※ 特に断りのない限り,「奨学金」は,学生支援機構の奨学金のことを指す。
一昨日,奨学金の返済の手続きの書類を窓口へ提出した。来年10月から長い返済期間が始まる。
その返還手続きがやたら厄介だった。
まず,保証人。返還時には自分の両親の片方を原則とする連帯保証人に加えて,保証人が必要となった。この保証人の条件が結構厄介である。「4親等以内でかつ65歳未満」という条件だった。もし,この条件を満たせない場合,機構の所定の用紙で理由を届出なければならないという仕組みだ。家族も多様化しているし,親戚づきあいも様々だろう。このような状態において,この条件は少し厳しい気がする。保証人無しでは返還手続きが受理されない。返還の段階で要求するのではなく,貸与の段階で保証人を要求して欲しい。(自分は父方の親戚が県内にいたため,そこまで苦労することはなかったが,直接サインと印鑑をもらって,印鑑証明書まで示すのは遠くに離れた親戚であった場合きつい。)
他にも,連帯保証人・保証人の印鑑証明書,連帯保証人の源泉収入証明書,本人の住民票や金融機関に届け出た口座の用紙のコピーなど,借金(奨学金)を返すためにも,手数料やらコピー費やら交通費(郵送費)やらが結構かかる。
この手続きも終わり,卒業後には返還へ入る。しかし,借りた額をそのまま返せばよいというわけではない。この機構の奨学金には,第1種(無利子)と第2種(有利子)がある。高校生で奨学金制度の説明があったとき,日本の奨学金制度をあまり知らず,貸与であることは知っていたが,それが有利子ということに驚いた。確かに利率は金融機関に比べればかなり低い。(年利約1.4%)とはいえ,途中で切らなければ48ヶ月に渡って貸与されるものであるから,貸与額は普通100万を超える。そのぐらい借りるといい加減に計算しても利子は最低10万以上になる。しかも,奨学金は一定額をある程度払い続けて,最後に繰り上げ返上で利子額を減額できるが,先に大きな額を返して,利息のつく元金を減らすことはできない。返還回数も機構側が指定した回数を2択から選ぶしかない。利子の額も必然的に決まってくる。
日本の奨学金制度は外国と比べると貧弱であることもよく言われている。海外では給与制のところも少なくない。日本の場合,ただの貸与ならともかく利子がつく。高校生やその保護者の奨学金に対するイメージは,意外と甘いもの(借りられるなら借りるべきもの)として考えられていることもあるように思う。契約書の意味を十分に理解していれば,低利子で猶予制度がある点を除いては,普通のローンであることは分かる。しかし,そのように甘いもののように思われていることを考えると,かつての奨学金と今の奨学金の制度はどうも違っているのではないだろうかと感じた。その奨学金制度の変遷をたどってみたい。
第一の転機といえるのが,1984年中曽根内閣による有利子の奨学金制度を導入だろう。有利子の根拠については,江田五月議員のHPで見られる「衆議院・文教委員会 日本育英会法案について」の委員会録からうかがえる。(以下の抜き書きでは前後が省略されることにより,若干ニュアンスが変わって伝わる可能性が考えられるため,必要があれば原典に当たってください。)
1 財源が得られないため,奨学生の数も増やせず,国立大学が授業料を上げたにもかかわらず,貸与額の増額ができない。
2 学生にもさまざまな、いろいろな立場(経済,社会,経済の環境)の学生がいる。
3 奨学金自体あるいは奨学金制度自体が持つ教育的機能を考えると,有利子貸与で借りたものは返すのが当たり前,しかも利子つけて返すのが当たり前ということを教えるのが非常に教育的だ。
など,いろいろと議論されている。
奨学制度充実のための財源が足りないから,奨学生から利子という形で後輩の奨学生の枠の拡大や貸与額のアップへの協力をお願いするということなのだろう。
金がないから奨学金を借りているのに,その金がない(なかった)奨学生から利子を取ろうという考えにはどうも納得がいかない。しかし,これで奨学金に利子がつくわけ,利子の目的と言うものがようやく見えてきたように思う。
しかし,注意したいのは,ここでは,「あくまで無利子が主体であり,有利子は補助的なもの」という議論がなされていることだ。それから20年も経った今は,大学の掲示板で募集している奨学金はほとんど有利子のものという状態だ。(少なくとも自分の通う大学では)
次の転機が,2004年に小泉内閣の構造改革によって,日本育英会が廃止され,独立行政法人日本学生支援機構に移行したことだ。このことによって組織の独立採算制が重視されることとなる。研究業績や教育関係の職につくことでの返還の免除もなくなり,延滞者には,10%の延滞金も課されるようになった。
一番の疑問は,奨学金制度を半民間のような組織に本当に任せてよかったのかということだ。ただでさえ,日本の大学の授業料の高さは世界一クラスであるのに・・・
最後に,平成19年度(2007年度)以降に採用された奨学生に適用される「利率見直し制度」だ。5年ごとに市場金利の上下変動に基づき,奨学金の利率が変動してしまう制度だ。下がればラッキーだが,上がる可能性も十分にある。
(追記)自分が該当しない制度だったので誤解していたが,「利率固定制度」と選択ができるようだ。それでも,どっちがいいか決めるのは賭けのような気もしないではない。
基準も厳しく,採用人数も少なかったのかもしれないが,全員が無利子で奨学金を借りられた時代はとっくの昔に終わっている。(しかし,大学進学率も今ほどはないだろう。)正当な理由があれば,返還が猶予(その期間は無利息)され,利子も金融機関に比べれば低い。(あくまで猶予であり,免除は本人死亡の場合しかない。)しかし,卒業後の就職も十分に保障されず,賃金も下がりつつある今,利子つきで返還するのはなかなか困難ではないだろうか。
奨学金を「奨学ローン」として認識し,ご利用は計画的にしていくことは大切だろう。金融機関で教育ローンを借りるよりはましだが,本当に必要なのか熟慮してから借りる必要があるだろう。無利子の1種に採用されれば,利子が上乗せされない話は別かもしれない。第二種でも3月中旬に全学を一括返上すれば,利子はつかないらしいが,それはほぼ不可能だろう。
他の奨学金の問題点に採用基準が親の年収と本人の成績(しかも進学前の学校でのもので,進学後の成績は考慮されていない。継続願で自己申告する程度)という状態では,真に奨学金を必要としている人を十分に判断できない可能性も高い。
また,本当にお金が必要になる入学時や前期の授業料納入時には奨学金は支給されず,5月中旬になってからまとめて支給される。それまでは何らかの形で資金調達を奨学金以外でしなければならない。もちろん入学前から奨学金を貸与するわけにもいかないのは分かる。
色々と教育問題が話題になり,教育改革が叫ばれている。
しかしながら,奨学金に対する話題はあまり触れられていない。高等教育や後期中等教育を充実させるために,少しでもかつての形に近い奨学金制度に戻すことが必要ではないだろうか。借りるのが不安になるような奨学金制度は好ましくないのではなかろうか。しかも,国立大学も2004年から法人化され,学費の値下げはそう容易にはできなくなっている。今後,奨学金の貸与を受ける側にとっていい方向へ行かないかなと思う。
一昨日,奨学金の返済の手続きの書類を窓口へ提出した。来年10月から長い返済期間が始まる。
その返還手続きがやたら厄介だった。
まず,保証人。返還時には自分の両親の片方を原則とする連帯保証人に加えて,保証人が必要となった。この保証人の条件が結構厄介である。「4親等以内でかつ65歳未満」という条件だった。もし,この条件を満たせない場合,機構の所定の用紙で理由を届出なければならないという仕組みだ。家族も多様化しているし,親戚づきあいも様々だろう。このような状態において,この条件は少し厳しい気がする。保証人無しでは返還手続きが受理されない。返還の段階で要求するのではなく,貸与の段階で保証人を要求して欲しい。(自分は父方の親戚が県内にいたため,そこまで苦労することはなかったが,直接サインと印鑑をもらって,印鑑証明書まで示すのは遠くに離れた親戚であった場合きつい。)
他にも,連帯保証人・保証人の印鑑証明書,連帯保証人の源泉収入証明書,本人の住民票や金融機関に届け出た口座の用紙のコピーなど,借金(奨学金)を返すためにも,手数料やらコピー費やら交通費(郵送費)やらが結構かかる。
この手続きも終わり,卒業後には返還へ入る。しかし,借りた額をそのまま返せばよいというわけではない。この機構の奨学金には,第1種(無利子)と第2種(有利子)がある。高校生で奨学金制度の説明があったとき,日本の奨学金制度をあまり知らず,貸与であることは知っていたが,それが有利子ということに驚いた。確かに利率は金融機関に比べればかなり低い。(年利約1.4%)とはいえ,途中で切らなければ48ヶ月に渡って貸与されるものであるから,貸与額は普通100万を超える。そのぐらい借りるといい加減に計算しても利子は最低10万以上になる。しかも,奨学金は一定額をある程度払い続けて,最後に繰り上げ返上で利子額を減額できるが,先に大きな額を返して,利息のつく元金を減らすことはできない。返還回数も機構側が指定した回数を2択から選ぶしかない。利子の額も必然的に決まってくる。
日本の奨学金制度は外国と比べると貧弱であることもよく言われている。海外では給与制のところも少なくない。日本の場合,ただの貸与ならともかく利子がつく。高校生やその保護者の奨学金に対するイメージは,意外と甘いもの(借りられるなら借りるべきもの)として考えられていることもあるように思う。契約書の意味を十分に理解していれば,低利子で猶予制度がある点を除いては,普通のローンであることは分かる。しかし,そのように甘いもののように思われていることを考えると,かつての奨学金と今の奨学金の制度はどうも違っているのではないだろうかと感じた。その奨学金制度の変遷をたどってみたい。
第一の転機といえるのが,1984年中曽根内閣による有利子の奨学金制度を導入だろう。有利子の根拠については,江田五月議員のHPで見られる「衆議院・文教委員会 日本育英会法案について」の委員会録からうかがえる。(以下の抜き書きでは前後が省略されることにより,若干ニュアンスが変わって伝わる可能性が考えられるため,必要があれば原典に当たってください。)
1 財源が得られないため,奨学生の数も増やせず,国立大学が授業料を上げたにもかかわらず,貸与額の増額ができない。
2 学生にもさまざまな、いろいろな立場(経済,社会,経済の環境)の学生がいる。
3 奨学金自体あるいは奨学金制度自体が持つ教育的機能を考えると,有利子貸与で借りたものは返すのが当たり前,しかも利子つけて返すのが当たり前ということを教えるのが非常に教育的だ。
など,いろいろと議論されている。
奨学制度充実のための財源が足りないから,奨学生から利子という形で後輩の奨学生の枠の拡大や貸与額のアップへの協力をお願いするということなのだろう。
金がないから奨学金を借りているのに,その金がない(なかった)奨学生から利子を取ろうという考えにはどうも納得がいかない。しかし,これで奨学金に利子がつくわけ,利子の目的と言うものがようやく見えてきたように思う。
しかし,注意したいのは,ここでは,「あくまで無利子が主体であり,有利子は補助的なもの」という議論がなされていることだ。それから20年も経った今は,大学の掲示板で募集している奨学金はほとんど有利子のものという状態だ。(少なくとも自分の通う大学では)
次の転機が,2004年に小泉内閣の構造改革によって,日本育英会が廃止され,独立行政法人日本学生支援機構に移行したことだ。このことによって組織の独立採算制が重視されることとなる。研究業績や教育関係の職につくことでの返還の免除もなくなり,延滞者には,10%の延滞金も課されるようになった。
一番の疑問は,奨学金制度を半民間のような組織に本当に任せてよかったのかということだ。ただでさえ,日本の大学の授業料の高さは世界一クラスであるのに・・・
最後に,平成19年度(2007年度)以降に採用された奨学生に適用される「利率見直し制度」だ。5年ごとに市場金利の上下変動に基づき,奨学金の利率が変動してしまう制度だ。下がればラッキーだが,上がる可能性も十分にある。
(追記)自分が該当しない制度だったので誤解していたが,「利率固定制度」と選択ができるようだ。それでも,どっちがいいか決めるのは賭けのような気もしないではない。
基準も厳しく,採用人数も少なかったのかもしれないが,全員が無利子で奨学金を借りられた時代はとっくの昔に終わっている。(しかし,大学進学率も今ほどはないだろう。)正当な理由があれば,返還が猶予(その期間は無利息)され,利子も金融機関に比べれば低い。(あくまで猶予であり,免除は本人死亡の場合しかない。)しかし,卒業後の就職も十分に保障されず,賃金も下がりつつある今,利子つきで返還するのはなかなか困難ではないだろうか。
奨学金を「奨学ローン」として認識し,ご利用は計画的にしていくことは大切だろう。金融機関で教育ローンを借りるよりはましだが,本当に必要なのか熟慮してから借りる必要があるだろう。無利子の1種に採用されれば,利子が上乗せされない話は別かもしれない。第二種でも3月中旬に全学を一括返上すれば,利子はつかないらしいが,それはほぼ不可能だろう。
他の奨学金の問題点に採用基準が親の年収と本人の成績(しかも進学前の学校でのもので,進学後の成績は考慮されていない。継続願で自己申告する程度)という状態では,真に奨学金を必要としている人を十分に判断できない可能性も高い。
また,本当にお金が必要になる入学時や前期の授業料納入時には奨学金は支給されず,5月中旬になってからまとめて支給される。それまでは何らかの形で資金調達を奨学金以外でしなければならない。もちろん入学前から奨学金を貸与するわけにもいかないのは分かる。
色々と教育問題が話題になり,教育改革が叫ばれている。
しかしながら,奨学金に対する話題はあまり触れられていない。高等教育や後期中等教育を充実させるために,少しでもかつての形に近い奨学金制度に戻すことが必要ではないだろうか。借りるのが不安になるような奨学金制度は好ましくないのではなかろうか。しかも,国立大学も2004年から法人化され,学費の値下げはそう容易にはできなくなっている。今後,奨学金の貸与を受ける側にとっていい方向へ行かないかなと思う。
ホームページ見てもこまごまとわずらわしくてきちんと読んだためしがないw
確かに必要ではあったのかもしれないけど,バイトなどで意外と収入が得られたものだから,途中の3年次ぐらいで切っておけば良かったかなとも思ったり・・・
無利子の1種ならもっと気楽に考えられたんだろうけど,2種はどこかで安心できない面があるよね…
夜行バスで後の座席の学生の兄が1000万ぐらい奨学金で借金作ったって話も聞いたし・・・
「あなたの夢を叶えてください」とか「羽ばたくつばさ,支える掌」というキャッチフレーズも利子がついて,採算を求められていることを考えられるとホントか?と思ってしまう。
確認してみよう…。
タバコのパッケージではないが、「これは利子のつく借金です」とでもでかでかと書いておくべきではないか。知っていることと、いつも心においておくことは違うし。
「奨学ローン」にでも名前変えて利子つき借金であることを強調すれば,奨学金にいいイメージを持って勘違いしている人たちが現実に気付くのにね。そうすれば安易な借金も減って,不良債権も減るだろうに・・・
でもそれじゃ奨学生の数が減って利子も集まらないだろうし,何より日本の奨学金制度の貧弱さを露頭してしまうんだろうな・・・第2種奨学生を増やして,日本はこんなに奨学生がいるってアピールしているようだし・・・