セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

冥界への花嫁〈後編〉

2015年10月31日 23時59分25秒 | クエスト184以降
遅くなりましたが今週の追加クエストもどき後編で~す。もって戦闘バリバリになるかなと思ってたんですが、案外あっさり?解決してしまいましたかも(笑)前回のあらすじ、棺桶に閉じ込められた娘が洞窟に運ばれるのを目撃したミミは、助ける為に後を追う。するとそこで会った死者に、娘は死者の花嫁にする為に拐われたことを教えられ、そのような罪悪を止めるよう頼まれる。一方ミミを探すイザヤールは、やはり洞窟に入り・・・。

 拐われた娘が礼拝堂の隣室に閉じ込められていると聞いたミミは、さっそく礼拝堂を出て次の間に入った。するとそこは、鉄格子の大きな箱だけがあって、その中で白装束を着た若い女性が膝を抱えてうずくまっていた。よく見ると白装束と思われたものは、あちこち朽ちかけているが最上質らしい婚礼衣装だった。
 ミミが入ってきたのを見て、娘は涙に濡れた怯え顔を上げたが、ミミはまだがいこつマスクは着けていなかったので、明らかに同じ年頃の愛らしい顔を認めて、娘は少し安堵の表情を浮かべた。それから鉄格子をつかみ、必死に訴えた。
「お願い、助けて!仮装行列だと思ってついていったら、いきなり棺桶に放り込まれたの!必死に叫んだけど気絶しちゃって。・・・気付いたら、このドレスを着せられて、ここに閉じ込められていたわ!何回か見張りが来たけど、不気味な仮装のままケタケタ笑って、その牢に生きた人間が入っていないとこの部屋の扉は決して開かないから、逃げようとしてもムダだって言うばかりなのよ。ねえ、これハロウィンの悪戯なの?だとしたら、悪ふざけにも程があるわ」
 どうやらこの人は、自分が置かれている状況を完全には理解していないらしいとミミは判断して、更にパニックを興させないよう、言葉を慎重に選んで言った。
「そうね、酷すぎるわね。今開けてあげるから、すぐにここから出ましょう」
 ミミはアギロホイッスル同様いつも持ち歩いている最後の鍵を取り出し、難なく鉄格子の鍵を開けた。そして娘の手を引いて部屋の扉を開けようとしたが、熟練冒険者の怪力をもってしても、扉はびくともしなかった。再び最後の鍵を使ってみたが、扉は鍵ではなく何かの封印で閉じられているのか、一向に開く気配はなかった。
 そこでミミは娘の手をつかんだままリレミトを唱えてみたが、不思議な力でかき消された!ミミは少し考えてから、娘の手を引いたまま鉄格子の中に入ってみた。すると部屋の扉は、音も無く開いた。どうやら、この鉄格子の中に誰かが入っていることが、部屋の扉の開閉に関わっているらしい。ミミは再び少し考え込み、娘に向かって言った。
「よく聞いて。この部屋を出て、廊下を長い方にまっすぐ向かうと、エレベーターがあるの。私、そのエレベーターの周辺に居る見張りをなんとかしてくるから、あともうちょっとだけ待っていて」
 娘は、どんなわらにでもすがりたい気分なのか、素直にこくりと頷いた。それでミミはがいこつマスクを被り直し、部屋を出てみると、やはり鉄格子の中に誰かが居ると開く仕組みらしく、部屋の扉は難なく開いた。ミミはエレベーターのある場所に向かった。

 エレベーターの前に戻ってくると、たくさん居たゾンビ系モンスターたちは姿を消していて、エレベーターの見張りらしいがいこつ兵だけが立っていた。がいこつ兵は、デスプリースト姿のミミを見ると、恭しくおじきをして、エレベーターのレバーを動くように作動させ、言った。
「おお、祈祷を終えられましたか。では階上の宴席にご案内致します。極上の血のワインも用意しておりますぞ」
「あいにく私は」ミミは杖を構えて呟いた。「血のワインなんて飲まないの」
 その声にはっとがいこつ兵は振り返ったが、時は既に遅く、ミミの杖の強烈な一撃をくらい、バラバラに崩れ落ちて消えた。
 ミミは急いで娘の閉じ込められている部屋に戻った。ミミが戻ってきたのを見て、娘の顔がぱっと明るくなった。
「ちょっと危険な賭けだけど、頑張って」ミミは娘に言って、しんかんのぼうしとがいこつマスクとしんかんのエプロンを脱いで娘に渡した。「これに着替えて。私はあなたのドレスに着替えるわ」
「それは構わないけど、どうして?」娘は尋ねた。
「万が一他の見張りに見つかったときの用心よ。これを着てデスプリーストに化けて、エレベーターまで急いで行って。中のボタンの一番上を押せば、おそらく地上階に出られる筈」
 ミミが言うと、娘は不安そうに呟いた。
「それって、あなたが私の身代わりにこの鉄格子の中に残るってこと?・・・でも、それじゃあなたが・・・」
「私は大丈夫。この部屋から出されたら、ひと暴れしてすぐに脱出できるから。さあ、他の見張りが来ないうちに、急いで」
 娘はためらっていたがやがて頷き、ミミと衣装を交換した。すっかりデスプリースト姿になると、泣きそうな声でお礼を言った。
「本当にありがとう。今もとても怖いけど、あなたがここまでしてくれるんだもん、私も頑張って逃げ延びてみせるわ」
 そう言って彼女は部屋を出て、廊下を走っていった。ミミは、彼女が危険な目に遭いませんようにと必死に祈り、耳をじっとすませた。やがて、エレベーターが動く音がかすかに聞こえ、とりあえず第一関門は突破したとほっと胸をなでおろした。後は、エレベーターが途中で止まらないことを祈るばかりだ。

 イザヤールは、長い通路を歩いた後、予想通り下に続く階段を見つけて、駆け足で降りた。一フロア分降りてみると、何やら宴のように賑やかな、だが鬼気迫る気配が漂ってきた。用心しつつそちらの方に行って耳をすませてみると、中から途切れ途切れに会話が聞こえてきた。
「この度はご子息様のご婚礼、誠におめでとうございます」
「うむ、魂さえ手に入れば肉体に用はない。屍は祝いの宴の馳走に加えるとするか」
「それにしても、美しい花嫁で羨ましい限りで」
「愚息も、今は冥界に花嫁を連れて行くなどやめろと青いことを申しておるが、冥界から人間界にもやがて力を及ぼす我ら一族の繁栄を目の当たりにすれば、考えを改めるだろう。美しい妻と暮らせるならなおさらな」
 まさか、冥界に連れていく花嫁とはミミのことかと、イザヤールは眼光を鋭くした。そうであってもなくても、いずれにせよ助けなければなるまい。彼は狩人よろしく扉の側に屈み、鍵穴から中の様子を窺った。すると、何となく予感していた通り、宴会のように支度された室内に居たのは魔物たち、しかもゾンビ系のモンスターばかりだった。
 上座に就いているのはナイトキング、ゾンビナイトやがいこつ兵などがその周りを固めている。全員仕留めるのはできないこともなかったが、室内に女性らしい者の姿はなかったので、ミミを探すのを優先にした方が良さそうだと判断して、イザヤールはそっとその場を離れた。このフロアには他に部屋は無さそうだったので、彼は更に下の界に降りてみようと階段に向かう途中で、エレベーターの側を通りかかった。そのとき、急に上がってきたエレベーターの扉ががくんと開いて、中からデスプリーストが飛び出してきた!
 イザヤールは条件反射で剣を抜きかけたが、そういえばミミかと思ってとりあえず身構えるだけにした。するとデスプリースト姿のそれは、イザヤールを見ると、がいこつマスクをむしりとってすがりついてきた。若い女性だったがミミではなかった。
「お願い、助けて!ゾンビコスの人たちに拐われたの!」
 イザヤールが戸惑っていると、娘ははっと後退りして叫んだ。
「まさか、あなたもあいつらの仲間なの?!」
「落ち着け、私は君に危害を加える気はない、事情を聞かせてくれ」
 それでイザヤールは、その娘から事情を聞いて、この娘はゾンビ系のモンスターに拐われたこと、ミミと彼女が衣装を取り換えたこと、どうやらミミがこの娘を逃がす為に身代わりになったらしいことを知った。
「一番上のボタンを押すように言われていたけど私、慌てていて一つ下のボタンを押しちゃったみたい・・・」
「事情はわかった。地上はこの上の階だ、そこには魔物が居ないから、すぐに外に出られるだろう。外に出たらこれを使ってくれ」
 イザヤールは言って、娘にキメラのつばさを渡した。
「ありがとう、でもあなたは・・・」
「私は」イザヤールは静かな、だが強い口調で呟いた。「いろいろ片付けねばならないことがある」
 娘が乗ったエレベーターが上昇していくのを見送って、程なくエレベーターは戻ってきた。イザヤールはそれに乗り込むと、娘から聞いた礼拝堂のあるフロアのボタンを押した。

 ミミは、鉄格子におとなしく入っていることはせず、部屋の扉をなんとかして開けられないかとあれこれ試していた。扉は固く、ミミの力をもってしても壊れない。そのとき、扉を外からガチャガチャ開けようとしている音が聞こえた。見回りが来たのかとミミが慌てて鉄格子に戻ると、鉄格子に戻ったことで外から扉が開いた。だが中に入ってきたのは、見張りのがいこつ兵ではなかった。
「ミミ、無事でよかった」安堵した顔のイザヤールが立っていた。そして鉄格子の扉を開けて手を差し伸べて言った。「さあ、早くこの部屋から出よう」
「イザヤール様」ミミは瞳を輝かせてイザヤールの伸ばされた手を取り鉄格子から出ようとしたが、すぐに首を振った。「だめ、私がここから出ると、部屋の扉が閉まってしまうの。そういう封印みたい。扉は壊れないし」
「扉は壊れない、か」呟いて、イザヤールは扉に近寄った。「ならば扉の周りの壁は、どうだ?」
 言うやいなや、イザヤールはせいけん突きをくり出し、扉の周りのレンガ造りの壁がばらばらと吹っ飛んだ。
「ああ、その手があったの!気が付かなかった!」
 そう言ってミミは弾けるように笑いだし、イザヤールの腕の中に飛び込んだ。イザヤールも笑って、ミミをぎゅうと抱きしめた。

 それから二人は、礼拝堂の控室の青年のところに行って、拐われた娘をこの洞窟から逃がしたことを報告した。彼は、安堵の優しい微笑みを浮かべてから、言った。
「ありがとう。父たちが更に罪を重ねることを止めてくれて。・・・図々しい願いだが、助けついでに、もう一つ助けてくれないか。この洞窟の最下層に、邪神の像が飾られている。それを壊してほしい。そうすれば呪われた死者たちは解放されて、僕も含めて土に還る。ようやく、本当に安らかな眠りに就くことが、できるんだ・・・。自由になった僕たちの魂は・・・慈悲深い神がお裁きくださるだろう。お願いだ、僕を、父を、家臣たちを、救ってくれ」
 ミミとイザヤールはその頼みを聞き入れることにした。
「あなた方の魂に、安らぎがありますように・・・」
 ミミが呟くと、青年は再び微笑んだ。
「ありがとう。君たちの人生に、常に神の祝福がありますように」
 青年は答えて、ミミの手に「スーパーリング」を握らせた。

 ミミとイザヤールは最下層のフロアに行って、一番奧に鎮座されていた邪神の像を叩き壊した。すると、洞窟内の禍々しい気配は一気に消え去った。すっかりひっそりとした中をエレベーターで上り、外に出ると、助けた娘が待っていた。
「ああ、よかった!やっぱり、自分だけ逃げちゃうの気が咎めて、どうしようか迷っていたの!それに、これを返さなきゃね」
 娘は、ミミにがいこつマスクとしんかんのぼうしを、イザヤールにキメラのつばさを差し出した。しんかんのエプロンは着替えられる場所で、ということで、一同とりあえずリッカの宿屋に向かう。
「そっかー、あなたの彼氏さんだったの。それじゃ洞窟深くに助けに行こうとするわけよね」
 娘は羨ましそうに呟く。ミミとイザヤールは照れくさそうに顔を見合わせてから、微笑んだ。〈了〉
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