ソムタム学級通信 ★さちえのタイ生活★

2010年6月より青年海外協力隊、養護隊員としてタイへ。バンコクより北へ450キロ東北部のコンケンで日々試行錯誤の記録。

他人には見えて 自分には見えないもの  「虹の足」

2011年07月07日 23時44分09秒 | 日記

最後の授業で生徒たちに紹介した詩。

大好きな吉野弘さんの詩。




  「虹の足」   
         吉野弘

   雨があがって
   雲間から
   乾麺(かんめん)みたいに真直な
   陽射しがたくさん地上に刺さり
   行手に榛名山(はるなさん)が見えたころ
   山路を登るバスの中で見たのだ、虹の足を。
   眼下にひろがる 田圃(たんぼ)の上に
   虹がそっと足を下ろしたのを!
   野面にすらりと足を置いて
   虹のアーチが軽やかに
   すっくと空に立ったのを!

   その虹の足の底に
   小さな村といくつかの家が
   すっぽり抱かれて染められていたのだ。
   それなのに
   家から飛び出して虹の足にさわろうとする人影は見えない。
   ――おーい、君の家が虹の中にあるぞォ
   乗客たちは頬(ほほ)を火照(ほて)らせ
   野面(のづら)に立った虹の足に見とれた。
  
   多分、あれはバスの中の僕らには見えて
   村の人々には見えないのだ。

   そんなこともあるのだろう
   他人には見えて
   自分には見えない幸福の中で
   格別驚きもせず
   幸福に生きていることが――。






 考えさせられることがたくさんある詩で、
 もう10年以上、私の部屋にはこの詩を飾っている。

 私たち皆、虹の足の中にいるのだと思う。
 虹の中にいる者は、自分が虹の中にいることに気づかない。
 幸福の中にいるのに、気づいていない私たち。
 どんなに恵まれた世界にいるか。
 朝起きて、目覚ましを止めて ご飯を食べて。
 体が動くことの幸せ、家族がいることの幸せ、今生きているという幸せ。
 命を脅かされることもなく、当たり前のように学校や仕事に行き、
 不満を言いながら生活する。
 他人(他国かも)には見えて、自分には見えない幸せの中で、格別驚くこともなく
 もしかしたら気づくこともなく、 幸福に生きている。



       
      パラオ カープ島で見た ふたつの虹

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