Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

新春別府で家族旅【1】マイクロバスで訪ねる名棚田

2016年01月02日 | ■旅と鉄道
 年末年始の長期休暇は、旅鉄派にとって貴重な長旅の機会。国内に海外に、毎年のように遠出してきました。しかし今年は、結婚して初めて迎えるお正月。好き勝手に旅立てる身分ではなくなりました。
 大人しく、ほうぼうに挨拶回りかなと思っていたところ、12月なかばに両親から、ヨメさんも一緒に別府へ行こうとのお誘いが。それは好都合とばかり、その日のうちに列車と宿の予約を済ませてしまいました。


 明けて2016年の1月2日。南福岡駅から快速電車に乗って、鳥栖へと下りました。両親は佐賀在住なので、別府へは久大本線経由が便利。久大本線経由の「2枚きっぷ」は鳥栖~別府間の設定のため、鳥栖までは定期券で下ってきました。
 メインの玄関口を新鳥栖駅に譲っても、鳥栖駅のターミナル駅としての風格は変わりません。駅弁も名物かしわ飯や焼売などなど、お正月というのに豊富に取り揃えていて、ありがたいです。


 この日は日豊本線でのダイヤの乱れを受けて、鹿児島本線にも遅れが発生。数分遅れで、ダークグリーンの元祖観光特急「ゆふいんの森」が入線してきました、
 最近ではインバウンドの波に乗り、乗客の過半が外国人であることも珍しくないゆふ森。しかし今日の顔ぶれは、ほとんどが日本人です。繁忙期とあって早くから満席になっており、入国後しか指定券を入手できない外国人には予約が難しいのだと思います。


 2区画しかないボックスシートの予約はかないませんでしたが、窓枠が入らない位置での前後席を確保できました。この位置の座席は向かい合わせにした時だけ、大きな折りたたみテーブルを使えます。滅多に使われないのか、汚れていたのは遺憾でしたが…
 両親は久留米から乗車。さっそくテーブルにおせちを広げていると、客室乗務員さんがシャッターのサービスにあたってくれました。お屠蘇代わりの日本酒も交わし、実家の居間にでもいるような気分です。


 いつもなら久留米を出ても行列が絶えないビュッフェは、外国人が少ないせいか余裕がありました。逆に外国人観光客にとって、「ゆふ森のビュッフェ」は欠かせない、知られた存在であるとも言えそうです。
 車内の供食サービスといえば割高なイメージを持っている人も多いかもしれませんが、コーヒーは300円台前半と常識の範囲内。大手メーカーの生ビールはプラカップ1杯で410円とお安めで、嬉しくてついつい手が伸びてしまいます。


 大きなガラス面からの展望が広がるサロンコーナーは、ずっと誰かが座っている状態。由布院でどっと観光客が降りて、やっと余裕ができました。
 隣のビュッフェは、由布院からの乗客で再びピークを迎えます。由布院~別府の乗車では、短すぎてもったいない感じもしますが、外国人ならレールパスのおかげで金銭的な負担はありません。ちょうどお昼過ぎでもあり、移動中のランチを狙っている乗客も多いようです。


 展望サロンには、お正月らしく絵馬の準備が。どれだけのご利益があるかは分からないけど、家内安全と、実家の商売繁盛を祈っておきました。


 高架の大分駅を駆け下ると、車窓右手には青い別府湾が広がります。特急「ソニック」の狭い窓より、「ゆふ森」や普通電車の広い窓から楽しみたい車窓です。
 うみたまごと高崎山の駐車場は、お正月とあって満杯状態。そういえば、今年は申年でした。


 3時間弱の「飲み鉄」を終え、終点別府で下車。予約しておいた駅前のホテルに荷物を預けて、1時間ばかりのぶらぶら散歩に出かけました。
 駅南側の高架下に連なる、別府駅市場へ。以前は高架下のダイエーを介して駅に直結していたのですが、ダイエーの廃業で離れてしまいました。空き店舗がちらほら見えるようになったのは残念だけど、正月から開けている元気な店もあります。生鮮品の安さも健在です。


 別府カトリック教会。戦争直後、資材も資金も不足していた中、市民の浄財で建設された立派な教会です。


 その真向かいにある古びた建物は、清島アパート。別府ならどこにでもあった風呂なしのアパートは、両親にとっては懐かしい雰囲気のようです。僕の生まれたアパートも風呂なしで、共用の浴場に通った記憶がおぼろげにあります。
 しかし行灯がきれいだなと思ってよく見てみたら、クリエイターたちのワークスペースとして活用されている旨の案内看板が。へぇ~と思っていたら、自転車で通りがかった近所のおじちゃんに招き入れられました。


 清島アパートは、別府で3年に一度開かれているアートイベント「混浴温泉世界」を期に、当初は期間限定でオープンしたアートスペースです。
 共用部分は神田川の世界。隣の棟との間隔は極端に狭くなっていますが、ギラギラした直射日光が差さないことは、思索にふけるには向いているのかも。


 1階はギャラリーなど創作の場、2階はクリエイターたちの住居になっているとのこと。さすがに2階をのぞくわけにはいきませんが、1階には見学自由のアトリエもあります。
 畳をはがし、壁を白く塗れば、天井はそのままでもどこか「モダン」な展示空間になるのだから、不思議なものです。


 部屋の隅の扉を開けると、昔のままの台所が現れるのも面白いところ。ガスコンロより、電熱器が似合いそうです。換気扇もないので、できる料理もだいぶ限られてたんじゃないかな。
 別府でこんなアパートに住んでいた両親の青春時代って、どんな暮らしをしていたんだろうと思います。聞いたら延々としゃべりそうなので、思っておくだけですが(笑)。


 共用の展示スペースは畳敷きのままで、あまり手が入っていません。入居者の活動内容はそれぞれ個性的で、興味深いです。
 この春には2名のクリエイターさんが羽ばたいていくそうですが、そのうちまた誰か入ってくるだろうとのこと。このアパートに可能性を見出すクリエイターと、個性的な移住者を迎え入れる別府の人々。双方あってこそ、混沌とした別府の魅力が作られている、最前線の現場でした。


 街中に出た本当の目的は、紙屋温泉の足湯に浸かるのことだったのですが、話に花が咲いてしまい、いつしか予定の時間に。流川通りに戻って、亀の井バスのマイクロ路線バス・内成線に乗り込みました。
 内成線は平日1日4往復、土休日に至ってはわずか2往復で、午後3時前のこの便がなんと始発(笑)。日本の棚田百選にも選ばれた、内成棚田を目指す40分のショートトリップです。


 一人だけいた乗客はわずか数分、まだ街中といえる光町で下車。山間ならともかく、歩いてもさほどではない距離なのに、1日2往復のバスを使いこなすとは!
 我々4人の貸し切りになったバスは、朝見神社の駐車場待ちの渋滞にはまってしまいました。関係のない車なら迂回するのでしょうけど、「路線」バスではそうもいきません。10分ほどのロスになりました。




 神社を抜けると、街がぐんぐん眼下へと遠ざかっていきます。しかも道は、普通車同士でやっと離合ができる程度の幅員しかありません。運転士さんは器用なハンドルさばきで、事も無げに走っていきます。
 環境はちょっと違うけど、釜山のマチュピチュの異名を持つ、甘川文化村行きのマウルバスを思い出しました。路線バスで40分というと長く感じてしまうけど、この過程こそ楽しみたい路線です。


 公民館前バス停から、棚田を見下ろす展望台が見えますが、あせっちゃいけない。もう少しだけ乗って、棚田見学におすすめのバス停として推薦されている、太郎丸バス停で下車しました。
 市内からの片道運賃は500円を超えますが、1日乗車券「Myべっぷフリー」900円のエリア内なので、先に買っておくとお得です。時間があれば、明礬、柴石、亀川温泉から、鶴見山ロープウェイの麓までも巡れます。


 折り返しバスの時間まで50分。おすすめ散策コースの一つである、隣の梶原バス停まで歩いてみました、あぜ道にはピンクのリボンが揺れていますが、コースを示すものではないので要注意。追っていたら道がなくなり、往生しました。
 棚田はところどころでブロックに作り変えられているものの、大半は石積みのまま。ほとんど平地のない集落で、必死に米作りに向き合った先人の努力を今に伝えます。




 棚田の数、なんと1,000枚。見渡す限り広がる、猫の額ほどの田の重なりに、ただただ圧倒です。






 頑丈な石垣を作る職人のなせる業なのでしょうか、精巧なつくりのお地蔵様や石灯篭が、あちこちに点在しています。供えられているのは造花ではない生花で、内成の方々の心が見えてくるようでした。




 眺めのいい場所には、ベンチが置かれています。今年の正月は暖かいほどで、ベンチに座ってぼおっと景色を眺めるにもいい天気でした。


 あまりの暖かさに、菜の花まで。


 梶原バス停から少し太郎丸側へ歩いて、水無の滝へ。水あるやんけ!と関西弁で突っ込むことなかれ。農繁期には田んぼに水を取られ、流れが止まってしまうのだとか。その時期に見たいような、見ても意味がないような…
 内成線の山間部はフリー乗降区間なので、ここで帰りのバスを待つのもよいかも。
 

 とはいえフリー乗降のバスには慣れていないので、2往復のバスを逃さないか何となく不安。梶原バス停まで戻って、帰りのバスを捕まえました。バスはもちろん、運転士さんも同じです。


 街に戻って、母が予約していたお気に入りの居酒屋さんへ。6時の開店前に入れてもらえたのは、ありがたかったです。正月にも関わらず、新鮮な豊後水道の海の幸を楽しめました。
 2次会は親子カラオケになだれ込み、しこたま飲んだ僕は千鳥足。ホテルのベッドにバッタリと倒れこみ、初夢の記憶は皆無でした。

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