バレンタインが終るとホワイトデーなんてものがありまして、悲喜こもごもあったりするのでしょうね。
そんなイベントにまつわるお話です。
この話の続きなので、先に読んでもらえると嬉しいです。
涙の送別会から一年以上経ったある日のこと、件の美佐子から相談があるという電話をもらい、会って話す事になった。
「ウチの現場も統廃合があってさ。営業所が三つくっついちゃった。」
どこも大変である。でも以前より少し元気な様子でほっとした。
話によると、女子社員が急に増えた上に、前回のアレでベテラン社員がいなくなったせいで、彼女が女性をまとめなければならなくなっていたのだ。
「でも良い子が多いから何とかなってたんだけどね」
「けど?」
「バレンタインがねー」
話が意外な方へ向かいはじめた。
「営業所によって義理チョコの習慣が違うの。ウチは偉い人とかいたからあげてたけど、あげてない営業所もあったのよ。どうすればいいでしょう?って聞かれても、勝手にすればってわけにはいかないのよね。めんどくさいけど。」
「たしかにめんどくさそうだね。」
「それでいろいろ話を聞いてると、みんな本当はめんどくさいからやめたい、っていう感じだったのね。で結局義理チョコはやめましょうって結論になったんだわ。私は良いんじゃないのって言っただけだけどね。」
「まあ、あーしろこーしろって言う話でもないしね。」
「で、バレンタイン当日が来たわけさ。義理チョコなしって決めてたから、バレンタインって事すら忘れてたけどね。でも夕方になってアレって思ったのよ。」
「・・・」
「若社長が帰らないのよ」
「あー、3時か4時にはキャバクラに営業に行っちゃう、あの若社長ね。」
「そう。
5時になっても、6時になっても帰らないのよ。イヤーな予感がすごくするんだけど、チョコなんて用意してないし、今さら用意できるほどヒマじゃないしね。用意できたとしても私だけあげるわけにはいかないけどね。」
「うんうん」
「そしたらさ。若社長の顔がだんだん赤くなってきたのよ。そんで、完全に真っ赤になったと思ったらさ。」
「うんうん」
そこで美佐子は少し間を空けた。
何だろう、と思った時、彼女は叫んだのだ。
「なんで誰も僕にチョコをくれないんだよー!」
「へ?」
「って叫んで泣き出しちゃったのよ。」
「はあー。なるほどね。」
「その場は何とかみんなで抑えたんだけどさ、問題は次の日よ。
若社長の部屋に呼び出されて、行ってみたらあの愛人がいるのよ。若社長は真っ赤な顔して怒ってるし。
「チョコ如きで何でそんなに怒るかね。」
「どうやら義理チョコをいっぱい抱えてキャバクラに行って、僕ってモテるんだ、って自慢するのが毎年の楽しみだったらしいのよね。」
「はあー。」
「でなぜか愛人までが怒ってるの。何を言うかな、と思ったら」
「何て言ったの?」
「なんであなたたちはそんな失礼な事をするの。いつも世話になってるのに、義理チョコもあげないなんて。私だって義理であげたのよ、義理で。」
「フォローになってないね。」
「なってないどころかトドメ刺してるわよ。
若社長って、ただの義理なのに、自分がみんなから愛されてる証拠だと思ってたみたいなのよね。
それが義理の連発でしょ。もう机に突っ伏しちゃって。トドメ刺したの愛人なんだから何とかしてよ、ってかすかに期待したてたらさ。」
「うん?」
「社長の登場よ。」
「美佐子には悪いけど、なんかやらかしてくれそうな期待しちゃうな。
あの若社長の親だし、愛人を会社に入れちゃうような人だからなあ。」
「正解。
愛人が社長に事情を話してさ。もう大した期待はしてないから、とにかくこの場を収拾してくれよ、と思ってたのよ。そしたら、何て言ったと思う?」
「まさか」
「そのまさかよ。」
「はあー」
なんとなく予想がついた。けれど美佐子に先をうながした。
「これは背任行為だ。だって。」
この親にしてこの子あり。
バカって遺伝するんだね。
「でもこのパターンだと、責任を取らされるのは・・・」
「そういうこと。それで辞めさせられたのよ。」
「あら、やっぱり。」
「私もいつ辞めようかと思ってたから、別に構わないんだけどさ。ただ、ちょっと悩んでる事があってね。」
次の仕事のことだろうか?
紹介できる仕事とかあったかな・・・
私は既に転職しているから、相談には乗るけれど・・・
などと思っていると、美佐子から意外な質問が来た。
「中途入社の面接で、前の会社を辞めた理由って聞かれるの?」
「普通は聞くだろうね。」
「聞かれたら何て言おうかと思って。まさかバレンタインのチョコをあげなかったので背任行為に問われました、とは言えないしねえ・・・・・・」
「・・・・・・」
二人で顔を見合わせて大爆笑したのであった。
この会社のバカ話はまだあるのだけれど、それはまたそのうちに。
(この話がフィクションならどんなによいか)
そんなイベントにまつわるお話です。
この話の続きなので、先に読んでもらえると嬉しいです。
涙の送別会から一年以上経ったある日のこと、件の美佐子から相談があるという電話をもらい、会って話す事になった。
「ウチの現場も統廃合があってさ。営業所が三つくっついちゃった。」
どこも大変である。でも以前より少し元気な様子でほっとした。
話によると、女子社員が急に増えた上に、前回のアレでベテラン社員がいなくなったせいで、彼女が女性をまとめなければならなくなっていたのだ。
「でも良い子が多いから何とかなってたんだけどね」
「けど?」
「バレンタインがねー」
話が意外な方へ向かいはじめた。
「営業所によって義理チョコの習慣が違うの。ウチは偉い人とかいたからあげてたけど、あげてない営業所もあったのよ。どうすればいいでしょう?って聞かれても、勝手にすればってわけにはいかないのよね。めんどくさいけど。」
「たしかにめんどくさそうだね。」
「それでいろいろ話を聞いてると、みんな本当はめんどくさいからやめたい、っていう感じだったのね。で結局義理チョコはやめましょうって結論になったんだわ。私は良いんじゃないのって言っただけだけどね。」
「まあ、あーしろこーしろって言う話でもないしね。」
「で、バレンタイン当日が来たわけさ。義理チョコなしって決めてたから、バレンタインって事すら忘れてたけどね。でも夕方になってアレって思ったのよ。」
「・・・」
「若社長が帰らないのよ」
「あー、3時か4時にはキャバクラに営業に行っちゃう、あの若社長ね。」
「そう。
5時になっても、6時になっても帰らないのよ。イヤーな予感がすごくするんだけど、チョコなんて用意してないし、今さら用意できるほどヒマじゃないしね。用意できたとしても私だけあげるわけにはいかないけどね。」
「うんうん」
「そしたらさ。若社長の顔がだんだん赤くなってきたのよ。そんで、完全に真っ赤になったと思ったらさ。」
「うんうん」
そこで美佐子は少し間を空けた。
何だろう、と思った時、彼女は叫んだのだ。
「なんで誰も僕にチョコをくれないんだよー!」
「へ?」
「って叫んで泣き出しちゃったのよ。」
「はあー。なるほどね。」
「その場は何とかみんなで抑えたんだけどさ、問題は次の日よ。
若社長の部屋に呼び出されて、行ってみたらあの愛人がいるのよ。若社長は真っ赤な顔して怒ってるし。
「チョコ如きで何でそんなに怒るかね。」
「どうやら義理チョコをいっぱい抱えてキャバクラに行って、僕ってモテるんだ、って自慢するのが毎年の楽しみだったらしいのよね。」
「はあー。」
「でなぜか愛人までが怒ってるの。何を言うかな、と思ったら」
「何て言ったの?」
「なんであなたたちはそんな失礼な事をするの。いつも世話になってるのに、義理チョコもあげないなんて。私だって義理であげたのよ、義理で。」
「フォローになってないね。」
「なってないどころかトドメ刺してるわよ。
若社長って、ただの義理なのに、自分がみんなから愛されてる証拠だと思ってたみたいなのよね。
それが義理の連発でしょ。もう机に突っ伏しちゃって。トドメ刺したの愛人なんだから何とかしてよ、ってかすかに期待したてたらさ。」
「うん?」
「社長の登場よ。」
「美佐子には悪いけど、なんかやらかしてくれそうな期待しちゃうな。
あの若社長の親だし、愛人を会社に入れちゃうような人だからなあ。」
「正解。
愛人が社長に事情を話してさ。もう大した期待はしてないから、とにかくこの場を収拾してくれよ、と思ってたのよ。そしたら、何て言ったと思う?」
「まさか」
「そのまさかよ。」
「はあー」
なんとなく予想がついた。けれど美佐子に先をうながした。
「これは背任行為だ。だって。」
この親にしてこの子あり。
バカって遺伝するんだね。
「でもこのパターンだと、責任を取らされるのは・・・」
「そういうこと。それで辞めさせられたのよ。」
「あら、やっぱり。」
「私もいつ辞めようかと思ってたから、別に構わないんだけどさ。ただ、ちょっと悩んでる事があってね。」
次の仕事のことだろうか?
紹介できる仕事とかあったかな・・・
私は既に転職しているから、相談には乗るけれど・・・
などと思っていると、美佐子から意外な質問が来た。
「中途入社の面接で、前の会社を辞めた理由って聞かれるの?」
「普通は聞くだろうね。」
「聞かれたら何て言おうかと思って。まさかバレンタインのチョコをあげなかったので背任行為に問われました、とは言えないしねえ・・・・・・」
「・・・・・・」
二人で顔を見合わせて大爆笑したのであった。
この会社のバカ話はまだあるのだけれど、それはまたそのうちに。
(この話がフィクションならどんなによいか)
…何つーか、衝撃の結末というか、唖然としたというか…。ほんと、フィクションだとどんなに良いか、ですね。事実は小説より奇なり。
でも、義理チョコを渡さなければ背信行為になるというのは、一つお利口さんになりました。ありがとうございました!?
背信じゃなくて背任でしたね。あと、美佐子さんの前途が明るいものであることを心より願っております。
いちおう数年前の話なので、今はちゃんと別の仕事をして元気にやっています。
結婚する気はないと言ってました。
シューマッハーの話読みました。
バカ息子になるかどうかの境目が、そこにあるのかもしれませんね。