シャンバラを征く者感想ブログ

鋼の錬金術師劇場版感想・解説書き付け。思いついた順に書き込んでいきます。
9月頃まで期間限定開設。

服の色

2005-07-31 12:05:42 | 感想
原色を着られるのは子どもの特権である。
つまり「赤コートを着た少年」というのは「子ども」のメタファである。
社会性を持った大人、は、基本的にダークカラーを纏う。
それはハレとケの違いでもある。
大人はケの存在であり子どもはハレの存在である。

閑話休題。
エドは今回落ち着いたアースカラーの服を着ている。
それは彼が、テレビシリーズ時代の「子ども」ではないことを示している。
彼はテレビシリーズの「四年間」を過ぎることで子どもから脱却した後である。
翻って弟である。兄のコートを纏う彼は、今回一番分かりやすく描かれる「子ども」である。
罪を知る以前、世界との関わりの薄い彼は、確かに「まだ子ども」である。
しかし、弟は今回の事件で新たな「罪」を犯し、世界との繋がり、自分の立ち位置を自覚することで「大人」になる。アニメ版の鋼は常に、子どもが大人になるイニシエーションとしてのジュブナイル的な構造を強く持っている。テレビシリーズにおいてこの仮定を辿ったのがエドであることを考えると、今回の映画版は「テレビシリーズのテーマを再度繰り返してみた」わけである。TVで大人になったエドは、今回半ば弟を見守るスタンスになっている。そう言う意味で今回の主役は弟だと言えるかも知れない。
そしてラストシーン、弟は髪を切っていた。元服などで髪を切ることは多く、日本でもそうである(所詮この作品を作っているのは日本人である)。また、彼は打って変わって寒色の服を着ていた。これらからみて、弟は既に「こども」ではなく、「大人」になった、と言うことができるだろう。
既に二人とも、原色の赤いコートを着る資格はないのである。

以上


こじつけですけどね。

※補足
そういえば、エドはTVシリーズにおいても、後半ほとんど赤いコートを着ていない。
うろ覚えの記憶が正しければヨック島を出て後(32話)である。
あの辺りのエピソードがエドにとってのイニシエーションであることについては
本館TVシリーズ感想について既に述べた。

ハイデリヒ冒頭

2005-07-31 02:11:18 | 感想
先行き短いことを知っていて、その上でエドにロケットを作ってて、
そんな彼が占い師と聞いたノーアに「見て貰いたいな」とはどんな思いで言ったのか(涙)。

おまわりさんがヒューズだったこと。

2005-07-31 00:25:17 | 感想
実は初回見たとき結構「畜生ミスキャスト!」とか思ったのです。
だってあのおまわりさん普通のおっちゃんだったんだもん……。
友のために死んだ志士であるヒューズの顔させんなー、とか思ったのですよ。
普通の反応だな私。
でもアニハガにおけるヒューズの立ち位置を考えて納得。
エドにとってのヒューズは、一番信頼して腹を割っていた大人でした。そういえば。
はっきりいってロイよりもよっぽど信頼されていた……(涙)。
※ロイには冗談本気含めて「うさんくさい」だの「信用できない」だの言い放っていたエドですが(もちろん基本的な信用はあったわけですが)、ヒューズにはかなり無条件に腹割っていました。13話で賢者の石についてこそこそ話すところとか、23話でホムンクルスのことをうち明けるところにそれが現れています。
そんなヒューズと同じ顔です。エドもガードが弱くなるでしょうが、見ているこっちもついつい信用してしまいます。
実はその彼がナチ=敵側の人間だった、というのは確かにどんでん返しとしてはうまい手だなと思うのです。
でも1923年当時のナチスとヒトラーを持ってきて、あそこまで悪の軍団呼ばわりするのは、(事実関係がどうとか言う問題ではなく)「歴史認識の仕方」としてどうかと思います。




余談ですが、ノーアを引き入れたことを彼はぐちゃぐちゃ言ってましたが、
ジプシー云々を差し引いても、


未成年の学生二人がいきなり流れ者の美少女を拾ってきて暮らし始めるってそれどうよ。


二人暮らしの高校生がいきなり同棲を始めたらそりゃあ止めもします。
大人としてむしろ当然です。

【おもいつき】 ハイデリヒとエド

2005-07-30 17:24:52 | 小話
“錬金術”という、僕にとってはうさんくさい以外の何者でもないことを、彼はいつも話すので、試しに聞いてみた。
「それじゃあ、エリクサーなんかも作ったりしてた?」
「万能薬か? ああ、俺の専門とはちょっとずれるけど」
半分以上冗談だったのに、彼はさも普通のことのように返す。
「……作れるんですか?」
僕はのどの痛みを隠しつつ重ねて問うた。
「作れ……、まあ、作ろうと思えば多分。でも割に合わないよ」
作れるんだ。彼の世界の技術というのは僕には荒唐無稽すぎて何かのおとぎ話のようにしか思えない。
「どうして?」
ふ、と彼の眦に影が差した。何か気に障ることを言っただろうかと不安になる。
「材料が、人間なんだよ。1滴作るのに1000人やそこら必要になる。本末転倒もいいところだ」
ふいと、子供のように視線をそらす。そのまま彼は押し黙った。やはり僕は彼の聞いて欲しくないことを聞いてしまったらしい。
弟のために、研究をしていたと聞いている。
向こうで彼は、弟のために1000人犠牲にしたのだろうか。

少し考える。伝える気もないけど。
僕の身体のことを知ったとき、果たして彼は僕のために、1000人犠牲にするだろうか。
答えなど、知りたくもないけど。


會川の趣味か?

2005-07-30 00:13:11 | 感想
今回ヒロインはノーア。
TVシリーズ(ロゼ)に引き続き、エドの恋の相手は「エキゾチックで影のある美少女」。
アニメエドはこのタイプに弱いらしい。
「現実に生きることができない」というのも共通項。
でもどうひいき目に見ても、縋ってはいても恋してるようには見えないんですが、エドが。
ハイデリヒがどうあっても受け入れてくれない「向こうの世界」を、
(当たり前だあんな囲い込み方をしていたら。エドの「あちら側」を認めたら、
ハイデリヒのアイデンティティが崩れる)
ロゼがあっさり受け入れてくれたから、……というのが引かれた理由っぽいが、
あれは恋している感じじゃないよな……まじめに。