1993年(平成5年)にマルホンから登場した現金機デジパチ「サイドセブン」
何を隠そう、本機の大当り確率は驚きの「1/515」である。
デジパチ史上「最低確率」ともいわれた、マルホンのドット機だ(かつてのデジタル一発台や旧要件アレパチには、こんな数字の台もあったが…)。
現金機デジパチといえば「1/210」前後(連チャン機はもう少し低いが)の時代に、とんでもない数字の台が出たものだと仰天した。まぁ、綱取物語の地獄モード(1/988)よりは良かったが…。
ただ、その分、出玉が多い「3回ワンセット機」(但し、単発絵柄もアリ)なので、デジパチというよりは権利モノの感覚に近かった。とはいえ、当時の一般的な3回権利モノの確率(1/320前後)より遥かに低く、初当りまでは苦労した。
本機はいわゆる「確変デジパチ」だが、面白い事に、確変機で優遇されがちな「3」「7」だけが、あえて単発図柄に「格下げ」されていた。「サイドセブン」というネーミングは、まさに「7が脇(役)」といったニュアンスだろう。
初打ちは、向ヶ丘遊園駅北口の「銀座スター」。私が知る、数少ない本機の設置店だった。ただ、全く人気が出ないまま、半年持たずに入れ替えられてしまったが…。
(当時の「銀座スター」)
この「スター」で思い出すのが、店を出てすぐそばにあった「石川屋」という小さな定食屋だ。割烹着姿の寡黙なオヤジさんが一人で切り盛りする。小さなカウンター店である。「スター」で一勝負終えると、石川屋の横開きのガラス戸を開け、狭いカウンターに窮屈な格好で座り、「カツカレー」と注文するのが定番だった。「スター」は名前を変えて今も健在だが、「石川屋」は既に閉店して、今は「キッチン南海」になっている。
(「石川屋」のカレーは、こんな形の昭和チックな食器に入っていた。)
(スペック)
★賞球…7&15
★大当り確率…1/515
★16ラウンド継続(1回の出玉…約2300個)
★大当り図柄…0~9、¥、$、V、当、ベル、グラス、盾、旗、馬、猫、タコ、鳥の3つ揃い(22通り)
★確率変動機能搭載
⇒上記22図柄のうち、「3」「7」以外で当ると、プラス2回の確変突入(3回セット、ループなし)
⇒3回セットの出玉…約6800発
⇒「3」「7」で当った場合は単発。かなり悔しいが、あえて「3」「7」のみ継続ナンバーとする店もあった。
⇒確変突入率…表面通り20/22(90.9%)
⇒確変中は、小デジタル確率が1/16から10/16に10倍アップ。強力な時短も働く。
⇒電チューは4秒or1カウントまで開放。
⇒さらに、確変中はメインデジタル確率もアップしていた(後述)。
鳥の三つ揃い。当時は、コイツが香水の容器や潜水艦に見えたが、私に美的センスがなかったのだろう。今は、ちゃんと顔が横を向いた鳥(イーグル)に見える。
(「当」の三つ揃い。コチラも「これぞマルホン」といった風情のデザイン。その他の図柄も、赤・黄・緑を基調とした荒いドットが、液晶機とは一味違った雰囲気を醸し出していた。妙に愛らしい猫、チェスの「ナイト」風の馬、そしてタワーに見えるタコなど…。加えて、「22種類」という図柄の多さも特徴だった。リーチアクションは、超スロー、低速、中速、高速など多くのパターンがあり、途中でデジタルの速度が変わったりして、期待を持たせる演出になっていた。
こちらは、同時期に登場した「グランジャーセブン」(マルホン)。やはりドット機だが、ゲーム性は本機と180度異なり、「3」「7」で当るとプラス2回の確変に突入するタイプ。
★確変中のメインデジタル確率アップについて
本機の場合、確変中は小デジタル確率が1/16から10/16にアップ。さらに時短も働くが、電チューが1カウントの為、普通に打っていると玉減りする。スルーが渋い時は、なおさらである。
一方、メインデジタル確率は、現金機の建前上、通常時も確変中も「同じ」とされていた。
その為、確率が「1/515」と悪い本機では、「確変中も大ハマリの危険がある」と、当初は不安視されていた。只でさえ玉持ちが悪いのに、2000回転とかハマッては、追加投資で目も当てられない。
しかし、実際に打ってみると、確変中は次の当りがやけに早いのだ。50回転以内に来る事などザラで、時には保留玉で連チャンすることすらあった。
その為、本機の確変中は、小デジのみならず、メインデジタル確率も大幅にアップしているのではないか、と疑われた。そして、解析の結果、それは「事実」と判明した。
では、その「カラクリ」は、一体どうなっていたのか。
本機では、確変に突入すると内部のデータ処理量が一気に増加する、加えて、メモリーランプが1つ以上点灯した状態(連続回転時)では、内部処理量がさらに増えることとなり、「スタックオーバーフロー」(スタックのパンク)が起こる。
この「不具合」を逆に利用して、確変時の連続回転中に限り、保留1個目のエリアが常に「上書き」されるよう仕組まれていたのだ(かつての連チャン機では、同様の手法がよく用いられた)。
上書きパターンは「A~C」の3種類あって、必ず大当り乱数が上書きされる訳ではない。そのうち、パターン「A」が選択された時がチャンスとなった。Aの選択率は1/32だが、保1エリアが大当り値となる確率は、1/64.375(※文末の「補足」参照)である。
書換えの対象は「保1」エリアのみとなる。だが、連続回転をキープする限り、保1は1回転毎に上書きされるので、確変中は絶えず約1/64で大当りが期待できた。保1が点灯している限り、この高確率状態は維持される。もちろん、一旦連続回転が途切れても、再び保1を点灯させれば高確率状態は復活する。
よって、連続回転を続ければ、通常より「約8倍」も高い確率で大当りするので、大ハマリの危険は全くなかった訳だ。
だが、「玉減りが勿体ない」といって止め打ちすると、保1が点灯しない状態が増えて、上書き処理の機会も減る。つまり、通常確率である「1/515」での判定機会が、それだけ増えてしまう訳だ。
つまり、本機では確変中の止打ちは「厳禁」で、なるべく連続回転をキープする事が、次の当りを早くするポイントだった。同時に、確変終了後に保1で連チャンする確率も上がったのだ。1/64(保2~保4での自力を含めれば、それ以上の確率)で3回セットの連チャンが期待出来たのだから、これをみすみす逃がす手はなかった。
「1/515」という極悪な数字ばかり注目された本機だが、出玉面や確変消化スピード、連チャン性など総合的にみれば、それ程悪い奴ではなかった。
ちなみに、本機のボーダーラインは2.5円の場合、無制限で26回/1K、1回交換では34回/1K。確か、「スター」は2.2円のLN制だったが、ボーダー程度の台はゴロゴロしていた筈だ。もう少し人気があっても良かったと思うが、当時はパチもスロも、他に勝負できる機種が山程あったので、確率の低すぎる本機が敬遠されたのは、仕方ないかもしれない。
※確変中の乱数上書きについての補足(やや、数学的な話になるが…)
本機の乱数カウンターは「0~514」の515コマ。そのうち、大当り乱数は「56」の1つ。よって、通常時の確率は「1/515」となる。
確変中の保1点灯時、スタックオーバーフローによって書換パターン「A」が選択されると、保1エリアに大当り値「56」が上書きされる。パターンAの選択率は1/32。因みに、パターンB(ハズレ)の選択率は15/32、パターンC(ハズレ)は16/32。デジタル1回転ごとに、A~Cいずれかのパターンが選ばれる。
ここで注意すべきは、乱数の処理が、10進数や16進数ではなく「2進数」で行われており、上書きされる数値が「8ケタ」だったという点だ。
大当り乱数「56」は、8ケタの2進数に直すと「00111000」となる。この8ケタの数値が、元の乱数の下8ケタの部分に「上書き」される訳だ。
ただ、「0~514」(10進数)のカウンター範囲のうち、2進数で8ケタ以内に収まるのは、前半の「0~255」(256通り)までに限られる。元の乱数がこの範囲ならば、書換え処理によって大当りとなる。
一方、後半の「256~514」(259通り)は、2進数では全て9ケタ以上の数値となる。その為、たとえ下8ケタを大当り値に書き換えても、9ケタ目以降がそのまま残り、書換え処理後も大当り値とはならない。
例えば、元の乱数が「500」の場合、2進数に直すと「111110100」となる。だが、書換えは下8ケタのみ行われるので、大当り値「00111000」を上書きしても、9ケタ目の「1」が残るので、「100111000」という数値になってしまう。これは、10進法にすると「312」で、大当り値「56」とは全くの別物である。つまり、単なる「ハズレ乱数」なのだ。このように、書換え前の乱数が「256~514」(10進数)の範囲にあると、上書き処理されても大当りとはならない。
以上の事から、上書きで大当りとなるのは、書換えパターン「A」が選択され、かつ保1エリアに格納された元の乱数が「0~255」だった場合に限られる。
よって、1/32(パターンAの選択率)×256/515(2進数で8ケタ以内の乱数が選ばれる確率)=1/64.375が、実質的な確変中の大当り確率となる(但し、保1以上点灯時に限る)。確変時、大当りがやけにスムーズだったのも、これで頷けるだろう。
因みに私は唐揚げカレーが好きだったな-。
前職がSEなので、この情報処理系の解説は大変興味深く読ませていただきました。
☆マルホンといえば、私はソルジャーとびっくりマンに思い入れがあります。
大変恐れ入りますが、こちらの連荘システムもお手すきの際に解説いただけることを願っています。
大当たり後の1回転目の際に下位ビットを
03,07,と他2個
(1個が小当たりの下位ビット0F?、1個がハズレ1F?)
の4パターン(実際は同じ配列が4個あるので計16個)
を書き換えて連荘してました。
大当たり確率が1/144だったので
129~144の時は単なるハズレ(2進数で10000000~10010000)で
1F(00011111だったかな)の時に書き換えが終了。
0Fは小当たり、3,7は大当たりでした。
ダブルゲーム・チャイナタウンは小当たりで終わり、ハズレと大当たりは続行でこれと全く同じ方式です。
ソルジャーは初め権利発生の時に振り分け1/2と
最終ラウンド終了時の1/4をパスすれば以後3,7で当たるまで連荘しました。
1/4の部分はエラーを発生させるとずっと参照するので(0.016秒もあれば100%通過)
最後のラウンドで玉を入れずに
わざとエラーを出して閉まりかけの時に
電チューに玉を入れ、自力エラー解除することで飛躍的に連荘を増やす打法なんてものもありました。
店は電チューの入賞センサーを移動させてカウントを早くする対策も取ってました。