草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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偏差値のこと

2009年09月09日 10時30分29秒 | 

 偏差値とは, 母集団の得点の分布を特殊な数式で処理して全体からみた自分の順位がわかるしくみにした数値のことといっていいと思う。偏差値の正確さというのは, 母集団の数値が正規分布に近い状態であることが前提である。試験が難しくてその試験に優秀な生徒が多く参加するような場合の偏差値というのは, 正規分布は期待できないから, そこから出てくる偏差値というのもあまり信用できない。問題の難易度が平均的なV模擬などの場合, 必ずしも難関校受験者の分布を反映するものとはいえずこれも使えない。たとえば早稲田クラスを受験する者ならV模擬程度の数学・英語ならほとんど100点をとるだろうから, 分布としては団子状態である。これを偏差値に反映することはできない。駿台模試はむつかしいことで有名だが, これだと秀才たちにも色分けが出る。分布が出るので偏差値に反映できる。しかし, 偏差値の数値はかなり低い。低い数値でも合格90%という判定になる。偏差値の上限値、下限値は元となる標本の分布によって決まるものであり、いかなる実数をもとりうる。平均値から大きく離れた場合は0から100の間に収まらないが、その割合は非常に低く、約0.000047%、つまり約200万分の1しかないといわれている。
 偏差値の利用価値が高いのは、母集団の数値の分布が正規分布に近い状態の時である。分布のピークが2箇所ある場合など、正規分布と大きく異なる場合には適切な指標となりえない場合がある。

分布が正規分布に近い場合は、40から60の間に約68.3%、30から70の間に約95.4%、20から80の間に約99.73%、10から90の間に約99.9937%、0から100の間に約99.999953%が含まれる事が知られている。学力検査の結果を表す学力偏差値は入学試験の合格率の判定などに広く使われている。学力テストの得点分布は正規分布からかけ離れている場合が多く、偏差値本来の意味からすれば学力を測る正確な指標とは言えない。

 一般的な話しになりますが, 四谷大塚などの公開模擬の偏差値が50くらいの子というのは, ちょうど公立中に入学した子でいえば, 通知表でオール5くらいになります。これが偏差値40だとオール4が目安でしょう。となると中学入試を志して偏差値50以上をとる子たちというのは, もし公立中に入学すればかなりできる子たちということになりますね。そういう子たちが公立中からすっぽりと抜けているということです。
 ところで中学受験の偏差値40だと, 高校入試だと10くらい上がりますから, 高校入試の偏差値で60~65くらいの高校にはいけることになります。成城とか順天, 渋谷区だと日大系列校とか久我山クラスですね。それで中学受験の段階で入っていたほうが得だという意見もあるようです。
 しかし, そう単純でもなさそうです。少子化の影響で高校そのものがかなり入りやすくなっていること, 私立高校は定員の半分を内申を基準とした推薦で取りこんでしまうことなどが指摘できます。その分, 確かに一般入試は入りにくくなっています。さらに, 中学受験だと算数・国語以外に理科と社会の比重が大きいのですが, 高校入試はだいたい国・数・英の3科です。中には2科選択などというのもあります。算数が苦手だった子でも数学で頑張ってということもないことはありません。
 高校入試は中学入試と違って, 特に都立などは内申点というのが大きく影響しますから, とにかく単純ではないのです。
 
 中学入試では滑り止め程度の認識しかなかった学校が高校入試ではいきなり偏差値が上がっています。これは, 私なりの意見なのですが, 中学受験の段階で優秀な学習意欲のある子たちはほとんど私立へ抜けてしまっている。その中で今度は平均的な子たちが大勢そういうところを受ける。すると母集団のレベルそのものが低調ですから, 山の分布も下方へ偏る。それで滑り止めクラスでも偏差値が上がるということになる。
 言いかえれば, 中学受験では優秀なものどうしの争いだったが, 高校受験ではそれまで勉強とはほとんど縁のなかった子たちが大挙参加してくる。そういう子たちが母集団を形成しそれまでの滑り止め校だった学校の偏差値を押し上げることになる。

最近元気のいい学校というのがあります。
例えば, 順天や成城, 高輪も元気がいい。東京農大一は受験生が増えて偏差値も上がっている。世田谷学園も人気がある。豊島岡女子はもともとの上位難関校であるが偏差値もここのところ上がる一方である。昭和女子はいつのまにかかなりの難関になっている。堅実さで定評のある富士見(富士見丘ではない)は2011年から高校入試を止める。横浜山手女子は中大附属となるので偏差値が上がるのは必至。香蘭は立教の推薦枠が拡大し人気上昇確実。大妻中野も悪くない。明大や法政などの大学附属校は当然人気がある。最近の特徴は, かつて偏差値が低くく歯牙にもかけられなかったところがいきなり偏差値をあげ人気校となるということである。少子化と言われて久しいが, 私立も手をこまねいていたわけではなく, 生き残りをかけて必死に自己改革をしてきた, いや今もしているということではないか。

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