セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

絶滅危惧種プリンセス養成講座

2017年05月20日 23時59分38秒 | クエスト184以降
土曜日ギリギリ更新になってしまったうう・・・すみません。の追加クエストもどき。理想のプリンセスは時代と共に変わっていくもんでしょうが、結局のところ女子はちゃんとお姫様扱いすればお姫様になれるポテンシャルがあるのではないでしょうか。・・・ってそんな話だったっけ?お約束のヒロイン像もっと茶化したかったですが未消化気味です。そのうちリベンジ?

 リッカの宿屋のロビーの冒険者の掲示板に、ちょっと変わった講習会のお知らせがひっそりと貼ってあった。
「『絶滅危惧種』プリンセス養成講座?なんか不思議な名前なの」
 貼り紙をよくよく読んで講習会の正式名称を知ったミミは、不思議そうに首を傾げた。
「だよね〜。何か保護動物みたいな扱いになってね?超怪しげなニオイぷんぷんなんですケド!」
 サンディも頷いたが、開講場所はダーマ神殿となっていたので、少なくとも魔物の仕業ではないらしい。そこへ、通りかかったリッカもミミの両肩に手を置いて後ろからこの貼り紙をひょいと覗き込んで言った。
「お姫様って、女の子なら多少の差はあっても憧れるよね〜♪・・・でも、『絶滅危惧種』ってどういうことなんだろ?確かに私はフィオーネ姫やアリーナ姫くらいしか知らないけど、世界には私の知らないお姫様もたくさん居ると思うんだけどなあ。・・・それはそれとして、どんな講習会なんだろうね?やっぱりロイヤルマナーとかダンスとか教えてくれるのかなあ?」
 二人で(サンディを含めると三人で)首を傾げているところへ、ルイーダが通りかかって笑って言った。
「気になるなら調査しかないでしょ☆留守番は引き受けるから、ロクサーヌも誘っていってらっしゃい☆」
「ルイーダさんは?」
「私はもうお姫様って感じじゃないでしょー。どうせなら女王様の方が・・・って、変な意味じゃないわよ?」
 しかしルイーダの言葉を聞いた酒場の男性客の大半は、「女王様」状態のルイーダに「イケナイお仕置き」をされるよこしまな妄想をしてしまい、それを勘づいた女子たちの凍てつくような視線を浴びたのだった。
 ミミとリッカはルイーダに言われた通りロクサーヌも誘った。だが彼女も、今回はバイヤーとの外せない商談があるそうで、「申し訳ございませんが欠席」とのことだった。
「まあ確かに、ロクサーヌさんならロイヤルマナーも身に付いていそうだから必要無いよね」リッカは納得して頷いた。というわけで二人で出かけることになり(サンディを含めれば三人だが)、ミミはクエスト「絶滅危惧種プリンセス養成講座」を引き受けた!

 それからミミは、部屋で古文書の翻訳(セントシュタイン城図書室の依頼)をしていたイザヤールに、謎の講習会に出かけることになったのを告げた。するとイザヤールは、眉間にしわを寄せ目を閉じて目頭を押さえながら古文書をぱたんと閉じた。彼には珍しく文書を読んで相当疲れているようだ。
 ミミが彼のその様子に驚いて、彼をそっと抱きしめると、イザヤールの渋面は和らいで微笑みながら抱きしめ返し、そして言った。
「気分転換にダーマ神殿まで送っていっても構わないか?」
「はい、もちろん♪それにしても、イザヤール様が古文書に苦戦するなんて・・・。そんなに難解な書なの?」
「いや、それがな・・・」
 イザヤールに古文書の表紙を見せられミミは、彼が疲れきって気分転換したくなる気持ちがよくわかった。そこには古代文字で「伝説の武器商人監修究極のオヤジギャグ集」と書かれていたのである。
 ミミたちはルーラで瞬く間にダーマ神殿に到着し、イザヤールは長い階段をわざわざ上って送ってきた。よほどミミと一緒に居たいのか、オヤジギャグの翻訳からしばらく離れたいのか、おそらくその両方なのだろう。
 神殿の卓が並べてある付近に、今日はいつもよりたくさんの若い女性と、そして見馴れない頑固そうな老人が一人立っていた。「絶滅危惧種プリンセス養成講座」と書いた幟を持っていたので、彼が主催者と思われた。ミミとリッカは老人に講習会に来たことを告げ、ミミは今日の講習の終了予定時間を尋ねた。今日は質疑応答と簡単な実技だそうで、夕方には終わるらしい。
 ミミがイザヤールにそれを告げると、イザヤールは夕方頃までに翻訳を終わらせて迎えに来ると約束して、しぶしぶセントシュタインに帰っていった。老人は集まった女の子たちを見渡し、重々しくも嬉しそうに言った。
「ふむふむ、プリンセスに相応しい麗しいお嬢さんたちが見事に集まったのう。では、さっそく講習会を始めよう。この講座の目的は、今や絶滅寸前の、昔ながらのプリンセスを養成することじゃ」
「昔ながらのプリンセスって具体的にどういうことなんですか?」女の子たちのうちの誰かが尋ねた。
「淑やかだが誇り高く、だが悲しいかなたおやかな故に竜や魔王に心ならずも囚われの身になってしまう、そんな美しくも痛々しい悲劇のヒロイン、それこそがプリンセスのあるべき姿じゃ!なのに昨今はどうじゃ?囚われの身になるどころか、王子や仲間を救いに竜や魔王に戦いを挑み、あまつさえぶっ飛ばしてしまう姫で溢れているではないか!ロマンも詩情も何もないわい!」
 それ、ただのこのじじいのシュミ押し付けているだけじゃね?と、サンディが呟き、みんなおそらく同じ気持ちで帰りたいと思っただろうが、老人があまりに力説するので誰もつっこめなかった。そして老人は、咳払いをして言った。
「では、プリンセスに相応しい行動のシミュレーション訓練をするぞい。・・・ほれ、そこの美しい紫の瞳のお嬢さん!」
 紫の瞳の持ち主はミミしか居なかった。不意討ちで当てられて、ミミはびっくりして飛び上がるように背筋を伸ばした。
「は、はいっ?!私・・・ですか?!」
「うむ。第一問、勇者様のところへ駆け寄ろうとしたら、後ろから悪漢に羽交い締めにされてしまった場合、どうすればよいか?」
「はいっ」ミミは間髪入れず答えた。「相手が人間なら、肉が薄くて痛みを堪えにくい甲の部分をヒールで思いきり踏んで、相手が怯んで腕を緩めたところでお腹に肘打ちを入れて、気絶させます」
「違う違うぅ〜!お嬢さん、おぬしのような可憐な娘が、そんなことを言うとは・・・。正解は、『勇者様、私に構わず、この悪者を成敗してくださいませ!』じゃろ!」
「成敗って・・・だっさ〜」サンディのジト目ゲージがアップしている。
「では挽回のチャンス!第二問!」老人は気を取り直して声を張り上げた。「魔王に囚われてしまったおぬしは、暗い洞窟に閉じ込められてしまった。牢の前には、ドラゴンが頑張っていて、華奢な足は無惨にも鎖で繋がれている。さあこんなとき、プリンセスならどうする?」
 一問目の傾向から見るに、元々優等生タイプのミミは、どんな回答が期待されているかはだいたい察しはついていた。しかし、元守護天使、そして現在地上の守り人の誇りに懸けて、ふやけた行動は取りたくはない。まかり間違っても、項垂れて一人になるまで涙を堪えるなどという回答をしたら、イザヤールがそんなふうに育てた覚えは無いと嘆くだろう。ミミはしようと思うことを正直に答えた。
「『ためる』を使ってテンションを上げ続け、スーパーハイテンションになったところで鎖を引きちぎって、その鎖を武器にして牢の鍵を叩き壊し、ドラゴンにはラリホーをかけて脱出します」
「おぬし・・・間違っていると知ってて、わざと言ってるじゃろ・・・」老人は、怒っているというより悲しげに呟いた。「おぬし、力も魔力も無い非力なプリンセスだったらと想像してみんか!ほれ、隣の青い目のカワイイお嬢さん、おぬしならどうする?」
 指されたリッカは、宿屋に客がいっぺんにたくさん来たときのようにあたふたしながら答えた。
「牢で出される食事を工夫しておいしく変えたのをドラゴンにあげて、仲良くなって逃してもらうとかってどう・・・ですか?博愛主義のプリンセスっぽいし」
 その答えは案の定却下され、他の娘たちは「魔王を誘惑してメロメロにして意のままに操る」だの、「お風呂に入りたいと駄々をこねて用意させ、見るな〜えっちーと言って見張りを辺りから追い払ってその隙に逃げる」だの、「イケメンの勇者か王子が来るまで意地でも助けられることを拒む」などと答えて、老人を大いに嘆かせた。
「ええ〜い、こうなったら実践あるのみじゃ!ダーマの塔に移動して、お淑やかプリンセスになる為の猛特訓じゃ!」
 ここがダーマ神殿なだけあって、参加者のほぼ全員が冒険者で、ダーマの塔のモンスターくらいなら恐れるに足りずなのは幸いだったが、移動がめんどくさいのでミミとリッカを除く女の子たちはブーイングの嵐だった。だが、どんな特訓なのかの好奇心も手伝って、結局全員がダーマの塔に移動した。

 ダーマの塔に着くと、なんと全員にプリンセスローブと黄金のティアラが貸し出された。だが、女の子たちが喜んで装備しようとして受け取ると、異様に重い。着たら動くのがやっと、というくらい重い。
「ヘビーメタルを内蔵している特注ティアラとローブじゃ!重ければゆったり淑やかな動きしかできぬから、これを着た動きに慣れれば、自然と素晴らしく姫らしい優雅な動作が身に付くというわけじゃ」
 重いには重いが、動けないというほどではない。だが、魔物に不意討ちをされて反撃に出たミミは、勢いが付きすぎて、逆に襲ってきた魔物に突進するようにはね飛ばしてしまった。それを見ていたサンディが、ぽつりと呟いた。
「この特訓、姫は姫でも、うみうしひめみたいになってね・・・?」
 しかも間もなくみんな重さに慣れてしまって、普通に戦えるようになってしまった。非力でおろおろどころか、ヘビーメタルの分むしろ破壊力も、攻撃の際の迫力も増している。
「はああ・・・。やはりダメか・・・。このまま、古き佳き時代の麗しの姫は、滅びてしまうのだろうか・・・」
 老人は嘆き、へたへたと座り込んだ。ミミはその傍らにそっと歩み寄り、彼の横にしゃがんで囁いた。
「そうでしょうか。強くたって、必ずしもがさつで乱暴になるわけじゃなくて、優しく優雅になることは両立できると私は思っています。それに、プリンセスにとって一番大切なことは、美しく守りたくなる存在であることより何より、自分の国の人々を思いやり、守っていこうとする心だと思うの・・・」
「・・・ふむ、そうかもしれんのう・・・」老人は頷いた。「確かにそうかもしれん。時代はとっくの昔に変わって、強く美しくを求められるのがごくごく当然になっているのかもしれんな。・・・しかし、やはり何か寂しいのう・・・」
 ミミが老人に慰めの言葉をかけようとしたそのとき、誰かがうっかり開けた宝箱の中身がひとくいばこで、ミミと老人の方に、痛恨の一撃の勢いで飛びかかってきた!ミミは特訓用プリンセスローブの重みのせいでカウンターができず老人をとっさにかばうのでせいいっぱいで、苦手な痛い思いをするのを刹那の間に覚悟した。
 だが、痛みが全く無く、おそるおそる目を開けると、ひとくいばこは真っ二つになって床に転がっていた。そして、ミミとひとくいばこの間には、精悍なバトルマスターの後ろ姿。
「イザヤール様・・・!」ミミがメロメロになった声を上げる。
「迎えにダーマ神殿に行ったら、こっちの塔に移動したと聞いてな」イザヤールは振り返り微笑み、彼女の前に片膝を着いて真摯な眼差しで言った。「私が居ながら、おまえにむざむざ痛い思いを、させるものか」
 すると、そんな光景を見ていた老人が、突然叫んだ。
「そうだ、これじゃ!これじゃよ!娘たちをプリンセスに養成するのではなくて、若者たちを素晴らしく強い勇者に養成すれば、女の子たちもメロメロで自然に淑やかプリンセス化するというわけじゃな!よし、ではこれから、この講習会は若者勇者養成講座に変えるぞい!気付かせてくれてありがとうよお嬢さんや、その装備は礼にとっといておくれ」
 懲りないじーさんね〜とサンディは呟き、今来たばかりで状況が飲み込めないイザヤールはきょとんとし、ミミは重い重いティアラとローブをもらってしまって、困り顔になりつつも楽しげに笑った。〈了〉
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2 コメント

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ムーンブルクの王女・プリン「私を忘れるなんて…解せぬ (神々麗夜)
2017-05-21 20:32:32
以前、何かの本でもお姫様に必要なのはか弱さではなく国民を守る為の優しさと強さと書かれていました。上に立つ人がメソメソしていたら国民はこの人に付いて行こうなんて気にはなりませんから
因みに10では勇者姫という人物が登場し、可憐な容姿に胸がぺったんこなのを気にしているなど、10代半ばの可愛らしいお姫様なのですが、勇者の血を引きいざ戦闘になればバトマスをも凌ぐ攻撃力で敵を薙ぎ払い、会心の一撃を何度も叩き出し天馬に手綱も鞍無しに乗る、『ゴリラ姫』というとんでもないあだ名を付けられてしまいましたw

実話を元にしていますw
〜女の子は誰でもお姫様になれる〜
ビュアールはリリンに見とれている!
ククールの会心の一撃!ビュアールを倒した!
ククール「ご無事ですか?マイプリンセス」
リリン「ククール素敵〜❤︎居眠りしている誰かさんよりず〜っと素敵ですわ」
シェルル「ふぁ〜よく寝た…ってまたククールに良い所取られたぁ」
再びビュアールとエンカウント!
ビュアールはイザやんに見とれている!
シェルルの会心の一撃!ビュアールを倒した!
イザやん「シェルル君、チュー❤︎」
シェ「ギャーッ⁉︎…うぅ、はっ⁉︎リリンち…違うんだ」
リリ「二人でお幸せに。ククール、帰りましょ」
クク「じゃあな」
シェ「待って!置いてかないで!怖い‼︎」
イザやん「シェルル君❤︎」
女の子は誰でもお姫様になれる…そう、心が女の子なら誰でも…

…ビュアールのエンカウントウザいよね!
プリン姫ごめんなさい〜! (津久井大海)
2017-05-22 00:44:48
神々麗夜様

いらっしゃいませこんばんは☆リッカではなく津久井がうっかり忘れておりましたプリン姫・・・。ほんとごめんなさい、イオナズンしないでください。

おお、津久井のテキトーなプリンセス精神論もどきがちゃんと本になっているものにも書いてあるなんて(←違う)なんか安心します(笑)

パッケージのあの方勇者姫なんですね、そんな可憐なのに強いというギャップが嬉しいですね☆でもあだ名ヒドイ・・・。命名誰なんですか、姫のこと好きだから照れてそんなこと言う中学生ですか?!

AIの行動、まるでそちらのパーティ様の日常を学習しているかのような戦闘展開でいらっしゃる(笑)
そちらの師匠いつの間に心が乙女に?!それとも男も乙女心にしてしまうほどのイケメンっぷりということなんでしょうか彼氏さん・・・。助けてくださいセレシア様!

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