新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
ところで、私としては珍しく扶桑社新書を新年に読むことになりました。
いつも行く往来堂書店で、ちょっと目立つオレンジ色の表紙が目につきました。
生活保護が危ない ~「最後のセーフティネット」はいま~
産経新聞大阪社会部 扶桑社新書
生活保護制度は、社会の縮図です。この本を読んで、生活保護制度については一般的な知識があっても、私が知っていることは、そのほんの一部分であることが良くわかりました。
マスコミでは、昨年大みそかに東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」は1月5日、同公園から撤収し、都等が用意した都内4施設に移ったことが報じられていますが、全国各地で多くの人々が失業や生活の困窮、病気や老いに直面しています。
この本では、例えば生活保護の「貧困の連鎖」についてその実態について問題提起をしています。
「誰でも努力さえすれば平等にむくわれることを前提にした『努力主義』は幻影です」と平成18年、ある自治体の生活保護受給者を無作為抽出し追跡調査を行った堺市健康福祉局の道中隆理事はそう言い切る。大阪府庁出身の道中理事は、厚生労働省の生活保護指導監督職員なども歴任し、『生活保護制度の基礎知識』などの著書でも知られる専門家だ。
生活保護の具体的な事例に基づいた追跡調査は、受給者にとって他人には知られたくない個人情報を数多く扱うことから、これまでほとんど行われてこなかった。
それでも道中理事が調査を行ったのは、貧困の固定化に強い危機感があったからだ。調査は生活保護受給がかなりの割合で世代をまたいで継承されている実態を裏付けた。
調査の対象になった390世帯のうち、過去に育った家庭が受給世帯だったことが判明したのは98世帯(25・1%)。母子世帯の106世帯では実に40・6%に上っていた。記録上は明確に残っていないものの、育成歴などから受給世帯に育った可能性が高い例は多数あり、実際の継承率はさらに高いとみられる。
道中理事も驚いたのが、学歴についての調査結果だった。生活保護受給者のうち、世帯主が中学卒は58・2%、高校中退が14・4%。双方をあわせると70%を超えた。特に母子世帯の高校中退率は27・4%。高校中退の理由として、妊娠、出産の例があったため、10代出産の実態を急遽(きゅうきょ)、追加して調べると、母子家庭106世帯のうち28世帯、26・4%が第1子を10代で出産していた。
ケースの一つ一つに、ドメスティックバイオレンス(DV)や家庭崩壊など自立を阻む現実が凝縮されていた。(中略)
それらを踏まえたうえで、道中氏は、「低学歴のまま、十分な技能も持てず、10代で母親になった女性の就労自立が難しいことは容易に想像がつきます。『就労自立ができなかったのは、個人の努力欠如』と個人の責任に帰着させるのではなく、社会問題として認識されるべきではないでしょうか」と問題提起する。
学歴や成育環境が人のすべてではないのはもちろんだ。高校や大学に行かなくても社会で活躍する人はいくらでもいる。しかし、現在の生活保護を考えるうえで、「貧困の連鎖」の要因の一つとして学歴も含めた育てられ方や育ち方を無視することはできないだろう。(引用終了)
他にも現場ならではの問題提起がたくさんあります。
これからの日本の社会保障を考える上で有意義な一冊ですから、ぜひお読みください。
さて、高齢者の現状と生活保護制度について考えてまます。
日本の高齢者人口の3割が月所得10万円未満、高齢者人口の3割が一人暮らし、一人暮らしの4人に3人が女性で、女性の所得は男性の3分の1です。
生活保護世帯では、単身世帯の割合が急激に増えていますがその要因は、高齢者世帯の増加で、単身者世帯に占める高齢者世帯の割合87.6%(04年)で、生活保護の全世帯の46.7%を高齢者世帯が占めています(04年)。EUのドイツ等の先進国と比較しても高齢者の割合がこのように高い国はほかに例がありません。
その主な理由は年金水準が保護基準を上回っているかどうかということになります。
憲法25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
第2項では「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とあります。
生活保護の問題と高齢者の現状は、憲法を如何に機能させるかが問題ですが、今、日本の生活保護制度を財源不足の観点から、「有期保護制度」へとの検討が行われています。誰のための社会保障制度なのかが問われています。
本年もどうぞよろしくお願いします。
ところで、私としては珍しく扶桑社新書を新年に読むことになりました。
いつも行く往来堂書店で、ちょっと目立つオレンジ色の表紙が目につきました。
生活保護が危ない ~「最後のセーフティネット」はいま~
産経新聞大阪社会部 扶桑社新書
生活保護制度は、社会の縮図です。この本を読んで、生活保護制度については一般的な知識があっても、私が知っていることは、そのほんの一部分であることが良くわかりました。
マスコミでは、昨年大みそかに東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」は1月5日、同公園から撤収し、都等が用意した都内4施設に移ったことが報じられていますが、全国各地で多くの人々が失業や生活の困窮、病気や老いに直面しています。
この本では、例えば生活保護の「貧困の連鎖」についてその実態について問題提起をしています。
「誰でも努力さえすれば平等にむくわれることを前提にした『努力主義』は幻影です」と平成18年、ある自治体の生活保護受給者を無作為抽出し追跡調査を行った堺市健康福祉局の道中隆理事はそう言い切る。大阪府庁出身の道中理事は、厚生労働省の生活保護指導監督職員なども歴任し、『生活保護制度の基礎知識』などの著書でも知られる専門家だ。
生活保護の具体的な事例に基づいた追跡調査は、受給者にとって他人には知られたくない個人情報を数多く扱うことから、これまでほとんど行われてこなかった。
それでも道中理事が調査を行ったのは、貧困の固定化に強い危機感があったからだ。調査は生活保護受給がかなりの割合で世代をまたいで継承されている実態を裏付けた。
調査の対象になった390世帯のうち、過去に育った家庭が受給世帯だったことが判明したのは98世帯(25・1%)。母子世帯の106世帯では実に40・6%に上っていた。記録上は明確に残っていないものの、育成歴などから受給世帯に育った可能性が高い例は多数あり、実際の継承率はさらに高いとみられる。
道中理事も驚いたのが、学歴についての調査結果だった。生活保護受給者のうち、世帯主が中学卒は58・2%、高校中退が14・4%。双方をあわせると70%を超えた。特に母子世帯の高校中退率は27・4%。高校中退の理由として、妊娠、出産の例があったため、10代出産の実態を急遽(きゅうきょ)、追加して調べると、母子家庭106世帯のうち28世帯、26・4%が第1子を10代で出産していた。
ケースの一つ一つに、ドメスティックバイオレンス(DV)や家庭崩壊など自立を阻む現実が凝縮されていた。(中略)
それらを踏まえたうえで、道中氏は、「低学歴のまま、十分な技能も持てず、10代で母親になった女性の就労自立が難しいことは容易に想像がつきます。『就労自立ができなかったのは、個人の努力欠如』と個人の責任に帰着させるのではなく、社会問題として認識されるべきではないでしょうか」と問題提起する。
学歴や成育環境が人のすべてではないのはもちろんだ。高校や大学に行かなくても社会で活躍する人はいくらでもいる。しかし、現在の生活保護を考えるうえで、「貧困の連鎖」の要因の一つとして学歴も含めた育てられ方や育ち方を無視することはできないだろう。(引用終了)
他にも現場ならではの問題提起がたくさんあります。
これからの日本の社会保障を考える上で有意義な一冊ですから、ぜひお読みください。
さて、高齢者の現状と生活保護制度について考えてまます。
日本の高齢者人口の3割が月所得10万円未満、高齢者人口の3割が一人暮らし、一人暮らしの4人に3人が女性で、女性の所得は男性の3分の1です。
生活保護世帯では、単身世帯の割合が急激に増えていますがその要因は、高齢者世帯の増加で、単身者世帯に占める高齢者世帯の割合87.6%(04年)で、生活保護の全世帯の46.7%を高齢者世帯が占めています(04年)。EUのドイツ等の先進国と比較しても高齢者の割合がこのように高い国はほかに例がありません。
その主な理由は年金水準が保護基準を上回っているかどうかということになります。
憲法25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
第2項では「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とあります。
生活保護の問題と高齢者の現状は、憲法を如何に機能させるかが問題ですが、今、日本の生活保護制度を財源不足の観点から、「有期保護制度」へとの検討が行われています。誰のための社会保障制度なのかが問われています。