新米親父土木建築コンサル社長のつぶやき

50代にして会社を起業した
土木建築コンサルタントの社長。
専門分野である環境・プラント調査等
会社経営の苦労等。

浦安市住宅再液状化対策の地下水位低下工法の非現実性

2012-02-13 21:03:50 | 日記

東日本大震災により、関東地方では各地で液状が発生し、その結果、住宅が
低下、傾斜を起しこれらの対策をめぐり社会問題となっている。
特に、住宅被害が顕著だったのが千葉県浦安市である。
これらの住宅被害を受けて、浦安市は地盤工学会、土木学会、建築学会に
「浦安市液状化対策技術調査」を委託し、その委員会が昨年7月に発足した。
委員会は4回行われ、昨年12月18日に市民報告会という形で委員会報告が行われた。

この報告会での主な内容は下記の通りである。

○今回の地震で地盤改良(サンドコンパイションパイル工法、グラベルドレーン工法、
サンド・ドレーン工法)が行われた所では液状化による噴砂は確認されなかった。

○技術開発状況と住宅所有者の費用負担等の観点から、住宅と道路の一体的な
対策工法として実現可能性がある工法として「地下水位低下工法」を挙げている。

浦安市の今回の液状化被害を受けた地区は全て埋立地であり、地下水位が非常に
高いわけであり、この地下水位を下げて(地下水位より上の地層はどんな地震が来ても
液状化しない)の工法である。

確かに原理的には理想的な工法と言える。
しかしならが、私は下記の理由で「地下水位低下工法」は本当に合理的な工法で
あろうかと考えた時に疑問に思わざるを得ない。

国内での液状化対策工法として採用されているのが1件しかない。
この工法を採用さたのが、川崎市にある某石油メーカーでタンク郡のまわりに
止水壁を設置し、止水壁の内側にポンプを設置して地下水を汲み上げて
地下水位を低下させているのである。

この止水壁が完全に止水性能があるなら止水壁の内側の地下水位上昇の要因は
雨水しかないのにも関わらず、常時ポンプで地下水を汲み上げているのだ。
この事は、止水壁を完全に施行する事がいかに、難しいかという事にほかならない。
そして、常に地下水を汲み上げている為、石油メーカー周囲の工場等が少なからず
沈下、傾斜が発生しているのである。

このように、止水壁を完璧に構築する事がいかに困難かが理解出来ると思う。
委員会が提言するように、確かに初期費用は他の液状化工法よりは低減される
が、地下水位を常に低下した状態で半永久的に維持させるためには、常時ポンプで
地下水を汲み上げるための費用と周辺構造物に及ぼす沈下傾斜を考えた場合、
本当に適切な工法であるのかを今後さらなる検討が必要だ。

委員会の方々は液状化の専門家ではあるが、地下水の専門家はいない為
このような結論に達し、国交省もこの対策工法に前向きだというのは疑問だ。

 


新しい液状化の形。

2011-07-18 17:38:51 | 日記

今回の東北大震災で大規模液状化を起こしたところで地盤調査を実施して、新事実が明らかになったので久々にこのブログを更新した。

液状化とは、地盤中の砂と地下水が液体状になって地表に吹き出て初めて、液状化を起こしているとの判断が可能だ。
地表に出なければまったく液状化を起こしたかは不明である。
しかしながら、砂と地下水が地表に噴出しない形での地中の中で液状化を起こしたままの状態で
液状化層があることが今回の調査で判明した。

今回の地震が起きて既にに3ヶ月も経過しているにも関わらず、液体状の土砂が地盤中に存在していた。
一般的には、砂と地下水が分離した状態であれば、周囲の地盤の排水性がよければ、時間の経過に伴い地下水は排水され多少締まってくると思われていたのだが、未だに液状化状態で存在している。このような液体状の地盤が地盤中に存在する状態で再度、大規模地震が起きた場合、
構造物は今回の地震の揺れよりかなり大きくなることが予想される。

更に、周囲の地盤の排水性が悪いとなれば地震時に過剰間隙水圧が発生し大規模液状化を起こす事を示唆しているのである。

砂地盤上にある構造物で今回の地震で全く砂が噴出しなかった場所でも部分的液状化を起こしている地域があるのではないかと心配だ。
部分的液状化を確認する方法としては、スウェーデン式サンウンディングをお勧めしたい。
調査震度は5~6mで十分だ。
この方法はボーリング調査より安く簡便に実施することができる。大変ゆるい状態を確認できれば、それは部分的液状化を起こした可能性が十分ある。このような場合、今後の余震対策として部分的液状化を起こしたところにセメントミルク等を注入して地盤を硬くすることをお勧めする。


既設構造物における液状化対策工法

2011-05-28 11:55:55 | 日記

今回の東大震災において久喜市や浦安市の戸建て住宅の液状化被害および対策工について
検討した。
そして、時間経過と共に各企業の工場やプラントに於いても液状化による被害が段々とあきらかになりつつある。

私もつい最近、某プラント工場が敷地全体が全面液状化を起こし最大40cmの沈下。構造物が
傾斜した現場を見て来た。顧客の要望は、今後の大規模な余震が来て再液状化を起こし、これ以上沈下や傾斜を起こした場合プラントが全く機能しなくなるという事であった。

その為、液状化対策工法の提案をしてほしいとの事で既設構造物の液状化対策を検討する上で以下の点が問題になった。

●想定地震規模をどう設定するか?

 これは、前にも述べたが、液状化を起こすとは、地盤の持つ液状化抵抗力と地震によって地盤に発生する力のバランスによって決まるのである。つまり、地震によって地盤に発生する力が液状化抵抗力より大きくなれば液状化が起こるのである。すなわち、地震規模の大小によって、液状化する層の厚さが全く異なる訳です。

●既設構造物の対策工において、現場の作業条件の制約をうける。

 新設構造物において、液状化対策工を行う場合は、騒音・振動等の問題を除けばそれほど制約を受けることはない。しかしながら、既設構造物となると構造物の上に配管があったりまた隣に構造物があり大変狭い訳でありつまりは対策工を行うマシーンの小型化が求められる。

●許容沈下量・許容変位量をどう設定するか?

この許容変位量は液状化対象層を全て改良すれば沈下は全く起こらない訳だがそれだけ施工費も高くなる。それでは、コンサル人としては全く能がない。
多少の液状化層を無処理にして液状化が起こって沈下が起こっても構造物の機能が損なわれないように液状化対象層の絞り込みを行い施工費を安くする事が求められる。

この許容変位量とは液状化対策工を施工する事は地盤中に砂やモルタル等の材料を強制圧入する訳である。その結果、地盤が水平方向・鉛直方向にと変位が発生するのである。
周辺構造物に及ぼす影響は大変大きい。つまりは対策工法選定に求められるのは極力変位が少ない工法を選択する事が求められる。
以上検討中であり、まとまった段階で既設構造物の対策工法の提案を報告致します。

 

 


再液状化について考える。

2011-04-20 23:14:34 | 日記

最近、再液状化について議論する事が多くなった。それだけ関東地区が各地で液状化による被害が
甚大であった事を物語っている。
中にはまだ液状化を起こした所は地盤が沈下して締まったので今度は同じような地震が来ても液状化は起こらないと思っている人が多い事に驚いている。
以前、私は液状化を起こした所は再液状化する可能性があると説明した。
その根拠について書いてみようと思う。1964年に発生したM7.5の新潟地震が発生し液状化がいたるところで、発生し、県営アパートが傾き新潟空港が1.2mも沈下して国内はもちろんのこと、世界中に液状化現象というものが知れ渡った。

そして2004年にM6.8の新潟中越地震が発生し、新潟地震の時に液状化が発生した所が
また液状化しました。また1990年代に東京都において関東大震災級地震が来た時にどこが、液状化を起こすのかの調査を行った。その際、江戸・明治・大正の文献調査や高齢者にたいしての聞き取り調査
を行った結果かなりの場所で再液状化現象が確認されている。

そして地盤の強度についてですが、液状化を起こす前の、ボーリング結果(標準貫入試験N値)
と液状化を起こした後のボーリング結果を比較した研究例によると殆どN値は変わっていませんでした。つまりは液状化を起こしても地盤強度はまったく上がらないのです。
したがって液状化を起こした所はまた同じ規模の地震が来た場合液状化を起こす事を認識して頂きたいと思います。


地震時以外の一般的な住宅の沈下現象について その2

2011-04-09 10:58:49 | 日記

今回は前回に引き続き粘性土地盤上に住宅を建設した場合、沈下が起こるか否か
そして沈下が起こると判定された場合、どれくらいの量の沈下が起こり、いつ沈下が終了するかについて検討する為にどのような調査が必要かを考えてみたいと思います。

最近、戸建て住宅を建設する為に簡易的な調査である、スエーデン式サウンディングを実施するケースが多くなって来ている。この調査は、貫入棒の上に100kgの重りを載せて、貫入棒を回転させながら25cm貫入するのに何回転したかにより地盤の強度を測定しそして貫入棒が貫入していく際に振動が地上部に伝わる事により、粘性土か砂質土かを概略判別するのです。調査深度はおおよそ10m位までです。

この調査の大きな欠点は、地盤の試料採取ができないので詳細な土質区分はもちろんのこと、
地盤沈下を検討する為のデーターは全く得られません。

地盤沈下について詳細な検討を行う為には、ボーリングにより粘性土地盤の乱さない試料をサンプリングし、次にサンプリングした試料を土質試験室に運びそこで、圧密試験を実施します。
ここでは、圧密試験の詳細については省略します。圧密試験を実施して得られる結果は、前回、説明した様に応力ー間隙比の関係、圧縮量(沈下)-時間の関係、圧密降伏応力や透水係数等です。

圧密降伏応力を知ることで、未圧密粘性土、正規圧密粘性土、過圧密粘性土の判別がまずできます。
これらの粘性土地盤上に住宅を建設する場合、地盤沈下を検討するのは未圧密粘性土と正規圧密粘性土という事になります。そして、住宅を建設する事によって沈下量や沈下が終了するまでの時間については住宅の重量分が地盤中の応力が増える事になりますから、応力ー間隙比の関係から
沈下量が求められます。そして沈下が終了するまでの時間については圧縮量(沈下)-時間の関係から求められます。安全・安心な住宅を購入する場合、今まで、記述したボーリング調査や
圧密試験等を実施しているかについて確認する事が今後は必要と思われます。