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逆所得再分配政策の絶望

2009年02月19日 | 経済学

今回は東洋経済オンラインの「貧困層をより貧しくする日本の歪んだ所得再分配」より。一般に税制と福祉政策にはそれによって所得を再分配する機能がある。一言で言うと金持ちからお金を取り上げ、貧乏人に分配することによって社会の所得分配の平等性を高めるということだ。しかし、どうも日本だけは違うようだ。まず図を見てもらおう。

このグラフは、独り親世帯の貧困率を再分配前(青の棒グラフ)と再分配後(赤の棒グラフ)によって表したものだ。見てみるとわかるが、再分配前の貧困率は日本よりも高い国がたくさんある。しかし、再分配によって貧困率は劇的に下がりアメリカ以外の国は日本よりも低い水準に落ち着いている。一方で、日本だけが再分配によって貧困率が上昇するという異常事態が発生している。つまり、日本においては低所得者層から他の層へと他の国とは逆の再分配が行われている。

このようなことが起こる理由は、国民年金や国民健康保険の逆進率が高いことが一つの理由だ。また、現在の日本の制度は企業の年金や健康保険ではなく、国の制度に加入せざるを得ない主に低所得者層が高齢者や他の貧困層を間接的に支える制度になっているために、国民健康保険に移ると負担が大幅に増えてしまうという状態にある。つまり、高齢者等の福祉の費用を低所得者層に負担させているために逆に再分配によって貧困層が高まるという異常な事態が発生しているのだ。

これに労働市場の賃金の不平等を加えて考えてみると、(日本以外の国も同じような問題を大なり小なり抱えてはいるが)低所得者層から中高所得者層への所得の逆再分配制度が格差と貧困の根本的な原因であることが伺える。特に年収六百万から一千数百万位の世帯は不平等な労働市場、いびつな再分配制度の両面から大きな恩恵を受けており、多くの所得がこの層へと不公平にも再分配されることによって現在の異常な格差と貧困が引き起こされていると言えるだろう。

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