T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1246話 [ 「コーヒーが冷めないうちに」を読み終えて-13/?- ] 1/6・金曜(晴・曇)

2017-01-05 14:09:13 | 読書

本作抜粋による粗筋

第四話「親子」この喫茶店で働く妊婦の話 -1/?-

[心臓が弱い妻・計の妊娠を心配する流]

 清川二美子(第一話の主人公)は、春以来、時々この喫茶店に来ては、ワンピースの女の前の席に陣取っている。

 その二美子が不意に、数に声をかけた。

時間を移動できるって事は……未来も行けるって事?」

 二美子の言葉を聞いて、高竹が興味深そうに身を乗り出してきた。

「それ、私も気になる」と。

 二美子は「ですよね」と答えて、

「過去に戻るのも、未来に行くのも、時間を移動できるって考えると一緒ですよね? だとしたら可能だと思うんですけど……」と、話を続けた。

 数は、いとも簡単に、「行けますよ」と返答した。しかし、数は冷静に、

「でも誰も行きません」と、言葉を添えた。

「なんで?」

「じゃ……未来に行けるとしたら何年後に行きたいのですか?」

 二美子は、待ってましたとばかりに「3年後!」と即答した。

「彼に会いたいためでしょうが、その3年後、二美子さんがイメージした日のその短時間のうちに、彼がこの喫茶店に来ているかどうか分かりませんよね」

 と、数は、行っても無駄なことを説明した。

 流が、細い目をして、

「ちゃんと結婚できるかどうか、確かめたかって事?」と、二美子を茶化した。

                               

  カランコロン

「いらっしゃいませ」

 入って来たのは房木である。

 高竹がそろりと近づいて、「あなた」と、房木に話しかけた。

「どちら様ですか?」

「あなたの、妻です」

「妻? 私の? 冗談でしょう」

「本当ですよ」

「あの、勝手に相席しないでくれますか」

「いいでしょ。夫婦なんですから」

 困り果てた房木は、お冷を持ってきた数に助けを求めた。

「この人どうにかしてくけませんか」

「本気で困ってるみたいですよ」

 数は、微笑ましいと思いつつも、房木の肩を持った。カウンターの中から流も、

「今日は、もうそのあたりで勘弁してあげたらどうですか」

 と、房木のために助け舟を出した。

(中略)

 奥の部屋から計が現れた。

 高竹は、計の顔色を見て、「え?」と声をあげてしまった。今にも倒れそうな足取りだった。

「大丈夫か?」

 ぶっきらぼうだが、そういった流の顔色も悪くなっている。

「調子悪いの?」

 高竹は、流に、計の体調を確認しながら、カウンター席から立ち上がり、

「無理しないほうがいいんじゃない?」

 と、計を支えるために寄り添おうとした。 だが、計は、

「ホントに大丈夫なんで」

 と言って、高竹にVサインをしたが、無理をしているのが誰の目にも明らかだった。

     

 計は、生まれつき心臓が弱かった。

 医者からは、激しい運動を控えるように言われ、小、中、高と、運動会などは他の生徒と同じように参加したことがなかった。そして、計の心臓は調子を崩すことが多く、長期ではないが、学生生活を中断するような入退院を繰り返した。

     

 計はカウンターに入ると、いつものように洗い物を拭いて食器棚に戻し始めた。

 グラスの割れる音がした。

「あ!」

 高竹が声をあげた。 グラスは計の手から滑り落ちたものだった。

 計は、「ごめんなさい」と言って、割れたグラスを拾おうとしたが、「あ、私やるんで……」と、数が計を制した。

 二美子も、「大丈夫ですか?」と、声をかけた。

「病院、行った方がいいんじゃない」と、高竹がすすめたが、

「ホントに大丈夫だから……」と、計はかたくなに首を横に振った。

 しかし、流を見て、

「やっぱ休ませてもらおうかな」

 と言って、奥の部屋へと向かってよろよろと歩きだした。

(中略)

 妊娠してからというもの、計は暇さえあればお腹の子に話しかけるようになっていた。

 4週目あたりだと、まだ、赤ちゃんと呼ぶには未熟な状態といえるのだが、計にとって、そんなことは関係ない。もちろん、会話はいつも、計の一人二役で繰り広げられていた。

 しかし、計の体調は、日を追うごとに悪くなった。妊娠5週目に入って、体調は急激に悪化した。

 流は、計の主治医に相談に行った。主治医は、計の妊娠については、

「正直に言いますと、奥さんの心臓は、出産に耐えられないでしょう。6週目あたりからは、つわりも始まります。ひどい場合には入院も考えなくてはいけません。奥さんが産むことを選択した場合、母子ともに無事である可能性は極めて低いと考えられます。仮に、出産を無事終えたとしても、母体への影響は計り知れません。確実に命を縮める事になると覚悟しなければなりません」

 という意見でした。さらに、

「通常、人工妊娠中絶は6週目から12週目の間に行われます。奥さんの場合、中絶をするなら早いほうがいい。手遅れにならないためにも……」と言われた。

 帰宅後、流は、言われた事を包み隠さず計に話したが、計は、ただ小さく頷いて、「わかっている……」と応えるだけだった。

       次の節に続く

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1245話 「 初購買 」 1/5・木曜(晴)

2017-01-05 11:30:36 | 本と雑誌

                                                                                                       

 今日は小寒とのこと。 いわゆる「寒の入り」。

 これから段々と寒くなる日、躰に気を付けて、春を待つ日でもある。

                                                                                            

 今年の初買いは本だった。

 〇 ゆっくり自宅で読む本2冊、病院などでの時間待ちに読む文庫本1冊。

 〇 著者はいづれも直木賞受賞者。

  「帰郷」の浅田次郎氏は、「鉄道員」。

  「流」の東山彰良氏は、「流」。

  「かけおちる」の青山文平氏は、「つまをめとれば」。

 〇 今回の購入ポイント。

  「帰郷」→ 86歳の私は、父親が戦死し、

        戦中、戦後の厳しい人生を味わった者として、

        戦争もの、反戦ものは特別に興味がある。

  「流」 → 今、注目されている中国、台湾を中心に日本を含めての現代小説。

        中国人のものの考え方も台湾生まれの著者によって描かれている。

  「かけおちる」→ 

        たたき上げの執政による小藩の政治

        執政と妻の夫婦の絆が描かれている時代小説。

 

 

 

                                  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする