環境と経営のブログ

環境制約の中でしか存続できなくなった現代の経営のあり方について考えていきます。

専門家のパージを(原子力規制委員長人事について)

2012-07-21 20:30:04 | 総合
 わが国が20年もの長きにわたり、世界の成長から取り残され、経済面だけでなく、国家財政・社会福祉・教育水準・精神衛生状態など、ありとあらゆる側面で悪化をしている理由として、次のことが指摘されうる。
 すなわち、政府が失政に関与した専門家を使い続けるということである。

 政府は新しい原子力規制委員会のトップとして、元原子力委員会委員長代理の田中俊一氏(67)を充てることを固めたと報道されている。つまり、政府は、誤ったわが国の原子力政策を進めてきた原子力の専門家を再度、原子力政策決定に関与させることを決めたのである。
 現在、原発問題が国論を二分するほどの問題となっているのは、国の原子力政策への信頼が崩壊したことによるものである。この間違った政策を推進することに、原子力委員会や原子力安全委員会などに集められた専門家が果たした役割は大きい。
 失われた原子力政策への信頼を回復させるには、何よりも、今までの原子力政策に関わってきた専門家を政策決定に入れさせないことが何よりも必要なことではないか。
 しかし、政府の人選基準では、過去3年間に原子力関連の会社・団体から「年間50万円程度」以上の報酬を受けていないなどの中立性要件が定められているだけで、失敗した政策作成に関与した専門家を排除するということは入っていない。

 原子力政策の他にも失敗した国家政策として、年金政策、教育政策及び財政政策などが挙げられる。否、ほとんど全ての国家政策が失敗したといえる。
これらの政策決定は、委員会や審議会といった専門家集団のアドバイスによって行われる。そのため、彼らの責任が問われて然るべきである。
 例えば、破綻した公的年金制度を導いてきた専門家集団として社会保障審議会年金部会(旧・年金審議会)がある。その部会に属する専門家には、公的年金制度破綻を食い止めることができなかったという責任がある。
 いじめ問題やゆとり教育で失敗が明らかになった教育政策を導いてきた専門家集団としては中央教育審議会がある。彼らにも同じような責任がある。
さらに、破たんしたギリシアより一般政府債務(国債)残高比率が高い財政状態を招いている財政政策を導いてきた専門家集団である財政制度等審議会も同じ責任がある。
 金融政策に失敗してきた日銀政策委員会も同じだ。

 このような議論をすると、次のような反論が出る。
①専門家というものは結局、誰かに使われる存在である。国の政策に関与する専門家は官僚によって使われるだけの存在であるから、人選を代えても結果は変わらない。

 しかし、専門家の結果責任が問われないような委員会ばかりを作るから、そういうことになる。専門家に命を張って意見を述べてもらわないと、わが国は復活することはないだろう。それにはやはり、専門家に対して結果責任を問うことが重要である。そうして初めて、専門家の専門性が発揮されるのではないか。
 
②失敗した政策に関与した専門家をパージし続けていけば、人材がいなくなる他、やりたいという専門家がいなくなる。

 しかし、それはおかしいことである。パージし続けることによって、専門家がいなくなることは絶対にない。仮に日本にいないというのなら、外国人を使えばよいではないか。また、結果責任を問われたくないと尻込みするような専門家は真の意味で専門家ではない。
 敗戦後に、戦前の指導者たちをパージすることが行われた。そのことによって、若手の指導者たちが活動できる場ができた。同じように、破綻した政策に関与した専門家を順次パージしていくことで、若手の専門家が活動できる場が生まれる。
 民主党政権の委員会等の人選は、ほとんどが老人をトップにしたものである。老人が名誉職として各種審議会の会長職を行うから、斬新なアイデアが出ず、陳腐な結論ばかりとなる。そればかりか、国の政策を間違ったほうに導いてきた。
 たとえ政府から委員を指名されても、「自分はすでに老人である。日本の行く末を決める仕事は、若い人がやるべきだ」といって辞退するような立派な老人がいない。むしろ、喜々としてその指名を受けている老人ばかりではないか。

 国の政策を決めるような委員会・審議会は、結果責任が厳しく問われなければならないと思う。成功した結果を導いたという実績こそが人選基準の核でなくてはならないのに、政府がやっていることは中立性要件など形ばかりの姑息なものばかりである。中立な人間をいくら集めても、結果が間違っては意味がないではないか。
 間違った政策に加担したならば、その専門家をどんどんパージしていく。そうすれば、任務を引き受けた専門家は自分の名に懸けても努力をすることになろう。また、現実の問題を処理できなかった専門家をパージし続ければ、自ずと若い専門家たちによって、斬新な政策が打ち出されることになり、旧来の路線が転換されることになろう。
 こうなって初めて日本の再生がなされるのではないか。

※2012/7/21 訂正 「原子力規制庁」とあるのを「原子力規制委員会」と訂正しました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿