「おじさん!!リストラされたの!!」

阿部   「えっ?リストラ?おいおい・・・・」

保育士さん「こら、タックン、そういう事言っちゃダメよ。
      傷付くでしょ!!おじさんが!!」

阿部   「おいおい、おりゃ、休憩だぞ。りすと・・・」

保育士さん「はい、タックン行きましょうね。」


(なんだよ。リストラって決め付けて、無視かよ・・・)


私は気分を変える為、近くのカフェに立寄った。

カフェにはたくさんの若者がいた。
彼らは私の横の席を陣取ると、大声で話し始めた。


若者1  「ワカパイって言ったらオヤジだよな!!」

若者2  「そういや、この前の女とはヤッタの?」

若者3  「あ?ヤッテねぇーよ。ところで、バイトどうだよ?」

若者1  「適当にやってるよ」

若者2  「なぁ、合コンしようぜ」

若者1  「いいねぇ、ところで、横のオヤジ、うざくね?」


(ん?オレの事か?)


若者3  「ゼッテー、ワカパイとか言ってんぜ」

若者1  「言ってる、言ってる」


(言ってない!!って、オレの事か!!)


若者2  「なぁ(多分、合コンの)メンツどうする?」

若者3  「・・・・・やっぱ、横のオヤジ、ウザイよ」

若者2  「ああ、どかしとく?」


(オヤジってオレの事か?)


若者1  「オジサン、タバコが臭いんですけどぉ・・・
      アッチいってくれるぅ?」


(オレの事?)


若者2  「お前だよ。オヤジ」


(やっぱり、オレかぁ・・・)


阿部   「君ら、大声で話すのはマナー違反じゃないのかい?
      というより、君らにオヤジといわれる筋合いはないぞ。
      作った覚えはないし・・・・。
      しかも、タバコが嫌なら禁煙席に行け。クソジャリ」

若者1  「はぁ?何ムキになってんの?馬鹿じゃねぇ?」


(確かにな・・・、バカ相手にムキになっても仕方ない・・・)


帰り際に一応、若者2に肘鉄を喰らわせといた。

※肘鉄・・・肘で相手を小突く事。


全く気休めができないまま、事務所に戻ると、帰った瞬間に
一本の電話が鳴り始めた。

そう、電話とはいつもタイミングが悪いものだ。


阿部   「はい、T.I.U.です」

相談者  「・・・・妻がいないんです」

阿部   「・・・・もしもし?どうなさいなしたか?」

相談者  「妻がいません。家出したみたいで・・・」

阿部   「家出ですか・・・、置手紙とかありませんか?」

相談者  「はい・・・ありますが、意味がわかりません」


(聞いてるコッチも意味がわからんよ・・・)


阿部    「どうなさいますか?調査して見つけますか?」

相談者   「お願いします。見つけて下さい」

阿部    「では、事務所の場所が・・・・」


(ガチャッ・・・ツーツーツー)

(え?切った?切れたのか?・・・イタズラか?・・・)


その後、電話がかかってこないので
私は折り返し電話をかけることなく、事務処理を始めた。


(何だか、イライラするな・・・。)


私は事務所の廊下を出て、ガラス越しに事務所の前の道路を見下ろした。

すると、バーコード型に禿げ上がったおじさんが、事務所の入口を
ウロウロしている。

その横を調査員の田中が通り過ぎた。
階段から駆け上がる足音が聞こえてきた。


田中   「代表、どうしたんですか?」



        続く



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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