何もしていないせいか、お金だけはよく貯まる。ここ近年ではたまにお金が入った日など朝のファミレスでモーニングをいただいたりもして時間をつぶしているのだ。
ここ杉並、ちょうど通勤経路には「吉牛」「マック」など呈の良いファウストフード店などいっさいなく「○ナサン」「○ニーズ」が二件向こう側とこっち側にあるのみで、朝通勤時小腹が空いたときなどちょっと困る、
そこで、貯まったお金にものをいわせ「○ニーズ」へ、よく地方の街中から少しでも外れると、この手のお店しか無くよく利用はするのでちょっとした旅気分の錯覚をおぼえる
そこで。モーニングと洒落込んでみるのだが「○ニーズへようこそ～」と現れたのは可愛い地方の少女ではなく、一見して60は超えている「おかあさん」であった
まぁ、さすがに朝六時そんな時間に働いている子はいないかとは思うのだがせめておねぇさんでいてほしかった
「どうします？モーニング。目玉焼きと納豆にします？」
と、あっさり注文を取るといそいそと中へ入りあっというまにでてきた、なぜか頼んでもいないのにライスは大盛りになっている。
面白いので次の月もそのまた次の月もお金が入ったらそこへ行ってみると
「いつものでいい？」、と来店三度目にして「いつもの」、が決まってしまった。「ライスは大盛りなんですか？」と聞くと「大盛りは無料ですから」にこやかに応えてくれた
そんな折お客は空いているのかと言えば、これまた「いつもの」客が奥の席を陣取っている、隣のタクシー会社のメンバーなのであろう「昨日は高尾まで行っちゃったよ」「新宿往復楽勝楽勝」「今日は非番だから」「非番にも来るの？ひまだねぇ～」等の会話が飛ぶ。しかも次々とやってきて僕が食べ終わる頃には十人近くにふくれあがる。
まだ、朝六時半
そのすべての「いつもの」注文を全て把握「目玉焼きにケチャップ、お新香」「焼きジャケに納豆、コーヒー」先出も含めて見事にさばき、昨夜の仕事の笑い話が続く「いつもの朝」が過ぎていく
会計を済ますと「コーヒー飲んでく？まだ時間あるんでしょ」と言われ遅刻しそうになったりもした
そうこうしてすっかり僕も「いつもの」朝の顔となった折、「今度夏休み頂こうかと思っているのよ」と彼女が言い出した、考えてみるとあれからこの時間このお店では彼女意外他の店員さんを見た事が無い
「あ～。ちょっとは休んだ方が良いよ」「毎朝むさい顔見なくて済むもんな」「お土産待ってま～す」と、いつもの冗談が飛んだ
それから二三日してまたふらっと立ち寄ると、彼女はもう休みなのか若い店長らしき人がやってきて「ようこそ○ニーズへ」と久々に声をかけられた「ご注文お決まりになりましたらお呼びください」と早々に立ち去るので呼び返し、あらためて注文。間違いなく出てきたライスは並盛りだった。
食べ終わるとこれまた早々に「お皿お下げして宜しいでしょうか」とやってきた。「いつもの」席には誰もいない。
会計を済ませて表に出ると「○ニーズ杉並店は今月を持って閉店いたします。長い間有難うございました」
と、張り紙がしてあった