首領の自白調書

「すべて私がやりました…」ついに落ちた!首領がその重い口を開き、切々と己の罪業を語り出した。時に激しく、時に切なげに。

♪う~翼の折れたエンジェ~ル♪

2006-12-22 23:43:00 | ……
何気にBSを見ていたら中村あゆみが出てきた。
怖ろしいことに同級生である。
とはいっても、同じ学校に通っていた訳ではない。
単に同じ年というだけの話だが。

回想は高校卒業前まで遡る。
高校3年生の三学期は一月下旬に試験を終えれば、
卒業式までひと月ぐらい休みになる。
俺の母校は県下でも有数のアホ学校だったので、
進学する奴など皆無でみんな就職してしまう。
なので、みんな就職前のバカンスを競うように楽しんでいた。
特に車を買ってもらった奴などはドライブ三昧の深夜徘徊三昧だ。
俺はというと、
誕生日が遅いので卒業後にしか車の免許を取得ず、歯痒い思いをしていた。
だから、近所に住むSの車の助手席に乗っかり深夜徘徊をしていた。
その時だった。
Sのカーステからパンチのある曲、それにハスキーな歌声が流れた。
すかさず俺は聞いた。

 「これ誰?」
 「中村あゆみ、結構ええやろ」
 「おお、ええやんけ!このテープ、くれ」
 「は?」
 「くれや」
 「自分で借りて来て録音せえ」
 「ワレ、誰にモノ言うてるんじゃい!(拳)」

そんな調子で
中村あゆみのデビューアルバム『ミッドナイト・キッズ』を手中に収めた。
毎日毎日、家のラジカセで聴いた。
ある日、
テレビから聞き覚えのある声が聴こえた。
カップヌードルのCMだった。

 ♪う~翼の折れたエンジェ~ル、あ~いつも~ぉ~
    翼の折れたエンジェ~ル、みんな飛べないエ~ンジェ~ル♪

何だか切ない歌詞がたまらなくいい。
文句なしに『翼の折れたエンジェル』は大ヒットし、
中村あゆみの代名詞になった。
それは、めでたく免許を取得した俺の車の中にも常備されるのであった。
おまけに、仲間の誰の車に乗ってもあの歌はかかっていた。
まるで、俺たちの18歳の夏のテーマソングのようでもあった。

楽しかったこと、
哀しかったこと、
嬉しかったこと、
ムカついたこと、

あの歌を聴くと思い出す。
大人になりきれなかった俺たちのひと夏の宴。
俺たちはは多くのものを傷つけ、そして、多くのものに傷つけられた。
しかしそれは、大人になるためには通らなければならない道だった。
いつか、あの頃のことを書こうと思っている。
構想は十年ぐらい前から練っているのだが…。
もちろんテーマソングは『翼の折れたエンジェル』だ。

で、話は現代に戻り、久々に中村あゆみを見た。
何だか雰囲気が変わった。
まぁ40だからね、仕方ないのはわかってるんだ。
彼女も結婚・離婚を経験し、一児の母になり変わらない方がおかしい。

けど…、
けどね!

最初、あの歌を歌われたら泣いちゃうかもと思ったのだが、
違う意味で泣いちゃいそうになった。

やはり歳には勝てぬ。
昔のパンチはどこへやら。
頑張って声張り上げようという気持ちは伝わってくるが、
肝心の声がついていっていない。
それでいて引きつったような妙な笑顔が余計に哀しさを誘う。

幻滅だ。

頼むから、もう歌わないでくれ。
俺たちの18の夏を壊さないでくれ。