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不等価交換と利潤

2009年03月20日 | 経済学

資本主義の条件は持続的に利潤を生み出すことだが、その基盤となっている市場メカニズムは利潤を食いつぶす。マルクスもいったように、「商品経済は偉大なレヴェラー(水平主義者)」なのだ。利潤率は傾向的に低下し、国内で鞘が取り尽くされたあとは植民地から、そして植民地が独立するとグローバル資本主義による「経済植民地」から、それも限界が来ると金融資本主義によって・・・と絶えず新しい利鞘を追求する自転車操業が資本主義の宿命だ。(池田信夫blogシリコンバレーの「核の冬」より)

今回のサブプライムローのバブル崩壊に端を発した世界不況は、金融商品が生み出す利潤の急速な縮小が一つの原因だった。為替や証券の取引手数料が低下し、旧来のスワップやオプション取引からの利益が方法論の浸透と共に急速に失われた。そこで、複雑な仕組み債や異時点間のリスクとリターンの交換という形で投資家との情報の不完全性を利用して、旧来の市場から失われた利益を取り戻そうとしたのが原因である。問題は、結局は金融商品を分かりにくくすることによってリスクを隠し利潤を上げたために、現実のリスクが明らかになるにつれバブルが崩壊せざるをえなかったことだ。

このように資本主義の本質の一つは技術の広まりや新規参入によって利潤が縮小していくことである。マルクスは資本が資本家のみが所有できる生産資源として、労働と違い剰余価値を持つとして、資本家と労働者との格差の拡大を主張したが間違っていた。資本家の経済における影響力は独占が状態であった二十世紀初めには強いものがあったが、独占に対する規制や年金基金の投資等資本の価値の低下によって資本からの利益率は低下し労働分配率は向上し続けた。むしろ現在においては労働分配率が高すぎることが重要な課題となっている。

結果として、利潤は資本からではなく、むしろ労働市場や知識の伝播の不完全性によって多くもたらされている。先進国と途上国との間にある国境という障壁や、各国にある労働組合という参入障壁が労働の新規参入を制限し、一部のの労働者に高収入をもたらしている。日本においては正規社員と非正規社員との格差が問題となっている。その意味では、マルクスの言った不等価交換と搾取という関係は正しく、ただそれが資本家と労働者との間ではなかったということなのかもしれない。

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