英語教師のひとりごつ

英語教育について考える。時々ラーメンについて語ることもある。

間違えやすい語彙を正しく使い分ける

2014-02-12 17:57:35 | 日記
文としては正しくても、意味的に自分の表現したい文と異なる場合があります。この場合、当然自分の意図と違う解釈をされてしまうので、注意しなければいけません。生徒は教師からのフィードバックを得る機会があれば、正しい表現を確実に覚えていきます。そういった表現はその都度訂正してあげることが大事だと思います。

もちろん現実的には、教師がいなくても正しい表現が使えるように、辞書の使い方を指導することも大事だと思います。しかし、辞書は中級以上の学習者でなければ、なかなか例文まで目を通して正しい語義を探し当てることはできないでしょう。これは地道に辞書をひくことを習慣づけしながらマスターしていくしかありません。

しかし問題はさらに複雑だと思います。多くの生徒は、たとえ辞書のひき方にある程度慣れたとしても、いや時には慣れている生徒ほど間違った語意の選択をしてしまうようです。具体的に以前遭遇した例をもとに考えてみます。

次の日本語を英語で表現したいとき、どのように言うでしょうか。

(1)彼女(友達)のことが心配だ。

一見非常に簡単な問題だと思うのですが、生徒は辞書をひいてこのような文を作ってきます。

(1')I care about her.

なるほど、確かに辞書でcareをひいてみると、いくつかの意味の中に「心配する/気づかう(about)」などと書かれています。しかし結論としては(1')は誤りです。この場合、実際には例えば次のようにいいます。

(1)I'm worried about her.(彼女のことが心配だ。)

問題は(1')の意味です。それにしてもcareを使った表現は生徒をひたすら混乱させます。その原因は私なりに解明(この表現が適当かはこの際置いておいて)しているので、careを使った表現について少しまとめておきたいと思います。

careを使った表現で混同されるものには次の3つがあります。

take care of, care about, care for

まずtake care ofは日本でよく知られた表現なので理解している生徒が多いでしょう。もちろん「~の面倒をみる」の意味で、次のように使います。

(2)I have to take care of my kids.(子供の面倒をみなきゃいけないの。)

take care ofはまた、「(仕事など)を実行する/引き受ける」という意味でも使われます。次の例がそうです。

(3)I have many things to take care of.(やることがたくさんある。)

また、別れ際の挨拶としても用いられます。

(4)Take care(of yourself).(気をつけてね。)


次にcare aboutについて。「~を気にかける」という日本語でとりあえずおさえておくとよいでしょう。例をみてみましょう。

(5)I don't care about what they say.(彼らがなんといおうと気にしない。)(『ジーニアス英和辞典』より)
(6)Most people care about other people's opinion.(ほとんどの人が他人の意見を気にする。)(Swan(2005;p.128)より)

care aboutのあとに人をおいた時には少し注意が必要です。(1')をもう一度見てみましょう。

(1')I care about her.

これは多くの場合、「彼女のことをいろいろ気にかけている→彼女のことが好き」と捉えられます。よって家族や同姓の友人であれば問題ありませんが、異性の友達を目的語にとると、恋愛対象として好きだと勘違いされる恐れがあります。もちろんそう伝えたいならなんの問題もありません。こういえば意味が「友達として」だとクリアになります。

(7)I care about her as a friend.(友達として彼女を気にかけているよ。→友達として、彼女が好きだよ。)


最後にcare forをみてみましょう。はじめに注意したいのは、care forは他の2つと比べて使用頻度はあまり高くありません。そして意味は、「~の面倒をみる(≒take care of)」と「~が好きだ(≒care about)」の両方の意味になります。どちらの意味で使われているかは文脈次第なので、生徒があえて使う必要はないと思いますが、使われたときに理解できる(つまり受容語彙)必要はあります。このことをとりあえずおさえておけば、とりあえず学習上問題はないのですが、一応、care forについてもう少し考察しておきましょう。次の例文はどう解釈されるでしょうか。

(8)I care for my grandmother.

これは2つの可能性があります。

①私は祖母の面倒をみている。
②私は祖母が好きだ。

何人かのネイティブに訊ねてみると、「どちらかはこれだけではあいまい」という意見と、「自分ならまずは①として解釈する」という意見です。「あいまい」と言った人も、どちらかといえば①と解釈するようです。これは、おそらく自分自身の(言語)経験や文化的側面と照らし合わせて判断していることが大きいと思います。ただし、この例も含めて多くの場合、文脈から意味は特定されるので、そのような訓練を積んでおくことは大事だと思います。さらに余談ですが、care aboutとcare forでは少しニュアンスが異なります。それぞれ下のような感じです。

care about: ~について間接的にあれやこれやと気にかける→(間接的に)~が好きというニュアンス
care for: ~に対して直接的に気にかける→(やや直接的に)~が好き

まぁこれがコミュニケーションの障害になることはないので、気にすることではありません。余談でした。

それぞれの表現を指導してあることを前提にすると、混同しないようにしっかり整理しておくことは記憶の定着に効果があると思います。タイミングをはかりながら、こういった知識を指導し、語彙力をつけていきたいですね。ちなみにこの3つの使い分けに関してはSwan(2005;p.128)に記述があるので、参考になると思います。


ソチオリンピックが開催されています。ハーフパイプで若い日本人選手(15歳と18歳!)がまずメダルを獲得しましたね。おそるべし、若い力。そして高梨沙羅選手は残念でしたが、15歳で4位はめちゃくちゃすごいことです。感動しました!


【参考文献】
Swan Michael.(2005). Practical English Usage. Oxford University Press.


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