hagetaka☆Chaos World

創造の原点、源はカオスにある!
私のなかの混沌として秩序のない世界を書き記しておこう!

有名の裏側

2005-04-03 14:41:02 | 混沌から創造へ
はじめに名前ありき。名が売れなければ、何も始まらないといった考えの知人がいました。およそ今から25年以上も前の話です。

ぼくはというと、欲も野心もなく、創作活動がこのまま続けられて、食ってさえいければいいという考えでした。活動を通じ、結果として認知され、名を得ることになるのだろうという今も変わらぬスタンスでいます。

その知人とは久しく往来も途絶え、年も経たある日突然、全国紙の「時の人」風のコラムに、写真入りで大きく報じられ、思わぬ再会に驚くこととなりました。なんでも個展でその新聞社の目に留まったかで、その後も、多くのマスメディアに取り上げられていました。有名になるという長年の夢がかなったわけです。

まさに破竹の勢いでデパートを中心に日本全国を飛び回っていました。それから数年経っただろうか、落ち着いたころを見計らって知人と会う機会を得ました。

ぼくの第一声「夢がかなってよかったね」に対し、意外にも「名が売れるなんて望んでいなかった」って豹変した回答に唖然としました。



でも...と、ここで本音を聞くことができました。

そりゃもう、名が売れるってたいへん。デパート関係者や応援してくれる人たちとの打ち合わせや折衝、移動に拘束される毎日、時間に追われ制作どころでなくなる。作品を気に入って購入してくれる常連さん、上得意さんもついた。いわゆるお金持ちばかり。

知人も昔から大きなお屋敷のお嬢さんで、地元では知らない人はいないくらい富豪の人らしい。でもそういったことを表に出さない、庶民的なところがあって、ぼくのようなものとも交流があったのだと思います。

そう、お客さんはお金持ちばかり、話を合わすのがたいへん。物腰穏やかで、上品だし話し言葉も丁寧、大阪弁なんてとんでもない。お客さんだから気に入られようと、どうしてもおべっかも使ってしまう。そりゃ、おつきあいのたいへんなことといったらないといった風でした。



そして、有名になる前と後の変化について何よりも貴重なメッセージを聞くこととなりました。

それは、有名になる前だと、どんな作品も自由気ままに冒険もしながら試行錯誤して制作できた。が、有名になった後だと、いわば自分のコピー商品を制作しなくちゃいけなくなったということでした。知人の作品が世の中に浸透した、だとしたら、作品を見ただけで、作者が特定できるものでないと価値がないということです。いわば冒険ができなくなったのです。作者らしいもの、作者を特定できる範疇からはみ出すことなく、自分の類似作品を創作・制作しなくちゃいけなくなったということです。ある種、楽しいなかにあって、後悔も含め、悲しんでいました。

その後も、幾度か違ったかたちでマスメディアに顔を出したりもして話題を放っていました。

名を挙げたい、名を売りたいとお思いの方には、この有名の裏側、意外と見聞できない話で大いに参考になるのではないでしょうか。