坂本龍、日本の整体

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【社】普天間基地@三極世界

2009-12-12 12:29:24 | 日記
 久々に政治経済に関するネタを。
普天間基地移転問題に関して。
今まで興味の無かった人は、以下を読むと経緯が分かりやすいです。
「安全保障研究家・森本敏 緊急提言!」

 平たく言えば、沖縄に米軍普天間基地ってのがある。市街地に近い
ため騒音公害、そして飛行機墜落などの事故が常に心配されている。
95年の米兵による小6少女集団強姦事件をきっかけとし、さらに04年
のヘリコプター墜落事件を経て基地移転問題が燃え上がった。
選択肢は以下の5つ。
 ①現状維持
 ②県内移転
 ③県外移転
 ④国外移転
 ⑤廃止
 自民党政権時代、日本政府と米国政府との間で②の方向で交渉が進
んだ。しかしまだ交渉妥結はしていない。民主党政権になり、自民党
政権と米国政府との交渉を白紙に戻し、基地移転問題を仕切り直しし
ようとしているわけ。

 報道を幾つか読んでみても、肝心要の文明史的な背景ってのが述べ
られていないので、私なりにやってみる。

 『パックス・ロマーナ』って言葉がある。『ローマによる平和』と訳される
のが常だが『ローマによる平定』と訳した方が分かりやすい。日本史で
言えば、戦国時代のアノミー(社会的混乱)を平定したのは徳川家康、
つまり『パックス・徳川家康』。平定者がいなければアノミーがダラダラ
続く。イラクは『パックス・フセイン』だったわけだが、平定者の首を取っ
たがゆえに、アノミーが現出しちゃった。

 米ソ冷戦時代、世界は米ソ両政府によって平定されていた。言ってみ
れば二極支配の時代だ。米ソの両親分同士の戦争はありえなかった。
第三次世界大戦の全面核戦争にエスカレートしかねなかったから。子分
同士の戦争も忌避された。戦線拡大して第三次大戦へと繋がりかねなかっ
たから。で、両親分が公認する代理戦争だけが散発していた。

 この米ソ冷戦とは白と赤とのオセロゲームに例えられる。世界には
200弱の国がある。米国政府は白のコマを増やす事を目指し、ソ連政府
は赤のコマを増やす事を目指した。しかし実態として米国政府のやって
いた事は違っていた。アカ以外ならなんでもよかったのだ。軍政だろう
と独裁だろうと、つまり黒いコマでもよかったわけだ。

 そして91年、冷戦コストに耐えられなくなったソ連が崩壊。自由主
義に転換する。米国政府は自由の勝利だと沸き立ち、そして浮き足立っ
た。米国一極支配の時代になると多くの人が思ったものだ。そしてク
リントン政権末期から91年に始まるブッシュjr政権で、自由の布教が
推し進められた。政治的自由としてのリベラル・デモクラシー。経済
的自由としてのグローバル・キャピタリズム。自由は正義であり、そ
して自由の広がった世界においては、自由の国アメリカこそが世界の
政治的、経済的指導者となれるのだと。赤のコマのほぼ無くなった世
界において、点在する黒のコマを白にひっくり返す行動にでたのだ。
それが政治面におけるアフガン・イラク戦争であり、経済面における
国内国外におけるビジネス規制撤廃だった。

 しかし政治においてはアフガン・イラクの占領統治でつまずき、経
済においてはサブプライムローン問題、そしてリーマンショックでつ
まずいた。ブッシュjr政権は世界の政治リスク、経済リスクの両方を
劇的に高めてしまった。その対処のために、オバマ政権になった今も
米国政府は大量出血的な財政赤字を垂れ流し続けている。ブッシュjr
が史上最低の大統領と呼ばれる由縁だ。

 思うに、アメリカという国は、
『自由という強迫観念に取り付かれた国家』
であると言える。
 ☆ジェファーソンによる独立宣言書
 ☆リンカーンによるゲディスバーグ演説
 ☆ケネディによる大統領就任演説
 これらを読めば分かるが、彼の国では『自由と国家と宗教』が三位一
体となっている。欧州旧大陸から迫害されしピューリタンが聖書を片手
に自由を求めて大西洋を渡り、新大陸の地を踏んだ。そこに築いた人工
国家、それがアメリカ合衆国だ。歴史のある国家、例えば欧州各国や
日本では、自由と国家と宗教が時として対立的であるという事を歴史を
通して知っている。中世キリスト教暗黒時代、絶対君主政、国家神道、
軍国主義。古代、中世、近代という歴史を経て、我々は自由と国家と宗
教とが対立的である事を知り、それゆえにその三つの三権分立的な相互
抑制が機能している。しかしアメリカには近代しかない。アメリカは歴
史なき国家なのだ。それゆえに、自由と国家と宗教が三位一体化したま
ま、極めてナイーブに礼賛されている。その単純さ、浅はかさが、ブッ
シュjr政権時代に暴走したわけだ。

 もはやアメリカ一極支配、米国政府による世界の平定は不可能だ。米
国政府の財政事情がそれを許さないからだ。ではどうやってこれからの
世界の平定を実現するのか。それは米国政府、中国政府、ロシア政府の
三極体制が担う事になる。この3国は国家の色合いがだいぶ違う。それ
はその通りだが、この三国には完全に一致する利害がある。それが核拡
散問題だ。

 今、イランと北朝鮮の核武装が問題となっている。世界192カ国中、核
武装しているのは、国連安保常任理事国の米露英仏中、およびイスラエル、
インド、パキスタンの8ヶ国。これ以上さらに核武装国が増える様にな
れば、雪崩をうった様にドミノ倒しの様な核拡散が予想される。

 各国政府が核武装する限りはまだ良い。相互確証破壊によっての「均
衡による抑止」が働くからだ。相互確証破壊とは、ウチの領域に核を使っ
たらオマエの領域にもお返しするぞという事。しかし政府の手から非政
府組織、たとえばテロリストの手に核兵器が渡ったら、相互確証破壊に
よる核抑止の体制は崩壊する。無国籍テロリストは領域国家ではないの
で、当然領域を持たないからだ。

 米露中の3か国に共通するの点は、イスラム問題を抱えている点だ。
アフガン・イラク問題を抱えるアメリカ、チェチェン問題を抱えるロシ
ア、ウイグル問題を抱える中国。それらの国の首都、ワシントンやモス
クワや北京で核自爆テロを炸裂させがっているイスラム・テロリストは
世界に決して少なくないだろう。

 核拡散を防ぐためには米露中3政府による三位一体となった核拡散阻
止の協力体制を実現する必要があるし、それは実現出来ると思う。その
時我らが日本国はどうするのか。幸い日本はイスラム問題を抱えていな
い。だが世界に有効なメッセージを発信する事は出来るだろう。最初で、
そして最後の被爆国として。

それが『広島長崎オリンピック2020』の実現だ。
 ↓
【P・社】広島長崎オリンピック2020

 話を普天間基地問題に戻す。文明史的にみて、グローバリズムが
始まって以来の世界の平定者は、以下の様に推移している。

①コロンブスの新大陸発見後の大航海時代
  2極・・・スペイン、ポルトガル

②イギリスに始まった産業革命後の産業革命以後の帝国主義時代
  3極・・・イギリス、フランス、オランダ

③第二次大戦により欧州は戦場となり、また戦後の植民地独立ゆえに
  欧州は斜陽化した。その後の米ソ冷戦時代
  2極・・・アメリカ、ソ連

④アメリカ冷戦勝利後のアメリカ一極時代
  1極・・・アメリカ

⑤そして、ブッシュjr政権の政治経済両面における大失政後のこれから
  の時代
  3極・・・アメリカ政府、ロシア政府、中国政府

 自民党政権時代の日本政府と米国政府との交渉は④を前提にされてい
た。しかしここ数年で世界地図は劇的に変わった。民主党新政権は⑤を
前提に、米国政府と交渉しなければならない。⑤を前提とした米軍の世
界展開、日米軍事同盟、在日米軍基地を、リ・デザインしなければなら
ない。ならば、新デザインが決まるまで、普天間基地は現状維持し、新
デザインが決まった後、移設すればよいわけだ。それは米国の国益にも
合致するだろう。

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