Nueva York Life -Refuse Passive Interest-

某サイトのブログを使ってたのですが、ある事情で、こちらで再出発させてもらいます。

Les Miserables

2013-01-12 17:48:44 | 映画
この映画を観て感じたこと。「ミュージカルは、他の映画と区別するべき!」。要は、ミュージカルは、他のジャンルの映画と別モノだということ。この映画の売り方は巧いと思う。前評判だけで、1億ドルを超えるボックスオフィスを記録して、アカデミー賞でも数部門でノミネート。ヒュー・ジャックマンの主演男優賞は、彼の演技が評価されて・・というのではなく、マーケティング戦略の一端で勝ち得たものだと思う。『The Session』のジョン・ホークスやリチャード・ギアの方が、評価されるべき演技だった。スターとしての華と作品の規模が、結果を左右したのだろう。

ミュージカルの特徴でもあり欠点と言えば、何もかもが大掛かり(言い換えれば、大袈裟)になってしまうところにある。だから、大掛かりであれば、それに見合うだけの圧倒感であり、スケール感が求められる。だから過去のクラシック・ミュージカルは、カメラを動かしたり、『サウンド・オブ・ミュージック』のオープニングのような迫力で、視覚的に驚かせていた。でも今や、どんな映像でも、作れる時代。それが、ミュージカルというジャンルに災いしていると感じられる。なぜなら、視覚的に楽しむ技巧という面で、趣向を凝らすことが少なくなっているのだから。この映画でも、ほんの数曲だけは、1シーン、1カットで撮られていて、その部分には迫力が感じられる。ミュージカルで、1曲に、色んなシーンを挟んでしまうと、よほどの技巧がない限り、そのシーンは力を失ってしまう。この映画の一つの売りに、それぞれの曲を、アフレコであてるのではなく、そのシーンが撮られているところで実際に、それぞれの演技の中で俳優が歌わせ、LIVEの音源を使っているとのこと。でも、カットを切ってしまえば、その効果も薄れてしまうし、無意味。上映時間158分。スーザン・ボイルが歌ったことでも有名になった“I dreamed a dream”をアン・ハサウェイが歌った曲をバックに構成された2分間足らずの予告編だけで十分だった。いや、予告編の方が、ずっと良かった。ミュージカルは、いろんなシーンを挟んでしまうことで、予告編のようになってしまう。予告編を引き伸ばしたのが、本編という印象にも陥りかねない。本作の鑑賞は、ほぼ10分で飽きてしまって、その後、どうしてミュージカル映画に惹かれないのか、という原因を探るため、映画には入り込まずに、傍観して、いろんな視点から分析していた。その結果が、2分でちょうどの予告編を、150分も、観れないということ。どんな映画でもそうだが、作品自体に特別な思い入れがあれば別だと思う。この映画は、有名な小説はもとより、それをミュージカル化したもののファン層が多く、思い入れを持っている人が多い。でも、思い入れを抜きにした、一つの映画として観た場合、150分の冗長な予告編にしか見えないのだ。予告編は、大概、2~3曲を使って、大量の映像クリップを見せていく。この映画では、引きの画面が少なく、それぞれのキャラクターの顔のアップが多用される。だから、映像が限定されて、広がりが少ない。動きも下手に、手持ちカメラを使って、ブレさせてもいるが、古典をベースにしているミュージカルで、この手法は必要ない。古典をベースにしたドラマ劇であれば、効果もあるだろうが。

あと、執拗にミュージカルにこだわり過ぎているのもマイナス。普通に喋らせるところと、歌わせるところの境界線が曖昧で、不必要なところでも歌わせている。このストーリーに愛着のない人にとっては、全然、ドラマ部分のストーリーが語られていないし、表現もできていない。音楽はいい、でも、映画には魅力がない。映画として観た場合、やっぱり、この映画は失敗作の烙印が押されるべきだと思う。だけど、ファンにとっては、音楽もストーリーも知り尽くして観るわけだから、映画で、多くのスターがお気に入りのキャラクターを演じるだけでもいいのだろう。ここに、ミュージカルというジャンルが他の映画の切り離されなければならないポイントがある。『トワイライト』シリーズのファンと同じで、映画として評価されなくても、ファンの支持だけで、お金を稼げるのだ。ただ、『トワイライト』で思い出したが、ビル・コンドン監督の『ドリーム・ガールズ』って、この映画みたいに、面白くなかったっけ??面白かったし、楽しんだ。もしかして、この映画を楽しめなかったら、「自分はミュージカル嫌いだ!」と錯覚してしまう危険性のある作品なのかもしれない。


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