東日本大震災により、関東地方では各地で液状が発生し、その結果、住宅が
低下、傾斜を起しこれらの対策をめぐり社会問題となっている。
特に、住宅被害が顕著だったのが千葉県浦安市である。
これらの住宅被害を受けて、浦安市は地盤工学会、土木学会、建築学会に
「浦安市液状化対策技術調査」を委託し、その委員会が昨年7月に発足した。
委員会は4回行われ、昨年12月18日に市民報告会という形で委員会報告が行われた。
この報告会での主な内容は下記の通りである。
○今回の地震で地盤改良(サンドコンパイションパイル工法、グラベルドレーン工法、
サンド・ドレーン工法)が行われた所では液状化による噴砂は確認されなかった。
○技術開発状況と住宅所有者の費用負担等の観点から、住宅と道路の一体的な
対策工法として実現可能性がある工法として「地下水位低下工法」を挙げている。
浦安市の今回の液状化被害を受けた地区は全て埋立地であり、地下水位が非常に
高いわけであり、この地下水位を下げて(地下水位より上の地層はどんな地震が来ても
液状化しない)の工法である。
確かに原理的には理想的な工法と言える。
しかしならが、私は下記の理由で「地下水位低下工法」は本当に合理的な工法で
あろうかと考えた時に疑問に思わざるを得ない。
国内での液状化対策工法として採用されているのが1件しかない。
この工法を採用さたのが、川崎市にある某石油メーカーでタンク郡のまわりに
止水壁を設置し、止水壁の内側にポンプを設置して地下水を汲み上げて
地下水位を低下させているのである。
この止水壁が完全に止水性能があるなら止水壁の内側の地下水位上昇の要因は
雨水しかないのにも関わらず、常時ポンプで地下水を汲み上げているのだ。
この事は、止水壁を完全に施行する事がいかに、難しいかという事にほかならない。
そして、常に地下水を汲み上げている為、石油メーカー周囲の工場等が少なからず
沈下、傾斜が発生しているのである。
このように、止水壁を完璧に構築する事がいかに困難かが理解出来ると思う。
委員会が提言するように、確かに初期費用は他の液状化工法よりは低減される
が、地下水位を常に低下した状態で半永久的に維持させるためには、常時ポンプで
地下水を汲み上げるための費用と周辺構造物に及ぼす沈下傾斜を考えた場合、
本当に適切な工法であるのかを今後さらなる検討が必要だ。
委員会の方々は液状化の専門家ではあるが、地下水の専門家はいない為
このような結論に達し、国交省もこの対策工法に前向きだというのは疑問だ。