読書離れが指摘されて久しい。作新中等部では、朝読書の時間としてHR前の
10分間を使って自分の好きな本を持参して読んでいる。朝少しの集中で脳は活性化
する。
一般的に、読書習慣は高校・大学と進むにつれ萎む傾向があると言われている。
しかし、私自身を振り返ってみると、この一般論に逆行して、大学に進学してから
読書が本格化したように思う。私が進学先として文学部を選択したからではないが、
様々な書物のジャンルの中で、文学書が端正で深みのある日本語の基礎を形づくった
という点で、近代文学は身につけなければならない教育資産であると考えている。
文学は、人間形成にも社会というものを知るためにも、必須の教養源と近代日本国家
が意識したからこそ、大学に文学部が設置されたのではないかと思う。
私の高校時代で印象的な国語の授業の一つに、授業最初に担当教員が自分自身で
読んで感動した明治・大正・昭和の作家名とその作品を紹介し、内容の感想を語る
というものがあった。教科書の内容から離れて、自分の感性で触れて良かった本の
魅力を教師が熱心に語ったため、私自身、書店や図書館に行った時、紹介された本
のタイトルを見つけると親しみを感じ、一応手に取ったのを覚えている。そのうち、
本にあまり興味がなかった私が、書店に入り文庫本の棚に吸い寄せられていくはめに
なったのである。私に「本を手に取るきっかけ」を作ってくれたあの国語の授業は、
優れていたのだと思っている。
読書習慣の養成に、教師個人の人格的影響が大きいことはいうまでもない事実である。
中等部の生徒が、高校生になっても「本を手に取る生徒」でいてもらえるように、
中学生時代の知的好奇心が旺盛な時期に、私たち教師が授業にひと工夫加える努力を
続けていくことが大切だと、つくづく感じている。
【朝読書の風景】
【1階アクティブホールにある、教員から生徒に紹介したい本の木】