日本電産株式会社 http://www.nidec.com/ja-JP/ の代表取締役社長の永守重信氏は、一代で日本電産をコンピュータのHDDを駆動させるスピンドルモーターの製造にかけては世界シェア70%を誇る巨大企業に育てあげた。常に前向きで積極的な考え方を説く、突出した独自の経営哲学の持ち主としても知られる。1944年京都府生まれ。
職業訓練大学校を卒業した永守重信氏は、1973年に日本電産株式会社を設立した。氏は海外に活路を求め,単身アメリカに渡り、大口取引先を開拓した。アメリカに続いてアジア、ヨーロッパへも販路を広げた。
永守氏は、また経営再建の名手としても知られる。不振にあえぐ企業20社以上の再建を手掛け、それらすべての再生を果たしている。
◆加点主義の風土がやる気を生み出す
人間はしばしば失敗をする。会社経営はこれを前提にしなければ、社員のやる気やチャレンジ意欲を喪失させてしまうことになる。たとえば、幹部社員が提案を行って積極果敢に新しい事業に取。組んだ。だが、周囲の状況、環境も芳しくなく結果的に事業に失敗し、会社も少なからず損害を受けてしまったとしよう。このとき、この幹部社員に対する評価のやり方は大きく二つに分かれる。
一つは、失敗を汚点だととらえてマイナス評価、すなわち減俸や降格を行うことによって幹部社員の責任を徹底的に追及するやり方。
もう一つは、新規事業を提案したこと、そして先頭に立って新規事業に取り組んでいった積極性の二点をプラス評価し、事業の失敗については多少の叱責はあっても、お褒めは一切なし。それよりも事業に失敗した原因をすみやかに究明し、教訓として残す。失敗した幹部社員には、会社に貴重な教訓をもたらした功績を認めて、再チャレンジする権利を与える。
前者は減点主義、後者は加点主義と呼ばれているが、もちろんわが社の場合は後者。それも徹底した加点主義を貫いている。評価はまずゼロからスタートし、わが社の三大精神に則って仕事に取り組んだり、行動したときにプラス評価が行われる。何もしない、いわれたこと以外はやらないのであれば、評価はいつまで経ってもゼロのまま。そして、二度カウントされた得点を減点することはない。減点主義をとれば、何もしない社員や、いわれたこと以外はやらないという社員の方が、積極的に仕事に取り組んで失敗した社員よりも、はるかに高い評価になる。これほど理不尽なことはない。
また、減点主義を採用している企業の多くが、「いい出した者が損をする」体質になっているケースが多い。どういうことかといえば、部下が前向きな提案を行ったとすると、上司は賛成するが費任はかぶ。たくないからフォローなどはしない。そして、成功すれば手柄は上司が独り占めし、失敗すれば部下は責任だけを押しっけられる。こうなるのは上司に個人的な問題があるというよりも、システムそのものに欠陥があるからだ。
こんな風土のなかでは、頑張って新しいものをつくり出そうとか、みんなで協力しあってもっと大きな目標にチャレンジしようといった雰囲気は生まれてこない。それどころか、水面下での足の引っ張。合いが横行するだけだ。システムの不備、これこそ経営者の重大な責任問題であろう。
* 『 「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる 』 永守重信 三笠書房
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