ロンドン ボヘミアン通信

趣味と好奇心の趣くままの、気ままなロンドン生活日記

バレエ:Apollo/24 Preludes/Aeternum@Royal Opera House

2013年02月24日 00時32分56秒 | バレエ・ダンス


ロイヤル・オペラ・ハウスでバレエ鑑賞。今回のチケットは、Meetupの観劇が好きな人の集まるグループから購入。このグループに入っておくと、「こんなん、ありますよー、見に行きませんかー」とお知らせが来るので、その中から好きなのを選んで行ける。自分で並んでチケットを取らなくて良いので、使えるーー。

APOLLO
Choreography: George Balanchine
Music: Igor Stravinsky
Apollo: Carlos Acosta
Terpsichore: marianela Nunez
Calliope: Olivia Cowley
Polyhymnia: Itziar Mendizabal

まず、アポロ。アコスタですよ、アコスタ。彼ほど一つ一つの動きが完璧に決まる人は居ない、まるで動く彫刻のよう、と常々思っていたので、そういう人がギリシャ彫刻のアポロをやるのって、まさにうってつけ。ただ彼も結構トシ取ってきているので、一昔前のような、はちきれるような躍動感というのはもう無い感じ。でも「アポロ」自体が、飛んだり跳ねたりっていう高度な技術てんこもりというタイプの振り付けでは無いので、ちょうど良いかも。踊りの技術を見せるというよりは、動きと動きが繋がって行って、一瞬の美しいタブローをいくつも紡いでいくという感じです。ミューズの女神三人は、動きが揃っていて美しかった。

24 PRELUDES
Choreography: Alexei Ratmansky
Music: Fryderyk Chopin
Leanne Benjamin/Valeri Hristov
Alina Cojocaru/Steven McRae
Sarah Lamb/Edward Wason
Zenaida Yanowsky/Rupert Pennefather

ロイヤル・バレエが初めてラトマンスキーに振り付けを依頼した作品。初めてというだけあって、豪華キャストが当てがわれてますねぇ。ショパンの24曲のプレリュード一曲一曲に振り付けられていて、テンポが良くて飽きさせない。まるで一個一個味の違うキャンディの詰まった箱みたいで楽しかった。ショパンのプレリュード、ピアノで聴きなれているために、オーケストラにスコアを直すと、なんっか間延びするなぁー、って感じの曲もありましたが…。まぁ、音楽を聴きに行ったワケでは無いからいいか。何となく、ストーリーがあるような、無いような。観客が勝手に頭の中で自分で物語を作ってください、っていうヒントになるような動きはそこかしこに出てくるけれど、これ、といった、確たるストーリーラインは無し。基本はクラッシックのステップに、ちょっと珍しい動きも織り込まれていて、モダンは苦手、っていう人でもすごくとっつきやすいと思う。しかしプリマが4人集まると…。いつも主役でソロを踊り慣れてる人たちが、4人きっちり動きを揃えるのって、難しいのかしら、と思うくらい、音楽のテンポの取り方がそれぞれで、ずれていたのがちょっと気になった。個人的には、ヤノウスキーの情感のこもった、滑らかな動きと、サラ・ラムのしゃきしゃきした動きが好みでした。男性陣4人は、誰が目立つ、とか言うのがなくって、みんなサポート体制万全で素晴らしかった。男性ダンサーはそーでないとね。

AETERNUM
Choreography: Christopher Wheeldon
Music:Benjamin Britten
Marianerla Nunez/Nehemiah Kish
James Hay
Marianela Nunez/Federico Bonelli

こちらはクリストファー・ウィールドンの新作の初演。これを観て思ったのは「私、ブリテンの曲、好きかもよー」…って、そこかい? そう思った割には曲想とか既に思い出せないんですが、振り付けは曲と良くマッチしていて面白かった。まるで空間に人間の身体を使って線描を描いているような感じでした。最初のムーブメントは、メインの二人がまん中で踊っている周りで4組のペアがそれぞれの動きを行っているんですが、この時ほど昆虫の複眼が自分の目に付いていたらいいのに、と思った事はありません。全部の動きを、逐一観たいのに、人間の目ではまん中の主役にしか焦点が当てられないーー。あーー、勿体無いー、フラストレーションっ。ウィールドンの動きは、クラシカルの型には嵌まって無いので、きっとそれをこなすためにそれぞれのダンサーはすごく努力したと思うんです。それが、目の端っこでしか捉えられない、というのがもう、残念で残念で。実は私、こういった新しい系の振り付けって、とっつきにくくてあんまり観に行ったこと無いんですが、随分楽しめました。人間の身体って、こんな風にでも動くんだねー、っていう新鮮な感動があります。

今回は二つの作品が初演だったので、カーテンコールでは振付家が二人ともステージに出てきて挨拶しました。何だか得した気分です。ちなみに下はウィールドンのリハーサル風景。




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ハンタリアン・ミュージアムでお絵かき

2013年02月18日 00時53分23秒 | 絵画・スケッチ・作品


趣味のお絵かきグループで集まって、知る人ぞ知る、ハンタリアン・ミュージアムにスケッチに行ってきました。ロンドンにはあまり知られていない小さなミュージアムが結構沢山あって、ここはその一つ。動物や人間の骨とか歯とか、内蔵の瓶詰めとかが所狭しと並んでいる、えぐい・キモイ系の博物館です。もともと外科医の卵用の資料館として存在するもののようで、いやもう、病理の標本てんこもり。こういうの、苦手な人は絶対近寄りたくない博物館だと思うけど、私はけっこー好き。スケッチブックを持って一日つぶすには、もってこいです。


頭蓋骨、よりどりみどりです。頭蓋骨って、ただの丸いドーム型の脳みそ入れかと思ったら大間違い。頬骨が側頭部に伸びて繋がる様子とか、眼窩が鼻やおでこに繋がって行く様子とか、実にややこしい。人間って、複雑にデザインされているものですね。あと、それぞれの頭蓋骨に「ヨーロッパ人・男性」とか、「アフリカ人・女性」とか、「中国人・成人」とか、きちんと説明もついているんですが、「骨になっちゃったら、皮膚の色に関係なくみんな象牙色でおんなじなんだねー」なんてことに妙に感心したり。


内臓とか胎児のホルマリン漬けとか、ビクトリア時代だからこそ出来た実験の末の標本で、今では倫理的にムリムリムリー、っていうものも沢山あるんですが、どうも軟らかい臓物系は描く気になれないので、骨を集中的に描いていました。一個ぐらい瓶詰めの何かを描けばよかったかな。左下は、臨月の胎児の頭蓋骨。この同じ頭蓋骨を隣で描いていた女の子、「まだ頭のてっぺんが開いたまんまだねー」って言うので、「そうよー、この四枚の頭蓋骨が重なり合って、頭を小さくして産道を通ってくるのよー(事実)」って言ったら、「ぎゃーーー、やめてー。そういうこと考えたくないから、私、子供産まないって決めてるのーーっ」って、チョー気持悪がってたのが笑えた。


こちら、本日の人気標本、水頭症の25歳男性の頭蓋骨。これ、みんながこぞって描いてた。インパクトあるのよねー。しかし、ここまで頭蓋骨を拡大してでも、命を繋いで行こうとする人間の体の仕組みっていうのは、すごく摩訶不思議なものだと思う。

ところで「二階に怖いものがある。悪夢見そう」っていう人が二人いたので、いそいそと見に行ってみたら、昔の外科手術に使われていた道具が並んでいました。参考までに、この下の写真のようなものです(これは以前、オックスフォードの科学博物館で撮ったもの。ハンタリアン・ミュージアムは残念ながら写真撮影禁止)。


外科医の道具というよりは、大工の道具みたいで笑えるんだけど、人によってはこういう手術道具が大そう怖いものらしい。なんでだー? 自分が切られちゃうところを想像して痛いのかしら??? 私はどっちが怖いっていったら、瓶詰めの内臓の方が、その人の魂の一部とかが残っていそうでよっぽど怖いというか、きも悪いけどなー。

ちなみにハンタリアン・ミュージアムのリンクはこちらです。

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スコーン

2013年02月16日 22時45分31秒 | 


何か口淋しい、何か甘いものが食べたい。そうだ、スコーンを焼こう!と思い立ち、出かけたついでに小麦粉とバターと卵を買って帰ってきました。…でも、スコーンって、卵、要らないんですね。知らなかった。何にせよ、まん中からばっこーん、と豪快に割れてくれて嬉しい。海を割ったモーセさんもびっくり。お茶の時間に、甘いものが一緒にあるのって、幸せです。卵が余っているし、次回はショート・クラストでタルトに挑戦…してみようかな。…と思ってレシピを調べると、バターや砂糖のハンパ無い使用量に、ちょっと恐れ入っているのでした。

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バブルズ

2013年02月14日 01時36分48秒 | 猫のバブルズ


かあさん、なにしてるですか?
ぼくとあそぶです。

バブルズ、最近の流行りは、私とPCの間に割り込んできて、PCの前で寝ること。


あそんでくれないですか?
それじゃぁちょっと失礼して...。




…はー、どっこいしょっと。

キーボードに置いた両手の間に挟まる形で、私の腕にアゴを乗せていい気分で熟睡しています。私は家でもダウンジャケットを着ているので、ふわふわ暖かくて気持ちいいらしい(生活感丸出しの背景は、ごめんなすってですよ)。

ところで去年の末から、バブルズはまったく外に出なくなりました。というのも、私の外出中に犬に襲われて、それが相当なトラウマになっているらしいです。まぁ、バブルズも結構なお歳だし、そろそろずっと家の中にいてもいいかな、とは思いますが、ちょっと不憫です。

犬に襲われたバブルズをかくまってくれていたのはお隣さんで、夜の11時頃にうちに届けてくれました。「バブルズは今日、大変な目にあったんだよ。外に出しておくのは危険だから、うちで預かっておいたよ」という話。私はてっきり、バブルズは下の階の可愛いお姉さんのところに遊びに行っているものとばかり思っていたので、びっくりでした。いや、何がびっくりって、犬に襲われたっていうのももちろんだけど、私、ほとんど近所付き合いをしない人なんで、お隣さんとも実は初対面。「なな、なんでバブルズの名前と住所を知っているのーーー???」…というのでびっくり。バブルズ、以前住んでたフラットでもそうだったんだけど、飼い主のワタシよりもずっと顔が広い。一体、私の知らないところで人間の言葉、しゃべってるんとちがうか?

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ワークショップ@ナショナル・ポートレート・ギャラリー

2013年02月03日 23時22分47秒 | 絵画・スケッチ・作品


Chevalier d'Eon
by Thomas Stewart, after Jean Laurent Mosnier
oil on canvas, 1792

ナショナル・ポートレート・ギャラリーの有料ワークショップに参加してみました。どんな事をするのか見当もつかないまま、その日のワークショップ担当の女性アーティスト、セイディーさんの後について、鍵のかかった扉の向こうにあるアトリエ・スペースに誘導される。参加者は5人と少人数。アトリエではまず、上の肖像画をスライドで見せられる。女性かと思ったら、男性なのだそうだ。女装癖のあった、18世紀のスパイということで、彼自身、自分が男か女かは隠していて、巷でわいわい噂話になっているのを大いに楽しんでいたとか。なかなか愉快な人物。...しかし、いーのかスパイがそんなに目立って...。

余談:この肖像画はまだ最近ナショナル・ポートレート・ギャラリーが購入したもので、ニュー・ヨークのオークション・ハウスでは「婦人像」として出品されていたとか。それを、テレビでもお馴染みの目利きのアンティーク・ディーラー、フィリップ・モールドが、「あの胸に着けている勲章は、男性のみに与えられるものだ」と知っていたために、この人物が男性だと分かったとか。

で、このワークショップのテーマというのが、「絵画表現で、何が男性・女性を決めるのか、実践を交えながら考えてみよう」というもの。それで与えられた課題というのが、18世紀の肖像画が集めてある階に行って、男性、女性の絵2枚を選び、男性の頭を女性の身体に、または女性の頭を男性の身体に模写で乗っけてみる、というもの。

まずは素描の集めてある部屋に通され、手を慣らすためにその時代の技法を真似て一枚模写してみましょう、ということで描いたのが下の絵。今までほとんど使ったことのない、テラコッタ色のコンテで描いてみました。慣れない画材は、扱いにくし。模写のモデルになったのは、ヘンリー・パーセル像。...でも実際のドローイングよりもハンサム君になったかも。



さて、実際に描くとなったら、女装の男性よりも、男装の麗人の方が、よっぽど描く意欲が出るわー、というわけで、私が頭に選んだのはフランケンシュタインを書いた作家のメアリー・シェリー、身体に選んだのは、コスチュームがステキな軍服姿のウイリアム4世。


ざっと頭だけ自分のノートに描いてみてから、本番



出来上がったのが、この絵。女性の頭を描いている時は、細く、繊細な線で、髪の毛も一本一本、丁寧に、柔らかに、と、ほとんど無意識に心がけて描いていた。軍服姿の部分は、男性的に、強い線で大きく。頭とのコントラストを付けるために、身体も大きめに、と意識しながら描いていたら、大きくしすぎたわ。プロポーションがちぐはぐになってしまった。ちなみに元絵は下の二枚。メアリー・シェリー、似てねぇ~~っ。

  


時間が少しだけ余ったので、最後の10分くらいで描いたのが下の絵。詳細をメモして来なかったので、元絵を探せないんだけど、と、ある政治家の頭を、うっふんとシナを作っているポーズの女性の身体に乗っけてみました。シルクハットには、薄絹を巻いてみたりして。女性の男装はカッコイイけど、男性の女装はコミカルになってしまうのはナゼなんでしょうね。



<追記> 後日、このおじさんの身元が割れたので(Lokiさん、サンキュー)、元絵も貼り付けておきます。


Charles James Fox
by Karl Anton Hickel, 1794


このワークショップで面白いなと思ったのは、描いている時に、ほとんど無意識に、「どうしたら女っぽくなるか」とか「男性っぽさは、どうしたら出るのか」と考えながら手を動かしていたこと。


余談になるけれど、これは今回のワークショップではなくて、1年近く前に模写したダ・ヴィンチの若い娘の素描。なぜここに乗せるかと言うと、私これ、ダ・ヴィンチは男性のモデルから描き起こして、無理やり女性に似せているのだと思うんですよ。模写していて気付いたのが、この「女性」のアゴの線があまりにも強すぎること。「女性はこんなごっついアゴしてないよー」と思いながら描いていて、「あ、そーか、この時代、きっと女性モデルって多分あんまり居なかったんだ。ダ・ヴィンチは工房の若いイケメンをモデルに使ったな」と、ハタと気付いて、ほとんど確信しております。裏は取ってないけど。何が男性・女性を分けるか? という問いに対しては、要素は色々あると思うけど、アゴの線って結構大きなポイントかも。

...というワケで、さすがお金を払って参加するワークショップ、手だけではなくて、少々頭も使わされました。たまにはこういうのもいーかも。

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