島木潜水倶楽部 since1978

一般ダイバーの立場から安全潜水を考えるブログ、他徒然なるままに

地震と原発の記事を見つけました(伊方原発)愛媛県西宇和郡伊方町

2011-03-18 23:56:02 | 徒然なるままに
コメント:伊方原発訴訟と地震問題2008.7.22 荻野晃也
原発周辺で相次いでいる最近の地震のことを考えながら、伊方原発訴訟で問題になった「地震と原
発」のことを思い起こすことが多くなっています。中越沖地震で柏崎原発が大事故にならなかったこ
とにホットしたのですが、今度の岩手内陸地震で「最大加速度が4000ガルを超えた」ことを新聞
で知ってとても驚きました。私が伊方原発の行政訴訟で原告(住民)側の証人となったのは1978
年のことですから、今年で丁度30年になります。その証言内容との関係もあり最近の地震には深い
関心を寄せていたわけです。私たちがメンバーになっていた「原子力技術研究会」から「原子力発電
における安全上の諸問題」という本を出版したのは1976年でした。その中の一章に、私は「原子
炉の耐震設計と立地条件」を書き、その内容に基づいて証言したわけです。最近の地震問題に関連し
て、新聞などで色々な文章を読むことが多いのですが、伊方訴訟での原告側の主張内容などのことが
あまり知られていないことに驚いています。この原子力安全問題ゼミでも何度か紹介させて頂いては
いるのですが、今回の企画がタイムリーですので、再度「どんなことを原告(住民)側が主張してい
たか」「被告(国)側はどんな主張だったか」「その主張が裁判で拒否されたのは何故なのか」とい
った問題点などを明らかにしておくことも意味があると思って短時間のコメントをすることにしまし
た。
最近、小生は原発問題から離れていて、今は「電磁波問題」に関わっていますので、資料を調べて
キッチリと書く暇がありませんでしたが、気楽に思いつく問題点をコメントすることにしました。こ
れらの経過や問題点などを書き残しておく責任もあるようには思うのですが、色々と忙しくて悩んで
いるところです。このような科学技術を巡る論争は、何も原発だけの問題ではなくて、科学技術に関
する普遍的な問題であるように思うからです。
􀀀原告の主張「たまたま地震の少ない時期でしかない。今後が問題である」
この主張は、今では常識のように思われているようですが、当時はそうではありませんでした。戦
後も福井地震などがあったからですが、それでもエネルギーが蓄積していることは明らかでした。そ
のような危機感もあり、伊方原発訴訟では地震問題が争点の一つになったのです。
􀀀原告の主張「地震の原因は活断層である」
当時の日本の地震学会などは、米国の「活断層説」を否定していたのです。一部の若手研究者は「活
断層説」でしたが、大物の研究者達はそうではありませんでしたから、誤った方向へ誘導していき、
国や電力会社なども大喜びしていたというわけです。訴訟で国側証人となった垣見俊彦・気象庁地震
課長は「断層は地震の化石である」と証言したことを私は良く覚えています。国と一体になって「地
震力を過小評価すること」に協力していたのです。欧米では「活断層説」が確立しつつある時だった
のですが、地震国・日本の研究者の多くは、「活断層説」を受け入れようとはしなかったのでした。
􀀀原告の主張「伊方原発の間近にある中央構造線は巨大な活断層である」
原告が重視したのは、世界最大級の活断層である「中央構造線」の存在でした。この問題は伊方2
号炉の訴訟でも中心的な問題になったのですが、敗訴してしまいました。安全審査では、日本の活断
層研究の第一人者である「松田時彦・東大助教授」が「この中央構造線は心配ない」とお墨付きを与
えました。その後になって反省していて、本にも書いているそうです。しかし、私はこれらの地震学
者を許すわけにはいきません。権力に迎合した研究者たちだとしか思えないからです。
􀀀原告の主張「地震は過去に記録のない場所で起きている」
活断層説に立って主張していましたから、古い地震記録のないような地帯は「地震の空白地域」に
相当し、地震のエネルギーの蓄積しつつある危険な場所だということになります。過去に発生した記
- 2 -
録のある地震が、同じ場所で同じ規模で再び起きると考えれば、空白地域に原発を建設する方が地震
力を弱く見積もれるわけで、建設費も安くなります。しかし、このような方法で地震力を想定すると
いう当時の(現在も?)安全審査では、過小評価になることは明らかです。「日本のような地震多発
地帯では、地震の空白地域こそ、これから地震の起きる可能性の高い地域である」と原告は主張しま
した。ところが、この日本では、そのような「地震の空白地域」に原発が立ち並んでしまったのです。
􀀀原告の主張「活断層は200万年間を考慮すべきであり、地震の記録では短かすぎる」
国側の主張は、「日本は1300年間という世界でも珍しいほどの古い地震の記録があり、その記
録を利用することで過去の地震力を想定することが出来る」というものでした。それに対して、原告
側は「伊方周辺の記録は少なく、せいぜい数百年分しかない」「活断層は第4紀の地質構造を意味し
ているのだから、200万年間の活動を問題にすべきだ」と主張しましたが、受けいれられなかった
のです。活動性がないと考えられていた断層が活断層だったという事実がドンドンと見つかっていた
からです。それだからこそ、米国の法律では徹底的な活断層の調査を行うことが義務づけられていた
のです。
􀀀原告の主張「原発は海岸立地であり、周辺活断層の半分は海側に分布しているはずだ」
敷地周辺の活断層を精査しようとすれば、海底の詳細調査が必要となります。しかし、電力会社は
海の調査を真面目にしようとはしませんでした。日本の原発は海岸立地ですから、周辺に分布してい
るかも知れない活断層の半分は無視していることになります。そのことが問題になってきたのは、後
になってからでした。しかもいい加減な調査であって、短い断層を見出したとしても連続性を調べる
ようなことはしようとはしませんでした。陸上よりも判断が難しいことを良いことにして、出来る限
り過小評価することを国も電力会社も心がけてきたといって良いでしょう。
􀀀原告の主張「少なくとも立地審査指針を真面目に考慮すべきである」
「原子炉立地審査指針」には、「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったこと
は勿論であるが、将来においてもあるとは考えられないこと」と書かれている。その立地審査指針を
作成した国自身が、活断層を無視するだけでなく、地震の起きる可能性の高いとして指定した「特定
観測地域」に原発を立地するということを行ってきたのです。縦割り行政の矛盾というよりも、国民
の安全を蔑視してきた証拠だと思います。
􀀀原告の主張「地震の原因は活断層であるから、断層距離で地震力を推定すべきである」
活断層説に立つ原告側は、地震力の推定は活断層の近くでは断層距離ないしは震央距離で推定する
ことを主張した。これに対して国側は「震源距離で地震力を推定する方式」を展開し、一貫して活断
層説を否定してきたのです。
􀀀原告の主張「サンフェルナンド地震を例に、1000ガル以上の可能性を指摘した」
1971年に米国で発生したサンフェルナンド地震では、地震計が近くにあったために岩盤上で1
225ガルもの最大加速度を計測した。それを根拠にしての原告の主張に対して、国側は「崖の端に
あったからであり、そのような高い数値になることはあり得ない」と主張し続けたのです。原告は「伊
方原発は、海水がなければ崖の端に立地していることになる」と反論しました。米国(特にカルフォ
ルニア州)では地震計の設置が多かったのですが、日本では地震の発生する可能性の高い地域に地震
計を設置するという対策を取らなかったからでした。そのような方針を転換しはじめたのが、残念な
ことなのですが兵庫県南部地震で多数の犠牲者が出た後だったのです。
􀀀原告の主張「内陸地震を想定するのに、震源深さを30kmとするのはおかしい」
伊方原発ではM=7、震源深さを30kmと想定して、最大加速度を165ガルと推定しました。
- 3 -
その根拠として、伊方周辺で発生しているM=6以上の地震の震源深さはすべて30km以深である
と評価したからでした。その上で「200ガル」を想定最大地震力としたのでした。プレートが入り
込んでいるような日向沖地震のような地震のみを想定したからであり、30km以内である地殻内の
地震、つまり活断層による内陸地震を想定しなかったからでした。
􀀀原告の主張「内陸型地震での震源深さが10km以内の地震も多い」
地震の震源深さを深くすることで、地震力を小さくしようと言うのが一貫した国側のねらいでした。
「M=6.5で10km」もその現れでした。しかし、震源深さ0kmと推定されている地震の多い
ことも原告は指摘していたのです。活断層を考えれば、そのような視点は重要だからです。今回の岩
手宮城内陸地震では、M=7.2で、震源深さが約8kmでした。その余震などの分布を見るとすべ
て10kmよりも浅く、M=6.5で10kmの根拠もくずれていることは明白です。
􀀀原告の主張「地震後に地上で活断層が見出される例が多い」
日本の地形は複雑であり降雨も多く植生の変化も激しいために地表面の変化が激しいのが特徴です
から、活断層があったとしても消えやすいことになります。濃尾断層などを別として、内陸型地震の
多くでは地震後に活断層が出現し、それも100年もすれば痕跡が消えてしまっているわけです。断
層の存在するらしい地形を「リニアメント」と呼ぶのですが、そのようなリニアメントがあれば、土
地を削り取って活断層かどうかを調べる必要があるのですが、そんな手間ヒマなどかけようとはしま
せんでした。自然が豊かであるという日本の特徴に悪のりしたわけです。
􀀀原告の主張「伊方原発は200ガルで設計されているが、あまりにも低すぎる」
活断層であることが明らかである中央構造線を原因とするM=8.2の地震が発生すれば、震央距
離5kmで4000ガルを越える可能性もあることを原告側は指摘しました。岩手宮城内陸地震では、
何と水平動で1434ガル、上下動で3866ガル、全体を合成して4022ガルの最大加速度値が
測定されました。今年の3月に設置されたばかりの測定器は最大で4Gまで測定可能な新型だったか
らでした。1975年の南伊豆地震の際には石廊崎断層近くに設置してあった地震計の最大加速度値
に注目したのですが、残念なことに振り切れてしまっていたことを思い出します。その高い数値を検
出した「一関西・測定所(IWTH25)」は震央から南南西方向の僅か3kmの地点にあり、断層にも近
かったからでした。その地点の地下260mの岩盤でも1078ガルの最大加速度が測定されていま
すから、もし解放岩盤上であれば2000ガル近くになった可能性が高いのです。
􀀀原告の主張「水平動の加速度に対して上下動も同じ強度の1:1に推定すべきだ」
米国では、短周期の卓越周期に対して1:1、長周期に関しては1:2/3に設定していましたが、
日本は1:1/2でした。すでに濃尾地震などでも上下動が1Gを越えていたと思われる現象が現れ
ていたのですが、具体的なデータがないことに悪のりしていたわけです。岩手宮城内陸地震では地表
で1:2.7の上下動が観測されていて、架台が飛び上がって着地時にケーブルを断線したことを示
す世界で最初のデータも得られています。
􀀀原告の主張「推定地震波形が応答設計曲線(スペクトル)を越えているのは危険だ」
最大加速度値(伊方原発では200ガル)を決め、その値を卓越周期0秒での値として、設計応答
曲線を作成し、それ以下になるようにして耐震設計が行われることになります。そうであれば、その
曲線よりも地震波形が上に来ることは、設計が不十分であることを示していることになるはずです。
この点に関しても、原告側は越えている場合の曲線を示して危険性を主張したのですが、少しぐらい
は越えても心配はないとして問題にされませんでした。この応答設計曲線のことは、柏崎原発でも問
題になっていますが、今回の岩手宮城内陸地震での加速度応答曲線が上下方向で周期0.06秒で何
と「9853ガル」にもなっているのです。また、速度応答曲線での最大値は、「東成瀬・測定所
- 4 -
(AKTH04)」で観測された周期0.32秒での316カイン(cm/sec)でした。これらの大きな値は、
耐震設計の根底に関わる重要な問題だと私は思っています。
これ以外にも、伊方原発訴訟では多くの問題が論争になったことはいうまでもありません。確率的
安全評価問題に関しても、この地震問題は重要です。英国ロイズ協会が「日本の原発に関する再保険
を断った」理由が地震問題だったはずです。そのために日本ではプール会社が設立されたのだと思い
ます。東京電力とそのプール会社との間で、どのような取引がなされているのかの情報も出てきませ
ん。いずれにしろ、このような重要な問題が今なお歴史的に明らかにされていないことを我々はどの
ように考えるべきでしょうか?真実を語る人が何故あらわれないのでしょうか?本当に不思議な気持
ちになります。中越沖地震による柏崎原発の状況を知って、ロイズ協会は胸をなぜおろしているので
はないでしょうか?原発の大事故に匹敵するのは「戦争のみだ」というのが、私の昔からの主張なの
ですが、その大事故の足音が近づいてきているように思われてなりません。その思いを京都新聞に書
いたことがありますので、ついでに添付しておきます。
柏崎原発の炉心内がどのような状況になっているのかを、私は知らないのですが、本当に健全なの
でしょうか?東京電力はABWRである7号機を真っ先に再開したいと考えているようです、本当に
大丈夫なのでしょうか?
新潟県巻町での住民投票の前日のことですが、私は広瀬隆さんと一緒に巻町での講演会に行きまし
た。私は地震問題を話したのですが、その際にABWRで最も心配なのは、「インターナルポンプの
耐震性だ」といいました。インターナルポンプの保持する部分の余りにも脆弱なことに驚いたからで
す。本当に亀裂が入っていないのでしょうか?
ところで、伊方原発訴訟での地震を巡る論争に関しては、一般には良く知られていないように私は
思っています。その理由が何故なのか、私にはわからないままに年月が過ぎてきました。宣伝してい
ないからかも知れませんが、宮城沖地震・新潟県中越地震・能登半島沖地震の際にも私はそのように
感じました。しかし中越沖地震以降から、私と同じような問題意識を持っている人が多くなってきた
ようで、私はとても喜んでいます。以前から石橋さんは孤軍奮闘されていたのですが、今度ばかりは
地震学者が率直に語りはじめていることに感激しています。地震学会の会員でもない私が、30年以
上前に「原発と地震」問題に危機感を感じて証人になったりしたことを思い出しながら、「多数の原
発がこの地震国・日本で立ち並んでしまった理由は一体何故なんだろうか?」と考えるのです。その
結果として私が推察するのは、「科学者の倫理観の欠如」「権力に迎合する科学者の群れ」の問題で
す。伊方原発訴訟で思い浮かぶ国側の科学者でいえば、地震関連では調査委員だった「垣見俊彦・気
象庁地震課長(伊方訴訟で証人になった後で、地質調査所・所長に就任したと思います)」と「松田
時彦・東大助教授(伊方に関わった後で、すぐに教授になったように思います)」、審査委員だった
「大崎頼彦・東大教授」や鑑定人だった「木村敏雄・東大教授」などです。地震担当の安全審査委員
でありながら、委員会に一度も参加せずに東北地方へ転居した木村耕三・気象庁観測部長もいます。
とにかく、このような日本の安全審査のいい加減さに、私は欧米の論争との相違を地震問題では色々
と感じたのでした。その点に関しては、マスコミの責任も大きいように思います。読売新聞は勿論の
こと、岸田純之助・大熊由紀子などの朝日新聞記者の名前をも思い出します。裁判官にも同じような
不信感を持ちます。
このような人たちが、どのような発言をし、どのような役割を果たし、どのようになっていったの
か、どのような責任があるか、などを私たちはキッチリと歴史に残す必要があるのではないでしょう
か?そうでなければ、これからも「権力と癒着して自利益を優先するような悪い人たち」の天下が続
くのではないかと思うのです。そんな思いを持ちながら、原子力安全問題ゼミで「中越沖地震と耐震
設計」が企画されたこの機会に、昔のことを思い出しながらこのメモを作成した次第です。「地震と
原発問題」に関する背景が少しでもおわかり頂ければ幸いです。

最新の画像もっと見る