月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『紙屋悦子の青春』@名演小劇場・9/9

2006-09-16 02:54:36 | Movie
劇作家・松田正隆氏が、自分の母親の実話を基に書き上げた戯曲を黒木和雄監督が映画化。4月12日に急逝された黒木監督の遺作となりました。

チラシクリックで公式サイトへ飛びます。興味のある方はどぞ。


ハリウッド映画のような、あるいはプロトタイプの日本の戦争映画のようなドラマチックなシーンはひとつもありません。戦闘シーン、爆撃シーンもまったくなし。
戦時下の九州の片田舎の日常を、一軒の民家の中だけで淡々と描いています。
音楽は冒頭とエンディングのみ。
静かな静かな映画なのに、観終わった後には痛切な非戦メッセージが胸に残りました。

家族の食事の団欒シーンやお見合いの席でのぎごちなくもどかしい空気のシーンなどは、暢気でコミカルな雰囲気に溢れていて、前半部分だけ観たらコメディだと思ってしまうかも。
悦子(原田知世)とのお見合いの場で堅くなった永与少尉(永瀬正敏)の様子に暖かい笑いが何度も起こりました。

久しぶりに夫(小林薫)が勤労動員先の熊本から帰った日の、妻ふさ(本上まなみ)の表情が秀逸です。
いつものもんぺでなくグリーンのワンピースを着て、赤飯を炊き、人づてに「空襲よけになる」と聞いたらっきょうを添えて待つ。こんな微笑ましい想いが、ちょっとした行き違いになって夫婦になる。といっても、他愛のないかわいらしいもんだけど

純朴で控えめで激しく感情を露にすることのない悦子。
おそらく生きて再び会うことのない愛する明石少尉(松岡俊介)との別れの時でさえ、こみ上げるものを押さえて涙がこぼれるのを必死で堪える。
そんな彼女が静かに明石少尉を見送った後、台所でひとり、別人のように号泣。
これだけで、充分ですね。
「君死にたまふことなかれ」と言えなかったこの時代の女性の叫びです。

「女というものはみな戦争がきらいなのです」与謝野晶子



もともと戯曲だけあって、殆どが室内の長回しのシーン。
しかも長台詞や丁々発止な遣り取りがあるわけではなく、ちょっとした表情や仕草や間で表現する場面が多くて、下手なひとじゃぜーーったいムリ
でもさすがにみな実力派で、俳優は全員よかったですねー。
本上まなみが以外に上手くて(失礼)正直びっくり

知世ちゃんは、おそらく20代前半くらいの役なんだけど全然違和感ないねえ。
たしか同世代、と思ったら同い年。信じられん


私が観た日は、丁度レディスデーで1,000円(チケ代払うときに知った
でも、この映画は1,800円払っても払い損ということはないと思いました
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