スポイチ編集長日誌

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日付そのままで修正・追記したりします。

捏造コピペが奪う大切なもの

2011年12月07日 | 社会
先日の「水俣病についての新聞記事を装ったコピペの件」について、既に多くの方が言及されています。当該コピペについては、前回の記事で触れたとおり、捏造されたデマと見なして問題ないかと思います。
この手のデマコピペが厄介なのは、張られた直後にただちに「デマじゃないのか?」と指摘されているにもかかわらず、次々と別の場所にコピペされていき、ツイッターや個人ブログ等にもどんどん増殖していくという点です。
ただし、あまりにも「目立つ場所」に一旦出てしまうと、まとまった反論を受けやすくなります。
まとめサイト(2ちゃんコピペブログ)の注目された記事中に紹介されたことで、一層増殖もするが、批判や検証も増えました。
既に多くの方がこのコピペについて批判的に検証していますので紹介させていただきます。


「疑わしいコピペ」
おそらく最初期にまとまった形で当該記事コピペの疑わしい点を指摘した方。水俣病の歴史と、コピペ文中の新聞記事としてあり得ない「表記揺れ」についても検証されています。


「水俣病に関する熊本日日新聞のコピペ」について熊本県立図書館からいただいた回答」
2011年9月の時点で熊本県立図書館に問い合わせをされていた方からトラバをいただきました。図書館側の回答によると該当記事は無しとのこと。


「福島の野菜販売に対して起こった「水俣病でも同じことが行われた」という批判の件。」
「風評被害」という言葉の起こりについても検証していらっしゃいます。

それぞれ有用な資料をリンクされているので、今回の捏造コピペや水俣病について知りたい方は参照することをお勧めします。
特に、上記で紹介されている「新聞記事見出しによる水俣病関係年表1956-1971」は、すべてではありませんが、当時の実際の紙面をスキャンして掲載しているので、当時の新聞記事の雰囲気を知るには必見だと思います。


今回のコピペについては多くの人が捏造であると指摘していますので、これ以上私が付け加えることはありませんが、ネットで流布される、当初は真偽不明とされた不確定情報の内、のちにデマであると分かる情報に多く見られる特徴について少し書いておきます。

●実在のマスコミ記事を装う
今回のコピペもそうですが、最近のデマは正式なマスコミの記事を装って作られることが増えています。しかし記事を装いながらオリジナルへのリンクがない、日付がない、あるいはリンク先が個人や2ちゃん系のコピペブログしかないなどの場合は非常に怪しいと言えます。

●実在しない組織名、地名、人名
すぐにネタと分かるように、またはおおごとになりそうなときに言い訳をするためなのか、明らかに架空と分かる団体名・組織名が入っていることが多い。
ただし、伝播の過程で「ネタと分かる箇所」(今回のコピペで言えば「昭和20年」とか「(現チッソ)」の部分)は勝手に削除されたりするので油断は禁物。

●管轄外の組織が登場
その問題について管轄しているはずのない組織のコメントなどが引用されていたりするので作り話・デマと分かるケース。警察・検察・弁護士・裁判官の職掌がごちゃごちゃになっていたりするのが典型でしょうか。

●時代背景・記事の文体
マスコミの日本語、とくに新聞記事の場合には細かな約束事が多く、一般人が真似しようとしても必ずどこかにアラが出ます。また、時代によっても使われる言葉や記事の「シメ方」、新聞社のスタンスなども全然違ってきますので、やはり違和感が残ることが多いです。今回のコピペで言うなら、「1960年」という時点で、チッソが、地元漁民が、地元新聞社があんな行動をしてあんなコメントをしてあんな記事を書くわけがないので当初から怪しさ99%ということです。しかし、残りの1%の「もしかしたら…」という心理につけこむのがデマの本質なのかも知れません。

●表記揺れ
上記と関連しますが、新聞記者としての訓練を受けていない人が新聞記事っぽい文章を書いたとしても、たいていは表記揺れだらけになって、即怪しまれます。もしかしたらデマ記事の作成者は検索に引っかかりやすくするためにわざと「表記揺らし」をしているのかも知れませんが。
「文体での見分けるポイント」は他にもまだまだありますが、「捏造をする側」がさらに悪質になるかもしれないので、とりあえずこの辺にしておきます。

●70字以内
今やデマはツイッターに乗せれば拡散の速度が増す、ということをこの手の「釣りコピペ」を作る側は意識するので、引用されやすいように文章の長さは(ツイッターの文字数制限である)70文字以下を目安に作られることが多いようです。


■デマは時間泥棒でもある
さて、デマの最大の問題は、多くの人が本来考えるべきことに使うための時間や労力が、「デマかどうかの検証作業」に奪い取られるという点です。
このコピペの作者は、他の書き込みを見る限りでは、「被災地の野菜」の出荷に反対の立場だったようです。
では仮に、彼らの望み通りに東日本の一大食料生産地の一つである福島での食料生産や出荷が禁止または自粛させられたとしたら、福島の生産者の生活はどうなるでしょうか?ちょっと考えてみたらどうでしょうか。
仮に補償などで生活費の問題はクリアできたとしても、生産・出荷を停止した場合の食料生産不足分の穴を埋めるのはどこ(の国)か…?その時食料価格はどうなるのか?日本だけの問題ではなくなります。
または「福島で全面出荷禁止になるくらいなら、その隣県は本当に大丈夫なのか?」と考えて過激な行動や主張をする人が出てくるのではないか…?等々、単純に「安全か危険か」ということ以外にも、もっといろいろなことを考えてみる必要があります。
デマの蔓延は人々から思考の時間とリソースを奪い、疲労による思考停止状態や「あきらめ」の感情による自暴自棄へと人々を誘導する危険をはらむものです。

デマを作る側にとっては、単なる暇つぶしの愉快犯、「○○という××をでっち上げて新参釣ろうず( ^ω^)」とか「タクラーン村の少女」みたいなノリなのかも知れませんが、デマも様々な人間の手でコピペされ続けるうちに、中には本気で信じ込む者や、自らの政治的な主張に対する補完材料として利用しようとする者も現れます。こうなると、デマは最初に作った者の思惑などと関わりなく、ネットの海に生命を得ます。もともと2ちゃんのネタだった「タクラーン村の少女」が、いつの間にかUMA扱いになり、今やその動画と称する物まで出回っているように。

デマの温床やカタパルトになることが多い「まとめサイト」(2ちゃんコピペサイト)も、当初は「スレッドなんか全部読む時間のない人」向けにそれなりに有用な点もあったのですが、今や過当競争によるPV至上主義(無論アフィリエイトも絡む)によって、PVさえ稼げればセンセーショナルであるほどよい、というスタンスの編集(スレ内のレスを取捨選択している以上、その「編集方針」は必ず問われる)をしているようなケースが明らかに増えてきました。「まとめサイト」(コピペサイト)は、遠くない将来に重大な岐路に立たされると思います。



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