腹当ての寝姿同じ父子かな
熱帯夜冷酒を飲みて睡魔呼ぶ
年を経てまだ腹当ての恋しかい
残業の人影写る熱帯夜
大ひまわり二階に上がり花を見る
熱帯夜枕を抱きてさまよへり
ひまわりの種香ばしき祝ひ菓子
屋上で乾杯続く熱帯夜
古りし窓ゼラニュウム置き客を待つ
朝焼けや漁師半纏干す女
白玉や離乳食にと小さめに
指後のつきし白玉初習い
スペインの窓みな赤きゼラニュウム
丹精の鷺草今年婆が持つ
舘涼しガレ展の灯りけだるげに
蝉しぐれ未使用の補聴器みつけ
菩提寺の古池隠す竹落ち葉
真昼の陽に負けじと一花羊草
猫とても病は同じ酷暑かな
雨滴とげを隠すや夏薊
葉桜に芥残すや雨後の川
露涼し宮司寡黙に絵馬揃え
凌霄花電柱登り線路まで
峠道灼けし地蔵と水分けし
六尺の寝茣蓙短き里帰り
夕端居静消し築地今はなく
松坂踊り習ひて宿の貸し浴衣
冥暗に天走り去るはたた神
滴りを迷子に飲ませ母を待つ