集中治療専門医への道

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症例報告 case 1

2014年01月18日 | 日記

答え:メトヘモグロビン血症

この症例自体はUSMLE step2から参照した症例です。僕自身はダプソンでメトヘモグロビン血症となった症例、心不全で入院中の患者で硝酸剤の使用を漫然と続けた結果メトヘモグロビン血症となった症例を経験しました。なかなか勉強する機会が無いと思われるメトヘモグロビン血症の簡単なまとめです。

UpToDate

J cardiothorac Vasc Aneth 2013 Aug 13 Methemoglobinemia: A Review and Recommendations for Management.

Anaesth Intensive Care. 2010 Nov; 38(6): 1070-76 Dapsone-associated methaemoglobinaemia in patients with a haematologic malignancy.

 を参考に以下作成しております。。

【病態】

②つのパターンがある。

 ・Congenital methemoglobinemia  

   メトヘモグロビンからヘモグロビンに変換する酵素が異常

   一般的には無症状

 ・Acquired methemoglobinemia 

   メトヘモグロビン産生を増加させる薬剤などによる

   一般的に致命的

 メトヘモグロビン:ヘモグロビンに付随する二価の鉄が三価になっている。それ故、酸素を運搬する事が出来ない。加えて残った二価のヘモグロビンにおける酸素親和性が高まり、酸素の切り離しがうまく出来なくなる(酸素解離曲線が左に移動する。)。酸素の供給が滞り、組織低酸素になってしまう。

 正常でもヘモグロビン→メトヘモグロビンへの酸化は起こっている、1日当たり0.5-3%程度である。同時にメトヘモグロビン→ヘモグロビンも起こり、メトヘモグロビンの割合は全ヘモグロビンの約1%程度で維持されている(全てメトヘモグロビンに置き換わった際のSpO2は85%程度とされている)。

 メトヘモグロビン→ヘモグロビン

  ①NADH / チトクローム b5Rの作用

  ②メチレンブルー/リボフラビンなど外部からの物質で活性化されるNADPH / G6PDの作用

  ②は治療で重要とされる。 

【病因】

 ・Congenital causes

  遺伝的要因がメイン(説明は省略)

  割合は少数

 ・Acquired causes 

  多くはこっち

  薬剤:クロロキン:マラリア治療薬

     ダプソン:PCP治療薬

     リドカイン・ベンゾカインなどの局所麻酔薬

     メトプトクラミド:プリンペラン(制吐剤)

     硝酸剤:ニトログリセリン、NOなど

     その他:UpToDateなど参考して下さい

 特にダプソンはメトヘモグロビン血症を呈する患者の42%でダプソンの使用があったとの報告もある。 

【症状】

Congenital methemoglobinemia

  多くは無症状:頭痛や易疲労感を訴える人はいる

  割合が40%以上でも症状はさほど訴えない 

  チアノーゼ :Met-Hb > 8-12%で出現 

Acquired methemoglobinemia

  致命的になりやすい:Congenitalと違い代償が効きにくい

  濃度によって症状が異なる

   低濃度:頭痛 易疲労感 呼吸困難 倦怠感

   高濃度: 意識障害 呼吸不全 ショック けいれん 

   30%以上になれば死に至る事もある。

【診断】

症状として疑うのは、正常なPa02にも関わらずチアノーゼがあるとき。また、血の色調がチョコレート色であるとき。

サチュレーション:SpO2SaO2に差がある(サチュレーションギャップ)

疑われる薬剤を使用後に急にチアノーゼやhypoxiaになる

採血:congenitalであればその欠損した酵素などを測定

鑑別: 

SpO2の低下する理由

・低酸素血症 ・異常ヘモグロビン血症 ・メトヘモグロビン血症 ・スルホヘモグロビン血症 ・静脈内色素(メチレンブルー・ICGなど) ・マニキュア 

低酸素血症の原因

・吸入酸素濃度低下 ・CO中毒 ・低換気 ・シャント ・V/Qミスマッチ ・抹消の血流低下

【治療】

Congenital:割愛します。

Acquired:原因薬剤を中止 

  Met-Hb < 20であれば原因薬剤の中止で経過観察

  > 20で症候性であれば、メチレンブルー使用(>30なら症状問わず治療介入:要)

  先天性であればアスコルビン酸も効果あり(300-1000mg/日)

  ただ、後天性では効果無し!内因性の酵素異常が原因でないから!

  ショックであれば、輸血や交換輸血を(高圧酸素療法もDO2⇧させることで効果あり)

【メチレンブルー】

作用機序:上記②のメトヘモグロビン⇒ヘモグロビンの進行を促す事でメトヘモグロビン濃度を下げる。

 ・1-2mg/kg over 5min 

 ・30-60分後に効果が乏しい場合は(高濃度が遷延など)、再度リトライする。また60%程度で投与後18時間後に再度濃度の上昇が認められる。

 ・注意点:7mg/kg以上投与すると中毒症状あり

      呼吸困難や胸痛、さらには溶血

      セロトニン症候群を引き起こす

      腎機能障害の患者に注意

 

【症例 続報】

Saturation gapからメトヘモグロビン血症診断(TEEの際に使用したベンゾカイン)

メチレンブルー2.5ml/kg投与 5分かけて、さらに計5ml/kg投与し、45分後にはSpO2も100%まで改善した。その際の血液の色調も鮮血に戻った。結果Met-Hb 39.2%であった。


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