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街の椅子

朝 ベコニアの花があった
きみの彩りはおぼえていない
遠くに行ったのは きみの方で
ぼくの愚かさは まだ
休日の朝にしずんでいる
ずっと これからも
たぶん おそらく きっと
朝の窓辺が斜めになる
雨は視えない
しずみかたの変化に
前兆を読み取ろうとしている
まだ ここにいる
天井の中心から空が落ちて
罪人の部屋はあった
朝めざめて 影がくる
朝めざめて 左側がたちあがる
遠くには行けない
ちょっと街のどこかぐらいだ
おもいの戦争と戦争があり
流れる顔と顔があり
街の椅子の忘却からめざめる
また往かなければならない
この街にも 朝がのこる きみがのこる
幸福と不幸の根をめぐり
イエスはひとりの言葉になる
ぐるぐる疲労の空がまわっても
街の椅子にひそんでいよう
街の椅子で黙っていよう

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ひとりの音

失われたひとが
何十年も棲み続ける
にんげんのからだ
臨終にもいるのかもしれない
きみは何も知らないのに
失われたままで
視えるかもしれない
声をあげてしまうかもしれない
また夏がくる
音楽 テレビ ひこうき
いま体感している腕の温度
霧島の水
どうしようか
と なんどもくりかえしてきた
物語がはじまれば
まだすくわれるかもしれない
(すくわれる だなんて)
きみの脳内 きみの内臓 きみの現在
しきりににんげんを感じようとしている
しきりにこころを感じようとしている
ぼくのからだの外に こころの外に
ふくらむ情報社会はうるさい
半世紀前のくらやみ
半世紀後のからっぽ
とおくちかく音が聴こえる
にんげんが暮らしている音だ
きみの内臓の音を聴く
失われたひとりの音を聴いている

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時間の筋

ひとつの時間の筋が違う
時間の筋というのは変だけれど
じぶんの時間の筋がなにか違うのだ
かつては在って いま無いものなのか
そして結局は(午後5時ぐらいだ)
なにもしたくない椅子がとまる
45度ほど ぐるっと するくらいかな
まいったなあ と 吐きそうになり
まだまだなんとか と 時間の筋をさぐる
天井はある 窓はある(狭い視野だ)
外の世間もちゃんとあるようだ
ちゃんと呼吸をしているし
きみの記憶も ちゃんとある
お腹もすいてきた
ちゃんと排出もした
切らした日用品も買いに行ったし
阪神が勝ったことは嬉しかった
それでもひとつの時間の筋が
なんだか居心地が悪いのだ
ほんとうは
言いたいことなど
なにもないんじゃないか
じぶんの居心地がどうのこうの
ばかりで。
ちゃんとお風呂につかったし
きょうのビールも飲んだ
そして きみは
無いもののなかに ちゃんと在った

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家路の嵐

きゅうに嵐になって
ためらいもなく路をかえた
灰色の谷間の夜はなんども光った
過去の壁にとどろく自然界の音域があり
(きみの顔も瞳も声も全身も
 何度も現れては消えた)
エレベーターがとまる予感がした
ほんとうにとまった
まっくらになって
鏡に映ったものは十五歳の顔
ほんとうは十五歳からの独りの思い
おびえているような やさしいような
うつむいて スマートフォンを手にして
歳をとってしまった顔の一隅が映っている
まるでまだ幼子のような
現在の愛しさがあった
外は嵐 過去の嵐
鏡の中の十五歳の独りは
じぶんと共に 家へと帰るのだ

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六月の砦

六月をかこむ砦があった
花鉢の中の土くれ
おぼえていない細部に消えたもの
それは見捨てたものだろうか
畦道から追いかけてくるものがいた
六月の柱の陰から
いまも視ているものがいるかもしれない
誰モ視テハイナイサ(すこしだけ怖いんだ)
眼をふさいだ荒涼としたこちら側だ
発車する舞台で向かいあう
海辺を流れる風景は消えていく
きみの瞳は六月の砦の内奥にしずんで
ぼくは現在の終りの砦を考えている
たったいま砦の外から雨音が聴こえてきた

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根拠の愛

阪神は楽勝だった
チャンネルを替えると
ある会見がテレビに流れて
「必要がない理由はなんですか?」
「必要がないが理由だ」
同じような詩を書いた記憶がある
レトリックはどうにでもなる
バカだった 愚かだった
根拠の愛が欠け落ちている
根拠の愛を鍛えるために(鍛エル?)
政治の話をさせてくれ
〈私〉ノ主語ガ欠ケ落チテイル
〈私〉ハ必要ガナイ ト
卑怯者ノ〈私〉ガイタ

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なんて

きょう一日のなかで
思ったことなんて
と 思ってしまうことなんて
(右腕を掻いて
 首をすこし右へまわして
 ただ書棚を見上げて)
時間と思いとは 存在の淵につく
あやしい霊のようなものだ
時がたっていく音はわからない
袖机の氷を準備した(夏がくるから)
あいかわらず椅子がしっくりしない
人間と鳥と建物ばかり視ている
たまあに猫 たまあに犬
だれがくる だれとしゃべる
(いま つながれるものとは?)
冷蔵庫が好きだ TVが好きだ
(一日に深夜があるから)
天地創造から きみが好きだった
なんて 書くわけはないけれど
なんて ナンテ なんて
書くわけがないことを
きょう一日のなかで
そっと思ってみた

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そっと往け

右腕が痛む
バスタブの底にもこたえはない
一日は難しい
二日目も難しい
夜になると映画のシーンが流れ
ベランダで寝そべる犬が愛しくなる
一日を 二日目を 三日目を
そっと往けばいい
そのまま往けばいい
なにもくれない なにも話さない
沈黙に言葉があればいい
決定的に失ったものを考える
予め与えられているものを思う
六月の曇りはやさしい

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時の人間

なんねんも過ぎ去って
結局は
ひとりぼっちになっていた
と 神さまとそんな話をした
もちろん沈黙している神さまだ
隣人とバカをしてしまった事件のあと
あなたとは一度も話せていなかったのに
あなたと話したかったことは
すでに話していたのかもしれない
こたえを聴いていないけれど
すでにわかっているのかもしれない
わたしが思いめぐり
表出している声は
だれにも聴こえないから
わたしになれるのかもしれない
街の通路の先の先が視える
時の人間たちが歩いて
無言の声が表出している
あなたの無言の声が
まだ息をしている

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時の街

灰色と黒の街にしか視えない
いまもむかしも
緑の季節になっても
きみへのいとしさは変わらないのに
時代の透明な層は重なって
としをとっている
本屋のあかりに俯き
食堂のテレビを見上げて
時の街に出ると
しきりに灰色と黒を視ようとする
確かに人間はいるのだ
愛を街角にかくして
ただ未来への動物になる
いま 誰が 消えてしまったのだろう

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顔のおもて

ひとの不思議な顔がまわる
ぼくもひとの顔なのに
ひとの顔のぼくが 建物内をまわる
ひとに思いがあるというには
ひとに心と欲望があるというには
なんとなくあやしくなってくる
ひとの顔のおもてがある
窓から鉄筋があらわれてきた
天井から無能なる音が聴こえてきた
画像の権力者が嘘をついている
実像のぼくも嘘をついている
つい嘘を喋ってしまうから
なにも喋らないようにしていよう
とまた ひとのさみしさは嘘をつく

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朝方

朝方はなんども
異なる夢へと変わっていく
いまもすこし
夜になってもすこし
神社横の路地から低い家に入ると
かれはとても嬉しそうになった
暗がりで宙返りをしてみせる
鍋の中の即席ラーメンは冷めて
それでもかれは美味そうに食べた
「山へ行くのか」と かれは訊いてきた
「いや 山へは行かない
 未来の断片へと行く
 ぼくの見知らぬところだ」
かれはあきらかに困った顔をみせた
かれにしても
なんども異なる夢をみたのだろう
朝方の光が傍で
若葉の窓下の影で
かれは微笑んでくれた
なんだか妙にやさしくみえた朝方はなんども

異なる夢に変わっていく
いまもすこし 夜になってもすこし
神社横の路地から低い家に入ると
かれはとても嬉しそうになった
暗がりで宙返りをしてみせる
鍋の中の即席ラーメンは冷めて
それでもかれは美味そうに食べた
山へ行くのか と かれは訊いてきた
いや 山へは行かない
未来の断片へと行く 見知らぬところだ
かれはあきらかに 困った顔をした
かれにしても なんども夢をみたのだろう
朝方の光が傍で なんだか妙にやさしかった

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めくる

思いをこめて
つぎのページを
めくる
今この空気を(時間を)
めくる
イエスの弟子たちが
ガリラヤ湖に網をはなって
舟が沈みそうになるぐらいに
たくさんの心の言葉がとれればいい
復活されたひとは
なにも怖れるな とささやいた
すーと心の底に落下していく
落ちればいい 心は 無知は
少年は都の路地を曲がって
硬貨のありかをみつける
(まだ出会いもしていないのだ)
裏側の木材のにおいがただよって
模型時代のエレキとドラムの音が体に響き
花柄のロングスカートと口紅の色彩が
なにか思いの中心に入ってきた
過去のふしぎな場面をめくる
きみの平野の心をめくる
父の山道のキツネをめくる
無力なままに落ちていく物語は
心のゆくえを辿って(遡って)めぐる
きみは異国の夜の路をゆっくりと
チッチッチッと鳴らして歩いてきた
なにも怖れることはなく

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はじまり

はじまりの孤独がある
はじまりの神さまがいる
はじまりの愛があり
はじまりは遠くて
はじまりは近い
まっすぐに続いている部屋がある
きみも 霊と入ったことがある
空と眠ったことがある
部屋のあたりで誰か
ほんとうに思ったことがわからない
失われた時の嘘がわからない
ながく煙草を吸っていた
なのに煙草を吸わなくなっている
いつからか日記の万年筆がない
うすっぺらな孤独のひらがあるのに
まだはじまりに そっとひそんでいる
かなり不足したままの もの思う言葉の
時のはじまりがある

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悔い改め

きみが消え去った
汚れている秘密がある
消え去ることができない
汚れていく重力がある
聖域を守れない(解読できない)
好き嫌いの秘密の心がある
(ん? あのひとたちは ナンダ?)
あらゆる交わりの聖域を考えるには
詩の深さが足りない
マグダラのマリアの詩が足りない
いや 日常は 暮らしの底に流れる
ひそやかな衝動は あきらめは
(ナニヲ考えようとしている)
直接の場面 仮想の場面
いまあるもの 記憶にあるもの
(ナニヲ考エタインダ)
鳥を記憶した
鳥を調べて言葉にした
きみは消え去った
記憶はあるのに(言葉はあるのに)
詩も夢も汚れもあるのに
ボクハ消エ去ルコトガデキナイ
無知はさみしい(イエスさまの背中は)
詩にならない時間がつらい
なんど心の柵を洗っただろうか
幸運と不運の間をじっと視ている
まだまだ進んでいく時間の中で
あしたの悔い改めを詩にして

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