受験生のための『世界史B』 もくじ
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「ホウケンセイ」。
謎めいた言葉です。
高校生時代の僕はこの言葉をまったく理解できず、それこそこの分野に関してはただただ用語を覚え、「おれはちゃんと理解できとる! 大丈夫や!」という自己暗示を自らにかけるしかありませんでした。
ここでは、みなさんを同じ過ちに導かないよう、慎重に解説をしてみたいと思います。
その試みが成功するか失敗するかは知りませんけど。←
[『北斗の拳』みたいな感じです]
「199X年、地球は核の炎に包まれた」
というフレーズをご存知ですか。
かつて一世を風靡した『北斗の拳』というマンガの出だしです。
核戦争を経験した地球は、草木は絶え、町は滅び、あらゆる権威が失墜しています。
殺伐とした世界でモノを言うのは、己の拳と、それをもって手に入れた食料や、それを産む土地のみ。
貨幣なんて何の意味もありません。食えないもん。
力のある者だけが生き残り、弱い人間は次々と淘汰されていく……。
そんな弱肉強食の世界に正義をもたらすため、北斗神拳の正当伝承者、ケンシロウが立ちあがる……!
というのが、『北斗の拳』のストーリーです。
で、この時代のヨーロッパは核戦争こそ経験していないものの、ほぼ同じような状況と考えてもらってOKです。
ローマという大国が滅び、侵入してきたゲルマン人によって土地が蹂躙され、かつて栄えた町は廃墟と化していく世界。
それこそ、当時の人々は「世界の終わり」を目の前で実現されているような気持ちだったでしょう。
しかも、フランク王国ができてようやく落ち着いたと思ったら、以前取り上げたような外敵(イスラームやらアヴァール人やらマジャール人やら)がやってくる、と。
さらには、次々回で取り上げるような海賊たちが海から上陸してきて、それはもうてんてこまいですよ。
そうなったらもう、自分を守るためにはなんだってしますわな。
[御恩と奉公]
実は、誰よりも最初に自分の身の安全を確保しようとしたのは、皇帝や貴族、聖職者たちでした。
彼らには、絶対に失いたくない自分の土地がたくさんあったからです。
かといって、それらの土地を守ろうと外敵に対して自ら出陣していったら……
自分が死んじゃうかもしれないじゃん!
元も子もないじゃん!
ということになります。
では、どうするか。
簡単な話で、誰かに守ってもらえばいいんですよね。
もちろん、タダで守ってもらおうなんてのは虫がよすぎる。
そこで、彼らは自分を守ってくれる勇敢な人間たちに領地(封土)を与えます。
一方、領地を与えられた人々は与えてくれる者に忠誠を誓い、軍事的な奉仕を約束するわけです。
ここに至って、領地を与える者は主君、彼らを守る者は家臣という関係になります。
これが、封建的主従関係というやつです。
おっと、この構図、どこかで聞き覚えがありませんか?
そうです、これは小学校や中学校で習ったであろう、日本は鎌倉幕府の「御恩と奉公」と同じなのです。
鎌倉幕府の成立は12世紀ですから、西ヨーロッパではそれよりも400年近く前に封建制が成立していたことになりますね。
西ヨーロッパでは、主君と家臣は相互に契約を果たす双務的契約を担っていましたが、主君が契約に違反した場合は家臣は服従を拒否することができ、しかも、主君はひとりでなければならないというルールもありませんでした。
日本とは、やや事情がちがうようですね。
なお、封建的主従関係はローマの恩貸地制度とゲルマンの従士制に起源がある、ということが何故かセンター頻出です。
[荘園]
封建的主従関係のもとにある主君や家臣は、全員が領地をもっていますので、彼らはみな領主ということになります。
そして、それぞれの領主が治める土地のことを、荘園というんですね。
そこでは、農民は農奴とされ、移動の自由がありませんでした。つまり、生まれてから死ぬまで荘園から出られない、鶏小屋の鶏、ということですね。
おまけに、彼らは鶏が卵を産むように、多額の税を領主に納める義務を負っていました。
その内容は現代からはおよそ想像し難い内容で、
畑耕したら 金払え
結婚したら 金払え
さらには、
死んだら 金払え
という、トンデモない税のシステムでした。
荘園は
領主サマが直接もっている私有地(直営地)と、農奴に(一応)分け与えられた土地、そして農奴がみんなで使う共同利用地から成り立っていたのですが、
農奴が払う税の中身は、
荘園の中の領主の直営地で労働する賦役(ふえき)
自分の保有地から生産物(小麦とか)を納める貢納(こうのう)
という2つでした。
[国王とは名ばかりで]
前回、フランク王国はカペー朝の国王は権限が弱い、という話をしたのを覚えていますか。
それもそのはず、この時代の国王というのは基本的には「どこにでもいるただの領主」という存在のワクを越えず、それぞれの荘園領主は国王の役人が自分の荘園に立ちいることを拒む不輸不入権(ふゆふにゅうけん: かわいい)をもっていたんですね。
これから先、西ヨーロッパの王の権力はずっと弱いままなのでしょうか?
それとも、何かをきっかけとして拡大していくのでしょうか?
いずれにしろ、どうやら、いわゆる封建社会とは、次の2つで表すことができそうです。
① 荘園、という経済的な基盤
② その荘園を守る封建的主従関係
これが、実に1000年に渡るヨーロッパ中世を特徴づける社会システムとなります。
◎今日のポイント◎
・封建社会のシステムを「荘園」「封建的主従関係」という語句を使って説明せよ。
・領主が国王の役人の自らの荘園への立ち入りを拒む権利を何というか。
・封建的主従関係は、何と何を起源とするか。
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「ホウケンセイ」。
謎めいた言葉です。
高校生時代の僕はこの言葉をまったく理解できず、それこそこの分野に関してはただただ用語を覚え、「おれはちゃんと理解できとる! 大丈夫や!」という自己暗示を自らにかけるしかありませんでした。
ここでは、みなさんを同じ過ちに導かないよう、慎重に解説をしてみたいと思います。
その試みが成功するか失敗するかは知りませんけど。←
[『北斗の拳』みたいな感じです]
「199X年、地球は核の炎に包まれた」
というフレーズをご存知ですか。
かつて一世を風靡した『北斗の拳』というマンガの出だしです。
核戦争を経験した地球は、草木は絶え、町は滅び、あらゆる権威が失墜しています。
殺伐とした世界でモノを言うのは、己の拳と、それをもって手に入れた食料や、それを産む土地のみ。
貨幣なんて何の意味もありません。食えないもん。
力のある者だけが生き残り、弱い人間は次々と淘汰されていく……。
そんな弱肉強食の世界に正義をもたらすため、北斗神拳の正当伝承者、ケンシロウが立ちあがる……!
というのが、『北斗の拳』のストーリーです。
で、この時代のヨーロッパは核戦争こそ経験していないものの、ほぼ同じような状況と考えてもらってOKです。
ローマという大国が滅び、侵入してきたゲルマン人によって土地が蹂躙され、かつて栄えた町は廃墟と化していく世界。
それこそ、当時の人々は「世界の終わり」を目の前で実現されているような気持ちだったでしょう。
しかも、フランク王国ができてようやく落ち着いたと思ったら、以前取り上げたような外敵(イスラームやらアヴァール人やらマジャール人やら)がやってくる、と。
さらには、次々回で取り上げるような海賊たちが海から上陸してきて、それはもうてんてこまいですよ。
そうなったらもう、自分を守るためにはなんだってしますわな。
[御恩と奉公]
実は、誰よりも最初に自分の身の安全を確保しようとしたのは、皇帝や貴族、聖職者たちでした。
彼らには、絶対に失いたくない自分の土地がたくさんあったからです。
かといって、それらの土地を守ろうと外敵に対して自ら出陣していったら……
自分が死んじゃうかもしれないじゃん!
元も子もないじゃん!
ということになります。
では、どうするか。
簡単な話で、誰かに守ってもらえばいいんですよね。
もちろん、タダで守ってもらおうなんてのは虫がよすぎる。
そこで、彼らは自分を守ってくれる勇敢な人間たちに領地(封土)を与えます。
一方、領地を与えられた人々は与えてくれる者に忠誠を誓い、軍事的な奉仕を約束するわけです。
ここに至って、領地を与える者は主君、彼らを守る者は家臣という関係になります。
これが、封建的主従関係というやつです。
おっと、この構図、どこかで聞き覚えがありませんか?
そうです、これは小学校や中学校で習ったであろう、日本は鎌倉幕府の「御恩と奉公」と同じなのです。
鎌倉幕府の成立は12世紀ですから、西ヨーロッパではそれよりも400年近く前に封建制が成立していたことになりますね。
西ヨーロッパでは、主君と家臣は相互に契約を果たす双務的契約を担っていましたが、主君が契約に違反した場合は家臣は服従を拒否することができ、しかも、主君はひとりでなければならないというルールもありませんでした。
日本とは、やや事情がちがうようですね。
なお、封建的主従関係はローマの恩貸地制度とゲルマンの従士制に起源がある、ということが何故かセンター頻出です。
[荘園]
封建的主従関係のもとにある主君や家臣は、全員が領地をもっていますので、彼らはみな領主ということになります。
そして、それぞれの領主が治める土地のことを、荘園というんですね。
そこでは、農民は農奴とされ、移動の自由がありませんでした。つまり、生まれてから死ぬまで荘園から出られない、鶏小屋の鶏、ということですね。
おまけに、彼らは鶏が卵を産むように、多額の税を領主に納める義務を負っていました。
その内容は現代からはおよそ想像し難い内容で、
畑耕したら 金払え
結婚したら 金払え
さらには、
死んだら 金払え
という、トンデモない税のシステムでした。
荘園は
領主サマが直接もっている私有地(直営地)と、農奴に(一応)分け与えられた土地、そして農奴がみんなで使う共同利用地から成り立っていたのですが、
農奴が払う税の中身は、
荘園の中の領主の直営地で労働する賦役(ふえき)
自分の保有地から生産物(小麦とか)を納める貢納(こうのう)
という2つでした。
[国王とは名ばかりで]
前回、フランク王国はカペー朝の国王は権限が弱い、という話をしたのを覚えていますか。
それもそのはず、この時代の国王というのは基本的には「どこにでもいるただの領主」という存在のワクを越えず、それぞれの荘園領主は国王の役人が自分の荘園に立ちいることを拒む不輸不入権(ふゆふにゅうけん: かわいい)をもっていたんですね。
これから先、西ヨーロッパの王の権力はずっと弱いままなのでしょうか?
それとも、何かをきっかけとして拡大していくのでしょうか?
いずれにしろ、どうやら、いわゆる封建社会とは、次の2つで表すことができそうです。
① 荘園、という経済的な基盤
② その荘園を守る封建的主従関係
これが、実に1000年に渡るヨーロッパ中世を特徴づける社会システムとなります。
◎今日のポイント◎
・封建社会のシステムを「荘園」「封建的主従関係」という語句を使って説明せよ。
・領主が国王の役人の自らの荘園への立ち入りを拒む権利を何というか。
・封建的主従関係は、何と何を起源とするか。
また受験生やってます;
世界史ももう一度予備校にて授業受けてます。
そういえば、中国の始皇帝の兵馬俑の中にドイツ人が入り込んだ事件があったそうですね。 服とかものすごくそっくりでした。くしゃみをしてばれたようですが・・・笑
片道2時間の通学はさすがにこたえます・・
が、なかなか充実感があってよいですね。こういう言い方は悪いのかもしれないですが・・。
これからもこの世界史ブログ、使わせてください^^
僕の知り合いで、浪人生をやって損した、という声は一度も聞いたことはありません。
むしろ、大学へ入るまでに1年間(もっとかも)のクッションがあることでより豊かな人間になれるのではないでしょうか。
僕も大学4年になってようやく「教科書レベル」の記述を追うだけのこのブログの内容に疑問を呈すことができてきたように思います。
これからもがんばっていきたいです。
いつもありがとうございます。
9日にテストがあり、それに向けて勉強をしております。
できれば、中世ヨーロッパを更新していただくとありがたいです
よろしくお願いします
どうも時間に追われるとやっつけな更新をしがちで、申し訳ないです。
何か疑問点などあれば記事という形ではなくてもコメント欄でお答えしますので、いつでもどうぞ。
「スラヴ人と周民族の自立」
「十字軍とその影響」
この2つを載せて頂きたいです。
お忙しいとは思いますが、よろしくお願い致します。
これからもテストの前に使わせて頂きます!!
いつもありがとうございます!