セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

この箱、開けるな

2017年04月30日 01時30分20秒 | クエスト184以降
また日曜更新ですみませんの追加クエストもどき。好奇心を悪用される「見〜た〜な〜」話と見せかけて、見なかった顛末の話です(笑)

 グビアナ城下町のダンスホールはいつも大盛況で、ダンサーに憧れ以上の恋心を持ってしまう者も少なくない。今日もそんな者の一人が、ホールのバーカウンターで悩んでいたが、悩める理由が少々特殊だった。
 そこへ、デザートランナーからサンドフルーツ集めを終えて、ダンスホールのある踊り子に届けたミミが現れた。日除けと砂避け対策の盗賊衣装かつ「やみのターバン」で顔のほとんどを被ったままの状態で彼女はバーカウンターの前に腰かけ、冷たいミントティーを飲んでほっとひと息ついた。そしてまたかげのターバンで口元を被って建物の外に出るべく立ち上がったところで、カウンターの端にて明らかに苦悶している若者に気が付いた。手には、不思議な紋様を彫り込んである小箱を持っている。その箱を開けようとしては、「いやいや、ダメだ!」と一人でじたばたしているのだった。
「あの人・・・どうしたんですか?」
 ミミはもうすっかり顔馴染みのバーのマスターにこっそり尋ねた。
「さあねえ。あの人は最近来るようになったばかりだっていうのに、ものすごい噂好きのおしゃべりなのと惚れっぽさでもう有名になっててねえ」マスターも声をひそめて答えた。「また誰かに惚れたらしいんだけど、珍しくそれが誰かは言わなくて、ただそれ以来あの小箱持っちゃああやって悩んでるアピールしてねえ。関わると厄介なことになりそうだから、知らないふりをしているんだが、困ったもんだ」
 確かにバーカウンターでいつも頭を抱えている客が居るのは陽気なダンスホールではあまり好ましくないだろう。
「あ〜、ウワサ好きでおしゃべりで構ってちゃんのトリプル盛り男か〜。そりゃ関わりたくないよね〜。さ、ミミ、さっさと乙女の沐浴場行こー。イザヤールさんとデート前にキレイキレイしたいデショ?」
 サンディが大きく頷き言った。自分もネイルの店の客とけっこう噂話で盛り上がるタイプだが、それはそれなのである。
 ミミはやみのターバンの下の顔をぽうと染めたが、ここで反論するとサンディの姿が見えないマスターの前では、いきなり独り言を言う感じになってしまうので、何も言えなかった。そもそも『デートじゃなくてバザールでロクサーヌさんに頼まれたお買い物一緒にするだけだもの』と否定してみたところで、本人たちが実際デート気分で楽しく過ごすので、全く無意味でもあるのだった。
 いくらかそそくさとミミ(とサンディ)が立ち去ろうとしたところで、若者がミミの盗賊衣装をまじまじと見つめた。そして、突然立ち上がり、ミミに小箱を突きつけて叫んだ。
「その姿、あなた盗賊ですよね?!お願いします、この箱盗んでください!持ってっちゃってください!」
「え?!お、落ち着いてください、この箱がどうかしたんですか?危険な箱なんですか?」
 ミミが慌てて言うと、若者は溜息をついて答えた。
「実はその・・・。この箱は、試練なんです」
「試練?」
「はい。僕、自分で言うのもなんですけど、すごく好奇心旺盛で、ヒミツとかを知るのが大好きなんです。そんな僕に、ある人がこの箱を渡してきて、『この箱を開けるのを一ヶ月我慢することができたら、おまえの知りたいあの娘の秘密を教えてやろう』って言ってきて。それで僕は、箱を預かったんですが、もう開けたくて開けたくて堪らなくて。・・・で、箱を盗まれちゃえば、『盗まれちゃいました、不可抗力ですよね〜、さああの娘の秘密を・・・』って言えるかな〜、なんて思いまして・・・」
 そんなワケないっしょー!と、サンディが握りこぶしで若者に殴りかかりそうなのをミミは懸命に止めながら、若者を諭した。
「だめですよ、大事な試練のアイテムを盗ませようとするなんて」
「ですよね〜。・・・でもあなた、盗賊なんてやってるわりには、誠実な方なんですね。・・・そうだ!誠実なあなたを見込んでお願いがあります!」
 ミミもサンディも多少イヤな予感がした。そして、若者が口に出した言葉は案の定なものだった。
「僕の代わりにこの箱預かってもらえませんか!」
 やっぱり・・・とミミとサンディはこっそり顔を見合わせて溜息をついた。
「ダメですよ、大切な試練を他人に託すなんて」
「でもでも!箱の持ち主は、預けちゃダメなんて言ってませんしー!とにかく開けなきゃいいって言ってたんですから。実はこの箱不思議で、預かり所に預けたりしてみたんですが、気になってすぐに引き出しに行っちゃったりしたんです。ただの箱じゃないんです!だからこの箱を持って僕の前からしばらく行方をくらましてください!」
 図々しいとサンディは呆れたが、ミミはこの箱が普通の箱ではないということが気になって、預かることを承知した。ミミはクエスト「この箱、開けるな」を引き受けた!

 ミミは小箱を受け取り、眺めてみた。不思議な紋様に瑠璃のような青い宝石がちりばめられているなかなか美しい箱で、木とも金属とも石ともつかない不思議な素材でできているらしい。そして大きさの割にずしりと重かった。その中身は中で固定されているのか、振っても音はしなかった。留め金が印章を捺した封蝋で固められていて、開けたらすぐにわかるようになっている。確かに不思議な箱で不思議な物が入っていそうだ。
「これを何日間お預かりすればいいんですか」ミミは尋ねた。
「あ・・・それはその・・・」若者はもじもじしながら答えた。「一ヶ月、でお願いします」
「え?!いつこれを渡されたんですか?」
「昨日です」
 ミミは思わずコケかけたが、なんとか踏み留まった。
「コイツ絶対ダメダメじゃーん!ミミ、わざと開けてから返しちゃえば?」
 怒るサンディをなだめつつ、ミミは箱を預かりダンスホールを出た。

 そしてあっさりと一ヶ月過ぎた。ミミは預かった小箱をリッカの宿屋の自室に帰るとすぐに、元パンドラボックスだった宝箱にしまっておいて、このクエストに関しては特に何事も無いまま日が過ぎた。中身が気にならないことはなかったが、自分の持ち物でない物を勝手に見る気は無かったし、まあ中身が何かはは依頼人の試練が終わったら箱の持ち主に聞けばいいかなと彼女は考えていた。
 依頼人の若者の意志が弱すぎたのか、それともミミがある種の呪いが効かない体質だからか、ミミが無性に箱を開けたくなることはなく、イザヤールもまた同様で、サンディに至っては忘れていた。
 約束の日が来てミミは、依頼人がわかるようにまた盗賊衣装一式でグビアナのダンスホールに出かけた。今回はイザヤールも一緒に来てくれて、バーカウンターで飲みながら見守ってくれることになった。彼も今回は砂漠の砂避け対策に盗賊装備である。
「箱を無事にお返しします」
 ミミが言って小箱を依頼人に返すと、依頼人は待ちかねたような顔で受け取った。
「いやあありがとうございます!もう中身が気になって気になって、いっそあなたを探し出して開けてもらおうかと思いましたよ!でも、ダンスホールの誰に尋ねても、あなたのこと『個人情報』の一点張りで教えてくれなくてー。ダンサーじゃあるまいし。そもそも、踊り子さんの情報を教えてくれれば、僕はこんな苦労をしなくても・・・」
 ミミはグビアナのダンスホールでも頼まれてたまに踊ることがあるので、ダンサーと言えなくもないのだが、黙っていた。依頼人の言葉から察するに、彼はやはりここのダンサーの誰かの秘密を知りたいらしい。サンディが、苦労したのコイツじゃねーし!ミミだし!と毒づくのを、私もしまっていただけで苦労してないし、とこっそりなだめた。
 だが、依頼人は箱を受け取ったとたん、呟きだした。
「うう・・・。箱の中身はなんだろう・・・。気になる、気になります!うう〜、開けたいっ」
「今開けちゃダメです!」
 ミミは慌てて叫んだ。最後の最後で開けたら、一ヶ月が無駄になってしまう。こうして、依頼人が箱の持ち主のところに着くまで、結局ミミが箱を預かったまま付き添うことになった。箱の持ち主は、グビアナ砂漠の「みがきずな」が落ちている場所付近で待っているという。少々変わった待ち合わせ場所である。
 そこでイザヤールに城下町の外まで付き添うことになったことを告げると、イザヤールも待ち合わせ場所が怪しいことに大いに同調してから、同行してくれることになった。
「おお、仲間の方も一緒に来てくださるんですか!」依頼人の若者は、体躯のいいイザヤールを頼もしげに見上げてから、首を傾げた。「あれ?・・・あなたには、どこかで会ったような?」
「失礼だがこちらは覚えが無い。これでも物覚えは悪くない方だが」
 イザヤールが言うと、若者は、じゃあ気のせいですね、と言って、一同は出発した。

 待ち合わせ場所に到着すると、フードを深く被ったローブ姿の小柄な者が待っていた。どうやら小箱の持ち主らしい。ミミの依頼人が挨拶をしてから小箱を返すと、その人物は箱を調べてから、開けられた様子が全く無いことに驚きの声を上げ、言った。
「まさかアナタが一ヶ月開けずに耐えられるとは!お見それしました!」だが、すぐに小声で付け加えた。「ちっ、誤算だったな。すぐ開けて町が滅びる筈だったのに。踊り子の情報が欲しいというスケベ心恐るべしだ」
「え、今なんて言いました?」
 ミミはその呟きを聞き咎めて小箱の持ち主に尋ねたが、その呟きを聞いていなかったミミの依頼人が割って入った。
「さあ!約束です!僕の愛する踊り子さんのヒミツ、教えてください!グビアナにたまに現れる美しき踊り子、ミミさんのスリーサイズを!怖そうな男がいつもそばにくっついてるんで、本人に直接聞けないんですよー!」
「え?!」
「何っ?!」
「はァ?!」
 ミミとイザヤールとサンディはいっせいに叫び、一瞬固まった。偶然同名の踊り子が居るのかともミミは思ったが、グビアナに来る踊り子でミミという名の者は現在のところ自分一人しか居ない。若者は、ミミが普段の踊り子のドレスではなく盗賊衣装で顔もほとんど隠れていた為に、ミミ本人と気付かずに小箱を預かるよう頼んできたらしい。一方箱の持ち主は、いやな笑い声を立てた。
「さあな」
「ぼ、僕を騙したのか?!一ヶ月間、箱の中身が気になりまくって苦しかったのに!」若者は叫んだ。「なんの為にこんな真似を?!」
「だから、さっさと開けちまえばよかったんだよ」
 箱の持ち主は言って、フードとローブを脱ぎ捨てた!魔王のしもべである魔物、ひとつめピエロが現れた!
 ひとつめピエロは、小箱に手をかけ、続けて言った。
「この箱の中には、大魔王様の魔力が籠った、とある金属が入っている。箱を開ければ、金属が発する大魔王様の声に魔物たちが引き寄せられて、人間の町は壊滅するという寸法だ。おまえならさっさと好奇心に負けて箱を開けると思ったのに!・・・まあいい、おまえたちだけでも俺たちのエサにしてやる!ここで俺たち魔物の大軍に押し潰されて死ね!」
 ひとつめピエロは小箱を開けた!そのとたんに、周囲の魔物たちがわらわらと集まってくる!ミミは急いでバックダンサーよびをし、イザヤールはビッグバンを放った!集まってきた魔物の軍勢はあっという間に倒され、ミミは静かに小箱の蓋を閉めた。
「ウソだろ・・・こんな大軍を一気に・・・うわーん、大魔王さまあー!」
 ひとつめピエロは逃げ出した!
 依頼人の若者は腰を抜かしていたが、ミミとイザヤールに礼を言った。
「助けてくれてありがとうございます」若者はお礼に「サングラス」をくれた!「いやあ、ミミさんのサイズ知らないまま死ぬとこでした!」
「教えたくないんです。ごめんなさい」
 ミミは静かに呟き、やみのターバンを外した。
「え!ミミさん?・・・ってことは・・・」
 振り返った若者は、イザヤールの眼光だけで、先ほどの魔物の大軍に匹敵する恐怖を味わい、惚れっぽさの方は多少改善されたという。
 サンディ曰く「てゆーかファン失格だしー。まあイザヤールさんみたいに着ぐるみ着ててもミミってわかるのもアレだけど・・・」〈了〉
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2 コメント

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気合いが足りない! (神々麗夜)
2017-04-30 21:58:46
開けたすぎる!ひとつめピエロの話からすると箱自体には開けたくなる呪いはかかってなさそうですな…つまり依頼者の気合いが足りない!
そもそも気合いがあれば目視でスリーサイズだって分かるんです!(え?
サンディが何気にポンポコダンスの時の事言ってますねw確かに着ぐるみでも分かるのは…うん…


リリン「何?ククール」
ククール「えーとリリンのスリーサイズは上から95、58.…」
リリ「きゃー!突然言い出しますの⁉︎っていうかなんで分かるのよ⁉︎」
クク「人を…特にレディを見る目には自信があるのさ…ってどうした?」
リリ「ダイエットしようかしら…」
クク「必要ないって!」ヒョイ!
リリ「きゃっ!」
クク「こんなに軽いんだから…な?」
レレン「お姉ちゃん、ククールさんに高い高いしてもらって良いなぁ〜私にもやって」
クク「絶対にヤダ!お前重いし」
イザやん「レレン、私が高い高いしてあげよう」
レレ「やったー」
グギィ!☆
イザやん「こ…腰がぁあ…」
酒場のカウンターでそのやり取りを見ていたルイーダさん
ルイーダ「まだまだねククールさん。測定に20秒掛かってるわ…ちなみに私は5秒で分かるわ!」
その頃、シェルルはククールにグランドクロスで吹っ飛ばされ病院送りになっていた
シェルル「誰も来てくれない…あ、そうそう、DQ10にもパンダの魔物どころかクマの魔物はいないです」
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眼力すご〜い♪(で片付けていいのか) (津久井大海)
2017-05-01 19:47:10
神々麗夜様

いらっしゃいませこんばんは☆気合いでのサイズ透視には願望フィルターがかかることもございます、ご注意くださいませ(ホントか?)
ポンポコダンスの話をまだ憶えていらしてくださったとは!ありがとうございます〜。着ぐるみ着用元弟子をわかるイザヤール様でも、サイズ目視はムリと思いたい(笑)

わ、出血大サービス!そちらの女主さんのスリーサイズが!あともうちょっとで全部わかったのに惜しい(笑)
ダイエットぉ?!そんなスタイルで必要ない、絶対ないです!ううう羨ましい(泣)
イケメンに抱き上げられて軽いと言われるステキシチュが、妹さんの重みで事件に!戦士系な師匠もアウトな重さって(汗)
ルイーダさん、恐るべし!ダンスホールのオーナーもできそうです。

彼氏さん、入院中なのに親切なご回答ありがとうございますwそっか、熊すら居ないのですね、熊耳プクちゃんが居るからでしょうか?(違)
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