ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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時給300円セクハラ奴隷制度の闇を暴く講演に潜入!

2012年04月27日 | Weblog

 外国人研修生という言葉をご存じだろうか。これは研修と称して中国やタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった外国人を、日本の中小零細企業などが最長3年間、雇入れる制度である。この制度を悪用し、“時給300円”といった法外に安い賃金で奴隷のようにこき使ったりする経営者が続出するという「日本経済の闇」にかかわる制度である。

 この外国人研修生問題に長年取り組んでいる「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」事務局長の鳥井一平氏が3月24日、東京都新宿区内のザ・ボディショップ新宿店で「人身取引を知っていますか?  Made in Japanの真実 時給300円の労働者」と題し、講演を行った。主催はNPO法人「ポラリスプロジェクトジャパン」。闇の深さを知るため現地に向かった。

 会場は20代の若者を中心に約20人が参加していた。鳥井氏は、計70分以上の講演中、プロジェクターで表や写真を次々と映しながら、じかに見てきた闇を語り始めた。特に衝撃的だったのは、次の話だった。

 「2005年に岐阜県から一本の電話がありました。裁縫(さいほう)の中小企業で働く中国人の研修生からで、残業代について訴えていたが、よくわからない点が多かったので、岐阜に行き、やっとわかった」と言い、鳥井氏は給与明細を映し出した。そこには「時給300円」、「230時間」とあり、その下に「6万9千円」とある。これはなんと「残業代」だという。労働基準法では、通常の残業は、基本給の25%増し、休日の場合は50%増しになるにもかかわらず時給300円。しかもその金額で、一日8時間労働以外に、1か月間で230時間も残業している。

 さらにその下には「まとめ7,232円」とある。縫製業界では「まとめ」とは内職仕事を指す。つまり、寮に帰ってから1個10銭~20銭程度で、ボタン付やワッペン付をしているのだ。合わせて76,232円。これはあくまで残業代である。
 では、基本給はどうなっているかというと、雇用契約書には「月125,000円」と明記してある。一体どういうことか。鳥井氏はこう語る。

 「基本給のうち、会社側が実際に払っているのは、月1万5千円の食費と、強制貯金の3万5千円。つまり、差額の7万5千円は、どこかに消えているんですよ。労働保険料などを差し引いても、少なくとも5万円は抜いている。ということは、200人の研修生を受け入れるとすれば1カ月1千万円、年間1億2千万円をピン跳ねしていることになります。これは新たな闇のビジネスですよ」

 次に鳥井氏は、茨城県鉾田市在住の研修生のものという「賃金台帳」を示した。そこには基本給約11万円、残業代約7万円、計約18万とあり、一見まともだが、その下に「法定外控除額」とあり、ズラッと項目が並び、計9万円近く差し引かれている。

 このカラクリを鳥井氏はこう説明する。「法廷外控除額は何かというと、まず、『家賃5万5千円』。鉾田市の人には申し訳ないけれども、ここは田舎です。ここで5万5千円の家賃となると、ものすごい、いいところに住める。しかも、この実習生は3人で一緒に住んでいるので、16万5千円の部屋ということになるが、当然、そのような部屋ではない。要するに、会社側がベラボウにとってるわけですね。さらに『布団リース6千円』『洗濯機リース1,500円』『テレビリース1,800円』『冷蔵庫リース1,000円』『流し台リース500円』『電気炊飯器リース800円』『調理器具リース1,000円』『掃除機リース1,000円』などとある。そこで、この会社の社長に『どこのリース会社にリースしているんですか? 』と聞くと『うちがリースしています』。つまり、帳尻合わせして、全部とっているんです」

 こんな会社もあるという。なんと「トイレの使用時間・使用回数表」という表を作り、女性の研修生たちがトイレに行く回数、時間を記録して、1分15円の罰金をとっているというのである。「女性がトイレに行く回数を数えるだけでも、それはセクハラですよ。この会社は、トヨタ自動車の孫請けの会社でした」と言う。

 また、殴られて失神した女性の写真を映し、こう語る。「これは富山県氷見市(ひみし)で起きた事件です。社長と社長の息子にぶん殴られて蹴られて、失神した時の写真。往々にして女性の研修生は、セクハラと共に、こうした暴力事件も非常に多いです」

 外国人研修生の入国者数の推移は、2008年時点で約10万2千人。この制度は実は世界的に悪名をはせており、国連で何度も「人身売買」「女性差別」「人権侵害」といった指摘を受けている。

 そうした中、日本国内で2010年に法改正があり、制度はほんの少しだけ変わった。これまで研修生として1年、技能実習生として2年、合わせて最長3年の在留資格だったのを、法改正して、研修生、技能実習生を完全に分離し、研修生で入国した外国人については在留期間は1年のみで延長なしとし、技能実習生の場合は従来通り最長3年間とした。「制度変更後も、問題の本質は変わってません」と鳥井氏は言う。

 なぜ、時給300円がまかり通るのか? なぜ不正行為、セクハラ、暴力が絶えないのか。それは一部の不心得者による仕業なのか? そう問いかけながら、鳥井氏は、こう語る。

 「色々な社長を見てきたが、はっきり言うと、そんなに悪い人はいません。普通の社長。暴力団、やくざではない、気のいいおじさん達。それが『邪悪な欲望』に変貌するわけですよ。なぜかというと、この制度は、人を変えてしまう恐ろしい制度なんです。なぜなら、いくら社長と研修生がフレンドリーになっても、例えば、社長が冗談で一言、『そんなこと言ったら故国に帰すぞ』と言うと、研修生はビクッと怯えてしまう。そうした反応を見て、だんだん、『これはいけるな』と思ってしまう。つまり、著しい支配、従属関係にあるわけです。だから、問題解決のためには、この制度そのものを廃止する以外に手はありません」

 外国人研修制度は、決して他人事ではない。安価に購入している様々な商品のウラには、外国人研修制度がある。この制度を廃止するか存続するか、一人一人が問われている。

 

 2011年4月1日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「潜入! ウワサの現場」で記事
 
「時給300円セクハラ奴隷制度の闇を暴く講演に潜入!」
 
を企画、取材、執筆しました。 

 

写真は、トイレ使用時間・使用回数表


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