別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

桐の花とカステラ

2005-05-03 | 別所沼だより

 あわい紫と黄色、よく似合う。すきな取り合わせだ。この配色でおしゃれしたいとおもっている。襲の色目では表に黄、裏に浅葱をあわせて「青枯(あおがれ)」というそうだ。白秋は桐の花のいろとカステラのいろを、よく調和すると書いている。

 万葉集にもおなじ色がある。
  巻八・1444 高田女王(たかたのおおきみ)の歌
 ☆ 山吹の咲きたる野辺(のへ)のつほすみれ
     この春の雨に盛りなりけり 
すみれの紫と山吹の黄色、春の雨にその色もさえざえと目に沁みる。いろの対比が美しい

白秋のエッセイを読みなおす。
 「桐の花 序文 27.V.10」のなかで、桐の花とカステラの時季と謳いあげ、『桐の花が咲くと、冷めたい吹笛(フルート)の哀音を思い出す。(略)…食卓の上の薄いフラスコの水にちらつく 桐の花の淡紫色と、その曖昧のある新しい黄色さとがよく調和して、晩春と初夏とのやはらかい気息のアレンヂメントをしみじみと感ぜしめる。』

 白秋は、この時季のカステラは妙に粉っぽく見えてくる、と言っている。それを曖昧な黄色と表現したと思う。今日とおなじ、爽やかな陽がふりそそぐテーブルのうえ、フラスコの水にきらめきこぼれる桐の花の淡い紫色と、皿のカステラ。なつかしさがこみあげる風景。
春から夏への移ろいのとき、桐の花に会いたい。

 別所への道すがら町中にはもうない、とあきらめつつ上ばかり見てあるく。近所では持てあましたご主人が切ってしまったし、公民館の前のもなくなった。2本とも南側にあったせいか大きくじゃまになったのだ。

 高台の校庭に、とおく、たかく、うす藤色がゆれている。腕をひろげた枝先は街路のうえまで伸びていた。なんとしても見上げる場所。風にふかれる花を写した。うまく撮れるか。
 落ちていた花を拾うと、ほそながいラッパのようなかたちで、あまい香りがした。
 
 別所では菜の花と花大根がならんで咲いてたし、タンポポのまわりでオオイヌノフグリが遊んでる。かえり、紫露草とエニシダを発見、どれもこれも桐の花色とカステラの色。
 ほんとによく似合う。
コメント (11)
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