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映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

舞台『お月さまへようこそ』

2022-07-30 21:25:49 | 演劇・ミュージカル

今日も暑かったですね。
その猛暑の中、パルテノン多摩(多摩センター駅)のリニューアルオープン企画のひとつとして上演された舞台劇『お月さまへようこそ』を観て来ました。
上の画像、タイトル看板は見えるでしょうか。

『お月さまへようこそ』はニューヨーク生まれの劇作家ジョン・パトリック・シャンリィが1982年に発表した作品です。
シャンリィは映画の脚本家としても名高く、『月の輝く夜に』『乙女座殺人事件』『生きてこそ』などで知られていますが、『ダウト』は演劇作品としてトニー賞を受賞、映画化作品もアカデミー賞に各賞でノミネートされました。

『お月さま〜』はシャンリィのデビュー作——ではないらしいのですが、初めて世に認められた作品だということです。翻訳した鈴木小百合さんも、演出および楽曲の訳詞も担った石丸さち子さんもこの作品に惚れ込み、リニューアルに際して少人数の座組で上演できる作品を探していたパルテノン多摩の企画意図とも合致したことで、このたびの公演が実現したということです(パンフレット及びアフタートーク前の栗原館長のお話より)。

構成としては、シャンリィが生まれ育ったニューヨークはブロンクスを舞台に展開する各々20分くらいの7エピソード(実質6エピソード)から成りますが、一貫したストーリーがあるわけでも登場人物が重なるわけでもなく、短編集の趣があります。
好きな人とのコミュニケーションが取れなかったり、孤独だったり、夢が潰えそうだったり、いろいろな不自由さにもがきながら、それでも誰かとどこかで繋がりながら生きている人たちの物語。

その構成含め、初めは少し戸惑う部分もありましたが、観ていくうちに「これって萩尾望都先生の短編に近いのでは?」と気づいて、すとんと腑に落ちました。シリアス、ファンタジー、わちゃわちゃコメディ、やや難解なメタファーなど、様々な技法と設定を用いつつ、「うまくいかない」人たちに優しく寄り添うところが、そう感じさせたのかもしれません。当人にとっては深刻な問題も、他人(観客)から見れば喜劇になるというチャップリンのテーゼも思わせます。
その中で、貧乏詩人とその恋人が象徴的に登場する「どん底」が、全く同じセリフと展開で若老2バージョン作られた(石丸さち子さんのアイデア)のは、これこそが様々な外的要因により奪われかけ貶められようとする「芸術」の矜持、折れた鉛筆しかなくとも表現することをやめない意志を描いたエピソードだからでしょうか。まさに今、この社会状況下だからこそ必要なことであると。

実際、この公演も6人の座組で稽古を重ねながら、初日直前になって出演者の一人である小日向星一さんがコロナウイルス感染により休演することになりました。
5人の俳優さんたちが本役以外も演じ、一場ごとの組み合わせや演出にも変更が生じたそうですが、初日を開ける決断ができたのは、小さいカンパニーゆえの強みだったかもしれません。





6人バージョンのポスターと、実際のキャスティング表です。字が小さくなってしまいましたね。と言うより撮影が下手くそで見づらくなってしまい、申し訳ありません。
皆さんの熱演により、一人欠けたことなど感じさせない舞台となりましたが、いつか「完全版」と言うかリベンジ公演もお願いしたいですね。もちろん小日向さんのご恢復も願っています。いちばん口惜しいのはご本人だと思いますし。

アフタートークは演出の石丸さち子さんと、大空ゆうひさん、南沢奈央さんのお三方で。昨日はメンズキャスト4人と石丸さんのトークが行われたそうです。出演したお二人以上に、さち子さんの情熱とパワフルさに圧倒される思いでした。そう言えばロビーにはミュージカル『北斗の拳』こと『フィスト・オブ・ノーススター』(再演版)のチラシも置いてありました。最近の石丸さち子さん演出として大評判になった作品ですからね。

今日は娘と一緒ではなくひとり観劇でしたが、開演前のまだ暗い舞台に設えられたセットを眺めつつ、これがどう使われるのか、ここでどんなお話が始まるのかと思いを巡らせて待つ時間というのは、実に楽しいものですね。
セットもですが、照明もまた良かったです。「喜びの孤独な衝動」の「池」描写も見事で、「星降る夜に出かけよう」パートの星空など本当に見とれるほど美しかったです。
音楽はほぼ林正樹さんのアップライトピアノ演奏のみ。ご本人の曲もあり既存の名曲あり、即興も交えて、本当にブロンクスの「街角ピアノ」のごとく、登場人物たちに寄り添ってくれました。

実は予約が始まった当初、別の日の予約を取ろうとしてパルテノンのサイトを覗いた時には、座席が殆ど埋まっていなくて、少し心配になったものですが、本日の公演は予約時点で良席はかなり埋まっていて、当日(つまり今日)はほぼ満席でホッとしました。自分の席はたまたま取れた「ド」センターでしたが、なぜか両隣は空席のままでした。おかげでゆったりと観られて良かったと言えば良かったのですが。

パルテノン多摩公式サイトの作品ページはこちら ↓

リニューアルオープン企画『お月さまへようこそ』


RanRanEntertainment から、小日向さん、大久保さん、納谷さん、久保田さん4人へのインタビュー記事も貼っておきます。→こちら

さて、この先は「日記」です。
多摩センターまでは珍しくバスを使って行ったのですが、実はバス停でバスに乗る直前になって、なんと杖を家に忘れて来たことに気づきました!その時まで思い出さなかったくらいだから、実際にはもう杖を持たずともかなり歩けるんだと、少し自信もできました。実際、杖なしで街中を歩くのは、なんだか「自由」な感じがして良い気分です。
しかし不慮の事故ということもあるし、と思い、一応100均で自分に合う長さの150円ステッキを買いました。後になってパルテノン多摩の大ホールに入り、自分の座席までの急斜面(階段)を降りつつ、屋外よりむしろ劇場内でこそ杖が必要なことを改めて思い出したのでした。

観劇前のランチは中華料理店で冷やし中華。前にも書きましたが、近くのファミレスから冷やし中華が消えてしまった(悲しい…)ので、いろいろなお店で冷やし中華を食べ歩こうかと考えています。
夕食はもともと家で作るつもりはなかった(疲れるだろうし)ため、ショッピングセンターで韓国惣菜やチヂミを買いました。その他の食料品店やコンビニでもあれこれ見繕って帰宅。

家に着いたら今日は即シャワーです。本当に暑かった……その後、買って帰ったものを温め直していただきました。こういう日はやはり辛いもの、味が濃いめのものがありがたいですね。
夜のTVはいつも通り【世界ふしぎ発見!】と【新美の巨人たち】。ですが、流しながらこのブログを書いていたため、落ち着いて観られませんでした。

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