
先日新聞で、2021年のコロナワクチン開始が3カ月遅れたら、死者が2万人増えたという、東大の古瀬教授の報告を見た。(高知新聞2025/6/20)
報告では、2021年秋(ワクチン元年)の死者発生について、シュミレーションを行っているが、それ以降についての議論はない。(Furuse 2025)
それでは「ミッドウェー」以降はどうだったか可視化するため、厚労省のデータからグラフを作成してみた。(上図) コロナ死者数がジグザグ上昇しているが、21年から22年に注目すると、ジグザグ上昇の3番目の山がへこんでいるようだ。 ジグザグの谷については、第1の谷につづく、第2、第3、第4の谷が低く抑えられている。
ちょうどワクチンが大々的に行われた時期と一致しており、古瀬教授の言うように、ワクチンの成果と見ることができる。ただし外出自粛などの効果も含まれるかもしれない。
しかし、オミクロン変異株が22年始めから広がると、ワクチンの効果は一気に落ちて( Andrews NEJM 386:1532)、感染拡大に抑えが効かなくなった。 当院でも、22年1月にファイザー3回目を6人に打ったが、そのうち1名から聞いた話で、1ヶ月後にコロナにかかったとのこと。もうワクチンはやめようと思った。 以降、ワクチンが抑制した死者数をはるかに上まわる死者が発生し、23年春には、一気に終息に至った。
終息の原因は感染拡大で自然感染抗体保持者が増えて、本物の強力なコロナ集団免疫が形成されたためと考えてよいだろう。自然感染抗体は感染防御率も効果持続期間もワクチン抗体をはるかに上回る。(Swartz J Infect Dis. 2023, Tu. J Immunol. 2022)
図 コロナ感染が行き渡るまで、感染拡大が続く

図 大部分の人がすでにコロナ感染したーー2024年中に飽和

図 コロナ感染後の自然抗体保有率

図 ワクチン抗体 vs 自然感染抗体
ワクチン抗体の保持は3ヶ月だが、自然抗体は1年以上保持される。

図 自然感染後の感染防御率

RNAワクチンは、原料となるウイルス抗原を人の体内で生産させる特徴により、大量供給が可能となった点で革命的とされたが、仕事を休まなくてはいけないほど、発熱したり、直後に死亡するなどの副作用が強いわりに、効果の持続は3ヶ月程度とインフルワクチンと同等であった。( Andrews. NEJM. 2022 Apr 21;386:1532)
脂肪ナノ粒子を注射すると、全身を巡って、心臓や脳へ到達することは、コロナ前から動物実験で知られていたし、(Guimaraes 2019)
実際ヒトの皮膚深層から、ワクチン由来のスパイク蛋白が検出されたとの報告もある。(Yamamoto 2022)
RNAワクチンは、変異株に対抗して、すぐコードを書き換えて新製品を投入できるが、変異の速度は数年でヒトがチンパンジーに変わるほど早く(Choi NEJM 2020 383:2291)、追いつかなかった。 ワクチンが変異株の進化を加速させた可能性もあると思う。
細胞性免疫ができるから効果が長く続くと広告されたが、実際、長くつづかないということは、十分な細胞性免疫ができないということだ。 また「感染防御力を失っても死亡抑制効果は残る」という広告は、実際のデータを見る限り、死亡抑制率は感染防御率よりも控えめだったから(死亡抑制率7割に対し、感染防御率9割。Dagan NEJM 2021 Apr 15;384:1412)、科学的根拠が希薄な 眉つばものだったと思う。
図 ワクチン効果は、週を追って減衰

さらに3回目のワクチンの効果についての報告が(Arbel NEJM 2021;385:2413)、不適切な対照群の設定によるものであったことが23年夏に明らかにされた。(Hoeg NEJM 2023 Jul 20;389:284-285)
「ワクチン3回目で死亡を9割抑制」という広告の根拠となったようだが、 接種群は主に地域住民、 対照群は主に入院中でワクチン機会を逃した病弱者で、コロナ以外の死亡率についても、対照群では20倍も 高かった。これでは、ワクチンの効果だけを取り出して比較することなどできない。
だから RNAワクチンは、次のパンデミックでは、使うべきではないと思う。 学術報告は、もっと慎重に検討するべきで、たとえば、ワクチン効果の発表が3ヶ月分しかないなら、その後は、あえて見せていないなどと疑ってかかるべきだった。緊急事態の速報だから、あるいは、対照群にも早くワクチンする「人道的配慮」、などと善意で解釈してはいけない。 製薬会社「性善説」には異議がある。コロナ前より米国製薬業界は、年間20兆円もの宣伝・1000億円もの医師への利益供与費を投入している。(Podolsky NEJM 2019 380:1785)
グーグルの検索結果を動かすくらい、赤児の腕をひねるような事に違いない。 臨床試験を国が主導する体制の確立こそが真の「ミスインフォーメーション」対策となるのではないか?
「3回目」と聞いて、だまされたと感じた国民の方が、御用学者たちより賢かったと思う。 当院も、Arbel らの報告を信じ(NEJM 2021;385:2413)、
3回目ワクチンの準備をいそいそと進めていたのだが、マスコミが「死亡9割抑制」と喧伝しはじめるまで、まったく予約が入らず中止しようと思ったくらいだ。
スウェーデンの方針がやはり正しかったのではないか?(下図参照 COVID-19 EMC Lancet. 2022)
パンデミックは、数年以内に全員が感染するのだから、そのことを皆がわきまえて、速やかに乗り越えれば、もっと損害を減らせたと思う。 おそらく多くの人が身の回りに経験した不幸の数々もなかったと思う。 パンデミックにおいて、「人に染したくない」のレトリックは、「自分は最後までかかりたくない」と同義だ。 そうではなく、「持ち場を守って、早く済ませる」であってほしい。 さいわいなことに、無症状者の割合が高くないと、パンデミックは成立しないという自然法則がある。(Munster NEJM 2020)
アメリカでは25年3月、国立衛生研究所長に、反ロックダウンの「バリントン宣言」を主催したバッタチャリア医師が就任した。(Newsweek Nov 27, 2024, Great Barrington Declaration) 日本も、早くけじめをつけてほしい。
「自粛と補償」で大量の紙幣を増刷したことが、今の円安や物価高などの原因ではないか? 左も右も政治家たちは口をつぐんで、参院戦を乗り切ろうとしているように感じる。
今日も猛暑の中、産直ショッピングセンターでマスクをしたままのおばあさんが救急車で搬送された。
図 スウェーデンのような緩いコロナ対策も、悪くなかった。

図 ワクチン後のコロナ感染は、自然抗体が陽性になりにくい
却って感染終息を遅らせた可能性も

日本語資料、利用データ;
高知新聞2025/6/20 (オンライン6.19 )
接種遅れればコロナ死者2万人増 21年、東京大推計
www.kochinews.co.jp/article/detail/874678
厚労省 コロナ自然抗体保有率調査 献血調査、住民調査 などより
見つからないものは国会図書館で検索可能
https://warp.da.ndl.go.jp/
000640287.pdf 000734482.pdf
000934787.pdf 001146458.pdf
厚労省 コロナ死者数 全数把握データ(2023年春アクセス)https://covid19.mhlw.go.jp/
引用文献;
Andrews. NEJM. 2022 Apr 21;386:1532
ワクチン効果は、週を追って減衰。3回接種後3ヶ月で防御率50%を下回る
3万人以上のデータによる。 発症予防効果をtest-negative design(診断陰性例コントロール試験)で推定
Arbel et al. BNT162b2 Vaccine Booster and Mortality Due to Covid-19. N Engl J Med. 2021 Dec 23;385(26):2413-2420.
コロナ3度目接種(ブースター)の臨床試験
コメント:対照群の設定にトリック。接種群は地域で生活する住民が主体で、非接種群は入院中など接種を受けられない事情をかかえた人たちが主体
Choi et al. Persistence and Evolution of SARS-CoV-2 in an Immunocompromised Host. N Engl J Med 2020; 383:2291-2293
新型コロナの遺伝子は、同一人に長期感染中、2ヶ月で10か所(10/30000=0.03%)のペースで変異した。 つまり、5年で1%の違いが出る変異の早さ。 5年すると、ヒトとチンパンジーほどの違いが、遺伝子に出ることになる。
COVID-19 Excess Mortality Collaborators. Estimating excess mortality due to the COVID-19 pandemic: a systematic analysis of COVID-19-related mortality, 2020-21. Lancet. 2022 Apr 16;399(10334):1513-1536.
Dagan et al. BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting. N Engl J Med. 2021 Apr 15;384:1412
ファイザーワクチンがコロナ死亡を1/3へ抑制
院長コメント: 新型コロナと診断された、死亡数しか公表されていない。 厳密に死亡抑制効果が本物かどうか評価するためには、新型コロナと関係ないと診断された死亡の数も必要。 例えば、ワクチンには上気道のウイルスを駆逐する能力しかなく、PCR偽陰性を増やしているだけかもしれない。 今後のデータ公表に期待したい。
Furuse and Tabuchi. Impact of COVID-19 vaccination by implementation timing and coverage rate in relation to misinformation prevalence in Japan. Vaccine. 2025 Jun 20:59:127273. PMID: 40398323
コロナの前半期のシミュレーション。ワクチン有効性は、後ろ向き研究、 症例対照研究のデータを利用。 ファイザーワクチンが9割以上の死亡抑制効果があったとの前提でシミュレーション。
コメント:ワクチンによる死亡抑制効果の検討は、コロナの前半期に限定されている。
ファイザーワクチンが9割以上の死亡抑制効果があったとするのは、Dagan et al. NEJM. 2021 Apr 15の生データで示された7割の死亡抑制率と比較すると膨らませすぎと感じる。古瀬氏が引用している文献(Vokó et al. Front Immunol 2022 Jul 22, Article 919408)によれば、 中国、ロシアワクチンもファイザーに劣らず有効という。
Great Barrington Declaration
https://gbdeclaration.org/
健康な若者は早く自然免疫を作って、高齢者の周りを固めるなどのアイデアで、ロックダウンに反対の立場を表明。主催した3人の1人、Bhattacharya医師(インド出身)が2025年3月、NIH所長に就任。
コメント:宣言に賛同した医師5万筆のなかに、院長の1筆も含まれる。
Guimaraes et al. Ionizable lipid nanoparticles encapsulating barcoded mRNA for accelerated in vivo delivery screening. J Control Release. 2019 Dec 28; 316: 404–417. PMID: 31678653
マウスに静脈注射したナノ粒子は主に、肝臓と脾臓に吸収されたが、ナノ粒子の脂質の割合が大きいと、心臓や脳へ到達しやすいことが示唆された。 ナノ粒子に乗せた蛍光タンパクや、バーコードRNAの発現が観察された。
ナノ粒子はエタノールに溶かした脂質と、クエン酸バッファーに溶かしたRNAから、液滴生成装置を用いて作成する。 様々な大きさと形のナノ粒子が出来るので、クロマトグラフィーで精製する。
コメント: ジェネリックや類似品が登場した場合、ナノ粒子の構成を完全に真似しないと、予期せぬ副反応をおこす可能性がある。
Hoeg et al. N Engl J Med. 2023 Jul 20;389(3):284-285.
ファイザーによる、コロナ3度目接種(ブースター)の臨床試験の「健康バイアス」
コロナ3度目接種(ブースター)の臨床試験 (Arbel N Engl J Med 2021;385:2413-20.)
接種群は地域で生活する住民が主体で、非接種群は入院中など接種を受けられない事情をかかえた人たちが主体だった。臨床試験では、この2群を比較し、非接種群のコロナ死亡率は、10倍と発表したが、コロナ以外の死亡率も、非接種群は20倍高かった。
コメント: コロナ3度目接種当時、死亡9割減と、大々的に宣伝されたが、以上のような、「健康バイアス」のある研究が根拠だった。
Munster et al. A Novel Coronavirus Emerging in China - Key Questions for Impact Assessment. N Engl J Med. 2020 Feb 20;382(8):692-694.
Newsweek Nov 27, 2024 What Jay Bhattacharya, Trump's NIH Pick, Has Said About Anthony Fauci
https://www.newsweek.com/jay-bhattacharya-trump-nih-pick-view-anthony-fauci-covid-pandemic-1992228
国立衛生研究所長を40年務めたファウチ (医学書の世界標準「ハリソン内科学」の筆頭著者) の後任に、反ロックダウンの「バリントン宣言」を主催したバッタチャリア医師が着任。元スタンフォード大教授。
コメント:貧富の差に起因する健康問題についての論文を多数執筆。
Podolsky et al. Preying on Prescribers (and Their Patients) - Pharmaceutical Marketing, Iatrogenic Epidemics, and the Sackler Legacy. N Engl J Med. 2019 May 9;380(19):1785-1787.
ファイザーにとって、医師は「カモ」?(Easy Prey)
ファイザーの元すご腕の営業マン・医師が作った会社が、米国で麻薬処方依存の大流行を引き起こした。米国において製薬会社の営業費は年間20兆円を越えて、うち1000億円は医師に直接支払われている。
Swartz et al. Antibody Duration After Infection From SARS-CoV-2 in the Texas Coronavirus Antibody Response Survey. J Infect Dis. 2023 Jan 15; 227(2): 193
自然抗体を、500日以上保持する人もいる。無症状感染でも抗体持続期間は同等
Tu. J Immunol. 2022; 208: 819
ワクチン抗体の保持期間、10人分のデータ
Vokó et al. Effectiveness and waning of protection with different SARS-CoV-2 primary and booster vaccines during the Delta pandemic wave in 2021 in Hungary. Front Immunol (13) (2022 Jul 22), Article 919408
コメント:デルタ期 中国、ロシアワクチンもファイザーに劣らず有効と試算
Yamamoto et al. Persistent varicella zoster virus infection following mRNA COVID-19 vaccination was associated with the presence of encoded spike protein in the lesion . J Cutan Immunol Allergy. 2022;00:1–6. DOI: 10.1002/cia2.12278 PMC9537775
ワクチン後16日の皮膚のケラチノサイトや血管内皮細胞からコロナスパイク蛋白を検出