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『レ・ミゼラブル』~司教様のいる場所

2013-12-22 23:58:17 | レ・ミゼラブル

昨日公開1周年を迎えた映画『レ・ミゼラブル』。とにかく「泣いた」とおっしゃるかた続出の作品でしたが、その泣きツボは人それぞれ。登場人物の誰に感情移入したか、共感したかでも違って来るだろうし、それとは別にドラマの大きい「うねり」、人間の精神のダイナミズムに圧倒されての涙というのもあると思います。
私自身の泣きポイントも観るたびごとに違っていましたが、それでも毎回必ず泣いてしまったのがエポニーヌ(サマンサ・バークス)の歌う「オン・マイ・オウン」。そしてコルム・ウィルキンソンのミリエル司教登場シーンでした。

御存知の方も多いと思いますが、コルムさんはミュージカル『レ・ミゼラブル』ロンドン初演(1985)及びブロードウェイ初演(1987)のジャン・バルジャンであり、加えて10周年記念コンサート(1995)略称TACの「ドリームキャスト」バルジャンでもありました。更に25周年コンサートのアンコールにもロンドン初演キャストの一人として登場しています。
そのコルムさんが映画のミリエル司教に選ばれたことは、この映画でも最高の神キャスティングであったと思います。
ジャン・バルジャンは確かに聖人として生まれ変わったのだと実感させてくれる人。「ジャン・バルジャン」のすべてを──彼が歩む人生のすべてを知っていて、その遥か先で待っていてくれた人。
ラスト、司教様がお迎えに来てくださって、「誰かを愛することは神様のおそばにいることだ」を歌ってくれるあのシーンでは、毎回毎回涙腺崩壊し、号泣してしまいました。今この文章を書いていても涙が出て来るほどです。
それを受けてのバルジャンの「独白」。このヒュー・ジャックマンの歌唱、入魂の演技も素晴らしいものでした。舞台版も合わせて、このナンバーに於ける新たなスタンダードはヒューが確立したと言っていいと思っています。



原作『レ・ミゼラブル』冒頭のミリエル司教についてのエピソードは「長過ぎる」と言われ、大抵の映画化・映像化作品ではカットされてしまうのですが、ここが書き込まれているからこそジャンの回心にも説得力がもたらされ、またずっと後にアンジョルラスやABCの仲間たちが追い求めることとなる「革命の理想」も、元革命派議員の老人と司教様との会話で既に語られているのです。
新井隆弘先生が『ゲッサン』で連載中のコミカライズでは、ジャン・バルジャンが司教様から貰ったものは「ささやかな」善意や慈愛などではなく、途方もないほど大きく深いものであったことが描かれて感動的ですが、映画に於けるコルムさんとヒューも、「説明」ではなく表情や歌唱などの演技によってそれを表現し得たと思います。それがまたミュージカルの素晴らしい特質です。

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