矢・島・慎・の小説ページです。

「星屑」
    沖縄を舞台にした若者のやまれぬ行動を描くドラマです。
    お楽しみ下さい!

小学校卒業ソング、ベスト10

2008年03月22日 | Weblog
昨日は少人数の小学校の卒業式についての記事でしたが、今回は小学校卒業式での歌われる歌トップテンを探ってみました。調査は栃木テレビです。詳しい内容はこちらをご覧下さい。クリック







インドア・スカイダイビング(垂直ウインド・トンネル)の紹介

2007年10月21日 | Weblog
アメリカ交流板の8バックスさんが、先日コロラド州のインドア・スカイダイビングを見に行かれました。何だかとても楽しそうですのでご紹介します。詳しい内容はこちらをご覧下さい。クリック








京師美佳さんのセキュリティー・アドバイス「子どもを守る防犯対策」

2007年10月09日 | Weblog
京師美佳先生の、(当ブログ)第二回ワンポイント・アドバイス。第二回「子どもを守る防犯対策」です。内容はある企業の広報誌にのりましたものの内容です。詳しい内容はこちらをご覧下さい。クリック








長崎くんち(07)が盛大に開かれました。

2007年10月08日 | Weblog
江戸時代の初めからおよそ370年続く長崎の祭り「長崎くんち」が7日から始まり、長崎市内は笛や太鼓の音や華やかな踊りと出し物で祭り一色に包まれました。詳しい内容はこちらでご覧下さい。クリック









世界遺産、熊野古道・大門坂に平安の参詣姿を見た。

2007年08月03日 | Weblog
世界遺産の熊野古道。とりわけ大門坂(だいもんざか)は、和歌山県の那智勝浦町にある坂道で有名です。数日前、その樹齢数百年の杉並木に忽然と現れた平安の女子。詳しくはこちらでご覧下さい。クリック








時の人、ミカ・ブルゼジンスキーさんです。パリヒルトンのニュースを飛ばした方です。

2007年07月02日 | Weblog
ニュース番組のアンカーウーマン、ミカ・ブルゼジンスキーさんです。6月29日午前のケーブルチャンネル、MSNBCの番組で、話題のトップに読み上げるように求められたパリ・ヒルトンさんに関するニュースの読みを拒否。詳しい内容はこちらでご覧下さい。クリック



 




遅い東北の春を彩る、藤原祭りが開かれました。

2007年05月07日 | Weblog
 東北・平泉町の春の藤原まつりの最大のイベント「源義経公東下り行列」が3日行われました。岩手日日新聞が伝えています。詳しい記事はこちらでご覧下さい。クリック

カトリーナ被害のメキシコ湾岸地域で、枯れ木の生き返り計画です。

2007年04月18日 | Weblog
アメリカ、メキシコ湾岸の都市を襲ったハリケーン「カトリーナ」。最大の被害都市、ニューオーリンズでも復興の道半ばが報じられています。



そんな中、ミシシッピー行政府はカトリーナで枯れたカシの木の伐採を決定しました。そのかわり伐採する予定の廃木を、彫刻アートに利用することを許可しました。
詳しい記事はこちらでご覧下さい。クリック

動き出した拉致問題。

2007年04月16日 | Weblog
先の五組の日本人拉致家族の帰国、その後のジェンキンスさんの帰国から進展がぴたっと止まった拉致問題。ですが、ここに来て動きが始まりました。詳しい記事はこちらでご覧下さい。クリック

動き出した拉致問題。

2007年04月16日 | Weblog
先の五組の日本人拉致家族の帰国、その後のジェンキンスさんの帰国から進展がぴたっと止まった拉致問題。ですが、ここに来て動きが始まりました。クリック

動き出した拉致問題。

2007年04月16日 | Weblog
先の五組の日本人拉致家族の帰国、その後のジェンキンスさんの帰国から進展がぴたっと止まった拉致問題。ですが、ここに来て動きが始まりました。クリック

バスに乗るネコちゃん「マキャビティー」

2007年04月11日 | Weblog
http://blogs.yahoo.co.jp/hotcreationjp/folder/327657.html
こちらでご覧下さい。

「星 屑」 目 次

2005年04月08日 | Weblog
序章   和昭の彼女、安江が捕まった。和昭と宏志はある決意をする。
二章   和昭と宏志の二人は那覇少年鑑別所に向かった。目的は・・。
三章  目的を果たした和昭の逃走が始まった。果たして……。

四章  手助けした宏志だがなぜか部屋に戻った。

五章  コザの潤の店 

六章 執念に燃える沖縄県警・知念刑事登場!

七章  山里のアパートでついに二人は捕まるのか。何とか逃がしてやりたいのだが‥

八章 二人は名護に向け一路進路をとった。しかしそこには何が待っているのか。

九章  賢吉の誘い、それはどんなものであろうが断ることはできない。

十章  安江は電話ボックスに入る。雑誌の広告の番号を回す。果たして何が……。

十一章 賢吉の身に大変なことが起こった。やがて和昭にも手が回る。さあどうする。

十二章 初めて二人に幸運が訪れた。タイミングよく別の事件が発生したのだった。

十三章 二人は一大決心をする。那覇新港から脱出を試みるのであった。

十四章

終 章

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序章

2005年04月02日 | Weblog
「里美、じつはな……」
 宏志は、ベッドでタバコを吸い始めた里美に、改まった口調で話しかけた。
「どうしたの深刻そうな声出して……」
 里美は仰向けになってタバコの煙を揺らせた。いつもなら愛を交わした後、二人揃ってベッドに仰向けになり、タバコの煙を立てるのだが、今夜に限って宏志はうつ伏せになり、息遣いで肩が上下する。
「和昭の女がな……」
「安江ちゃんていったよね」
「できたらしいんだ」
「えーっ、だってまだ中二じゃなかった?」
「そうなんだが、どうする積もりなんだか、和昭のやつ」
「産むか堕すかで?」
 里美はタバコを灰皿に押し付けると、宏志に向きを変え言葉を続けた。
「で、安江ちゃんは今どこにいるの? たしか家はでていたよね」
「鑑別所だ。仲間がパクられた時に一緒にいたからやられた」
「それで、話って?」
「電話があって、和昭から。今夜来てくれって、やる腹じゃねえのかなあいつ」
「一緒にやるの?」
「もし和昭が、腹くくったら、見てみぬ振りはな」
「もっと早くいってくれよな、そういう大事なことは。もう何にも用意できないだろ」
「和昭と話して、やることが決まったら直ぐ電話する。ちょっと厄介かけるけど頼む」
「もうしょうがないね。できるだけ用意するよ」
 宏志はベッドから起きると身支度にかかった。里美は仰向けになり今後のことなどを考え始めた。掛け時計は夜の十時をまわっていた。
 
 宏志は夜の街を、西原に向け車を走らせた。行き交う車も、かすかに浮かび上がる夜景も、まったく目に入らなかった。やがて和昭の住むアパートの前に車を停めた。階段を駆け上がり、二階の和昭の部屋のドアを叩く。
「俺だ、いるか?」
 鍵が外される音が鳴り、ドアが開いた。宏志が部屋に入ると、和昭は首をドアから突き出し、辺りの人影を確かめた。那覇市の東部に位置する西原。幹線道路から百メートルほど中に入ってるせいか、車の音もなくシーンと静まり返っている。
 和昭の部屋は、居間とキッチンの二部屋。和江と半同棲のような生活だったから、部屋の整頓はよくなされこぎれいな感じだ。居間の中央のテーブルにはウイスキーとコップがあった。二人は向かい合い畳に腰を下ろす。
「宏志、どうしよう」
 和昭の弱々しい声だった。
「どうしようだと? お前らしくないな。それで和、安江はどうなるんだ? 連絡はあったんだろ?」
 和昭と向かい合う宏志は、タバコに火をつける。「相談がある」と頼まれたにしては弱々しい和昭の態度だった。宏志はじれったさを感じた。
「中で、おとなしくしているようだ」
 宏志は、和昭の返事を聞きながら、すでに自分の意思を固めていた。
「鑑別所に入れられて、何日だ?」
「今日でちょうど一週間」
ーーこうなりゃあ、鑑別所破りしかねえだろーー
 宏志は腹を括った。決断さえしてしまえば、後は迷うことはなかった。手はずはさして問題ではなかった。タバコの煙をふっと吐き宏志が聞く。
「捕まったとき、他の奴らは何やったんだ? 盗みか?」
「そうらしい。巻き添えくったんだ」
「それで一緒にパクられたのか。巻き添えもへったくれもないだろう、パクられちゃ」
 比嘉安江、十四歳。この春から三年生に進級していたが学校は休みがちで、友達と那覇の街を遊びまわっていた。昨年の秋に金城和昭と那覇市内のゲームセンターで知り合い、付き合うようになった。時々和昭のアパートに寄り半同棲生活を送っている。金城和昭と大嶺宏志はともに二十二歳、職業は那覇のコンビニでアルバイトをしている。
 宏志は和昭に、鑑別所破りを迫った。ジーンズの後ろポケットにはナイフの膨らみがあった。
「鑑別所はせいぜい二、三週間だろ?」
 そう聞く宏志はいらだち、早く決心せよと睨みつけるような目を天井に向けた。宏志の燃えるような目に反応するかのように和昭が話す。
「少年院に送られたら終わりだ。もしシャバに帰されても、あいつら、安江をどこかに隠すだろうな」
「中三で少年院はない。そんなことより腹の子はどうするんだ。和昭、お前のガキだろう」
「昨日、安江のダチから連絡があって、堕ろすことに決めたらしい」
「承知したのかそのことを、彼女は。もっともお前が堕ろしたければ、病院代も向こうがやってくれるんだから問題はないだろう」
「周りで決めたんだ。中三の女が、産みたいって言ったって、誰が聞くもんか。寄ってたかって堕ろすことに決めたんだ」
「お袋がいただろ、彼女の」
「電話したら、怒鳴りまくって…」
「和、お前本気なのか?」
「……」
「面倒なだけだぞ、ガキつくったら」
 和昭は、宏志の言葉に、ギクッとなった。自分の気持ちが整理できてないこともあった。
「安江が俺に、生理が止まったって話したときは、そのときはできていたら堕ろせ、と言ってやった。だけど今はできたんだったら、育ててほしいって思う」
「お前二十二だろ、まあ俺も一緒だけど。彼女は中二か三だ、問題あるぞ」
「もうこの春で中三だ。結婚は難しいことがあるけど、堕ろしたらたぶん俺たち付き合いがなくなっちまう感じがするんだ。きっと相手の親はどこかへ安江を隠すだろうし」
「分からねえな、お前の気持ち。遊びだろ? 放っておけば、そのうち鑑別所から出て、またつきあえばいいだろう。親が隠すって言ったって、鎖つけてつないでいるわけじゃないんだから」
「俺、安江のことかわいいやつだって思ってるんだ。料理がうまいんで、俺と一緒に店やったらって考えたこともある」
「お前の親、どっかで居酒屋やってたな」
「峨謝で一人でやってる」
「たしかに鑑別所に入ってりゃ、出ると同時に病院いきだろうな。彼女の親が怒ってりゃやることは決まってらあ。ま、お前の気持ちしだいだ。俺はいつでも腹、括ってるんだ」
 確かに宏志の言うとおりだった。ひと月もすれば、安江は鑑別所をでて、しばらくは親の所にいるだろうが、親のすき見つけて和昭のもとに戻ってくるだろう。たった二、三ヶ月じっとしていれば、それですむことだった。和昭は神妙な表情になった。
「安江は複雑な家庭で育って、ま俺もそうなんだけど、小さいときに養護施設にいたことがああって、子供に対してはあいつなりの、思いがあるって話していたんだ。詳しくは聞いてないが、たぶん自分の子を堕ろすことはしないやつだって気がするんだ。だから無理やり手術したらどうなっちまうか……」
「堕ろしたら彼女が傷つくのか?」
「俺もほしいんだ。安江とは会ったばかりのころはガキっぽかったんだが、付き合い始めると女っぽくなって、結構しっかりしたところもあるんだ」
「中三にしては背も高いし、かわいいな彼女」
「一緒にメシつくって食ってると、ずっと一緒にいたいと思って。相性もいいし……」
「それでいいんだ。難しい話はいらないんだ。それで堕ろすのは鑑別所をでてからか?」
「いや、日がたつと難しくなるって、明日だ。どっかの病院へ移すらしい。この俺に何の相談もなく、勝手に決めやがって。鑑別所にいるときにやれば、誰も手出しができねえこと承知でやってるんだ。やつらは」
「それで和昭、お前どうする?」
「俺の子だ、勝手にされてたまるか」
「そんなこと言ったって、明日になれば皆んな済んじまう。そうだろ和昭」
「お前、いいのか?」
「バカ野郎! 決まってるだろ」
 宏志は気持ちを爆発させた。
「こおうなりゃ答えは一つだ。あんな鑑別所なんてチョロイもんだ」
 宏志の言葉に和昭はゴクリと息を呑んだ。
ーー自分もそうだが、宏志も少年院の過去があった。そんな前科のあるものが、鑑別所に押し入って捕まったら、五年や十年、刑務所いきだ。
「宏志……」
「心配するな、お前がマジだということがわかった。だったら迷うな、らしくないぞ」
ーー宏志にだって女がいるじゃないかーー
 和昭がそう口にしようとするのを、宏志の気迫が制した。
「和、俺たちにとってどっちに転んだって同じだ。そのとき、こうだと思ったことをやるしかねえんだ」
「宏志、手貸してくれるか」
「当たり前だ。手はずは俺に任せろ。今夜だ、やるのは」

 二人が和昭のアパートを後に、那覇市の少年鑑別所に向かったのは午前零時を過ぎていた。生温かい風の吹く四月十日のことであった。


二 章

2005年04月02日 | Weblog
キィーッっとタイヤが鳴った。ガチャッとドアが開き二人の男が降り立った。
 波の音が耳に届く。海岸が近いことをにおわせた。
「和、車の予備キーだ。どちらかが何かあったら残ったほうが車で逃げる、いいな」
そういって宏志がポーンと和昭に鍵を投げた。
「分かった。もしばらばらになったら落ち合う場所はここにしよう」
 二人ともジーンズのズボンに薄地のジャンパーを着ている。和昭が160センチ程の背丈でやや痩せ型。宏志は170センチでがっしりした体格だ。皮膚に張り付くような薄手の手袋をはめ、スニーカーの紐を締めなおす。空に月はなく、生温かい風が二人を吹き抜ける。
「モデルガンは俺が持つ、ナイフは持ってるな、和」
「大丈夫だ。宏志、ストッキングだ」
 二人はナイロンストッキングを頭からかぶる。顔にあたる風が遮断され、頬に火照りがきた。
「よし、行くぞ」
 波音を背に暗闇の道を進んだ。あたりの民家はすっかり寝静まり、犬の声すらなかった。しばらく歩くと、前方に丸いガスタンクが見えてくる。そろそろ近づいてきた。やがて水銀灯に照らし出された鑑別所のブロック塀が見える。
「ついたな」
 宏志の行動開始の合図だった。鑑別所は、正面入り口が鉄格子の門で閉ざされ、その中に灰色に浮かび上がる鑑別所収用棟があった。二人は鉄格子の門を通り過ぎ、ブロック塀の角まで進む。あたりに人影はなく静まりかえっている。
 二メートルの高さの塀の上には有刺鉄線が張られている。宏志は和昭の肩に登り、塀の先端に手を掛け、一気に上に上がった。かがむように手を伸ばし、下にいる和昭の手を掴むと、ぐいと引き上げた。まるで猫が塀を駆け上がるように、宏志の横に登る。有刺鉄線は潮風でぼろぼろになっていた。
 人影のないのを確かめると、二人はポーンと内側に飛び降りる。足音を殺し、背をかがめ、するするっと鑑別所収用棟のドアに張り付いた。水銀灯の明かりに、灰色に映えるドア。その横に、すりガラスのはまった、ドアの半分ほどの幅の板が建て付けてあった。和昭はナイフを取りだし、ガラス切りチップを引き出すと、すりガラスを円形に切った。続いてナイフの底をカーンとガラスに当てる。ガラスがこぶし大割られ、ぽっかりと穴があいた。
 手慣れた作業だった。和昭はあいた穴に手を差し込み、内側のサムターンを回す。カチッとロックが外れ、ノブを回す。ドアはかすかな軋みをたて開いた。まるで吸い込まれるように二人は中に入った。
「こっちだ」
 宏志が低い声で手招きし、足音を忍ばせ、宿直室のドアの前で止まった。二人は鑑別所内のレイアウトを調べていた。宿直室のドアに耳を当て、中の様子をさぐっていたが、物音がないのを確かめると、取っ手を静かに引いた。
 身をかがめた二つの影が、すっと部屋の中に忍び入った。中は豆電球の明かりがあった。畳敷きの部屋に布団が敷かれ、男が二人眠っている。二人とも気づいていなかった。小さな寝息が聞かれた。宏志が一人の男の横に屈みこむと、眠っている男は人の気配を感じ、うっすら目を開ける。だがまだ意識がぼーっとしているせいか、宏志の顔を怪訝な表情で見る。その瞬間、宏志は手のモデルガンを男のでこに当てた。
「騒ぐな、騒ぐと撃つぞ」
 宏志の低い声ではあったが、男は顔を引きつらせた。もう一人の男の脇には和昭がいた。こちらの男も目を覚まし、がたがた震えている。男の咽には和昭のナイフが当てられ、その恐ろしさから唸り声を出している。年は五十前後に見えた。
 宏志に銃を突きつけられた男は、髪を短く刈り上げ、二十四五の青年だった。
「収容棟の鍵を開けろ。死にたくなかったら騒ぐな」
 宏志が拳銃に力を込めると、若い男は恐る恐る立ち上がる。パジャマ姿の男がそのままドアに向かおうとすると、宏志は男の後頭部に拳銃の底でガーンと一撃を加えた。
「鍵も持たずに行くのか、この野郎!」
 宏志の声に男は、後ずさりし壁の鍵束を掴んだ。和昭にナイフを当てられた男も立ち上がる。若い男を先頭に宏志が続き、その後をナイフを当てられた男と和昭が続いた。男の持った鍵束がカシャカシャ鳴った。二人の宿直員の目には、ストッキングで覆った無表情な宏志らの顔が不気味に映った。
 四人が廊下に出たとき、二階からパタパタと駆け下りてくる者がいた。下の宿直室の物音に気がついて走り降りてきた男だった。階段を下りたとたん、四人が突っ立っているのでびっくりした。
「誰だ!」
と叫んだときだった、和昭が息づくまもなく、二階から来た男の背後に回る。和昭は男の胸を手で抱えると、右手のナイフを男の頬にピタリと当てた。
「静かにしろ!」
 和昭の声に驚いた男は、手を振りほどこうと身をよじらせた。その瞬間、急に身動きを止め、顔を引きつらせた。ナイフの刃先が男の頬を切り、赤い血筋が刃に沿ってついた。男の顔は顔面蒼白。その光景を見たほかの宿直員も氷のように立ち尽くした。
「廊下にうつ伏せになれ! ぐずぐずするな。聞かんと殺すぞ!」
 宏志が威圧した。三人の宿直員は廊下に腹ばいになった。
「腕を上に伸ばせ! 指も開くんだ!」
 うつ伏せの男たちの上から声が飛ぶ。
「早くしろ!」
 和昭は、若い男の手首を掴むと、力を込めて腕を引っ張った。瞬間、男の手首の腕時計がはじけ飛び、カシャーンと廊下を滑った。
 宏志は鍵束を持った若い宿直員を足で蹴り、
「立て! 立って女の部屋を開けろ」
 若い宿直員は、立ち上がり、宏志の拳銃に押され廊下を進む。和昭は廊下でうつ伏せの男を見張った。若い男は、女子収容室の前で止まり、ドアを開けた。
 中では、廊下の物音に気づいた収容者が立ち上がっていた。
「安江はいないか?」
 宏志が収容者に声をかけた。パジャマ姿の数人の収容者中から一人の女が進み出た。安江はストッキングで顔を覆った宏志を、目を凝らし見ていたが、すぐ宏志だと分かった。
「わたし、安江」
と小声で答えた。宿直員はやっと事情がつかめた。
ーーこいつら、比嘉安江を連れ出しにきたのかーー
宿直員は胸の中でつぶやいた。安江はパジャマ姿のまま廊下に出る。
「閉めろ」
 宏志の声に宿直員は収容室のドアを閉め、鍵を掛けた。
 身長160センチ。長い髪を後ろで束ね、素足の安江は廊下にでると事情を掴んだ。薄暗い明かりの中ではあったが、和昭の姿は容易に区別がついた。言いようのない嬉しさが身体を駆け巡る。
 宏志は廊下二うつ伏せの宿直員に
「立て! 手は頭の後ろに組め!」
 と叫んだ。立ち上がった宿直員3人刃スリッパを履き、宏志らに後ろから押されるように表にでた。
「騒いだら、お前ら頭をぶち抜くぞ!」
 宏志は宿直員を脅し続け、海岸に向かって黒い行進が続いた。
 暫く進むと、六人の耳にザーッザーッと波音が聞こえた。と同時に潮の匂いが鼻をつく。前方に見上げるような防潮堤が現れた。高さは数メートルもあり、六人は一歩一歩コンクリートの登り階段を踏みしめた。
 周りは暗闇に包まれ、防潮堤を進む六人は、足先で窪みを確かめながら摺り足を続ける。十分も歩くと人家の影はまったく消え、辺りは墨色の海原と暗闇に包まれた。
「腹ばいになれ!」
 宏志が海鳴りの中で、叫んだ。だが一人の宿直員が突っ立ったままでいるのをみて、
「ぐずぐずするな!」
というなり、宏志は男の膝を後ろから蹴った。ゴツンと男の膝頭がコンクリートに当たった。
「うつ伏せになれ!」
 宏志は宿直員全員をコンクリートの上に腹ばいにさせた。拳銃を宿直員の頭にむけつつ、和昭と安江に合図をおくった。和昭は手のナイフをたたみ、安江の手を取り止めてある車めがけて駆けた。
 防潮堤の上では宏志が宿直員を脅し続けた。腹ばいの宿直員のパジャマをはがし、頭にかぶせた。
「いいか、少しでも動いたら、ぶっ放すぞ! ここでぶっ放しても銃声は誰にも聞こえねんだ」
 騒がれず、少しでも永く時間を稼ぐ宏志の作戦だった。まだ頭上に銃を持った男がいると思わせ、宏志は一歩一歩、摺り足でその場から離れた。