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凛花の足跡

流れ行く時の中で、ふと止まってもらえたら光栄です。

吾亦紅

2014-08-14 23:40:25 | ブログで奏でる詩
同じ空の未来を見ていたのに
私は他の花と同じに見られない
どんなに強く夢を願っても
愛でられることはなく
違う道を歩んでいる

咲く花の形は違うけれど
誰かを慕う想いは同じ…
紅く紅く咲いています

瞳を閉じれば貴方の姿が
甘く胸に刻まれて
心が苦しくなるから紅く染まるのです

私もまた紅となり
遠くの空に夢を重ね
風に揺られる

郷愁

2013-09-03 10:26:12 | ブログで奏でる詩
本音を言えた
そんな人なかなかいなかった
隔たりを抱えた今も
現れない
愛しい人たち

いや愛おしかった人たち

大人になってから
いくつも壁をつくって
四方に囲まれた中で
聞こえぬ吐息を漏らしたことだろう

行方の知れぬ靄の
重さが息を苦しくする
軽快にリズムを刻んだ頃とは
全く違う世界

故郷が懐かしいように
今もまた想い出すよ
何度映し出しても色褪せない
胸にきざまれたかけら

消える炎

2013-07-21 23:49:30 | ブログで奏でる詩
ヒューパァンと打ち上がる度に
一つ一つ上がる度に
心も徐々に散っていく

もうこれで一緒に見ることもないよね
愛おしい姿と共有する想い出
最後の花火は傍らに
満月が輝く

ありがとう
きっと忘れないよ

花束

2013-03-25 00:14:00 | ブログで奏でる詩
小さな思いやりの言葉
たくさん集めて花束にしていた
それが無理していると気付かずに

弱々しく元気がない花でも
水をあげれば大丈夫と
私があげれば大丈夫と
そう勘違いしていた

それが愛だと思い違えていた

いつかを夢見ていた私は
今はもうここにいない
Everything is mine...
今日も明日も私だけのもの

あなたのものになりたかった
そんな未来も私だけのもの

満月の夜に

2013-02-26 14:08:21 | 短編
 別れの言葉が切りだされた。
 予感が無い訳ではなかった。
 今夜の彼女はいつもより少し陽気で、何かを怖れるように会話を止めどなく流した。
 流行りのカフェに30分も並んだこと。
 妹がお気に入りのスカートを無断で借用した上に、ひっかけて台無しにしたこと。
 最近読んだ本のこと。
 思い立ってランニングのウェアを買いに行ったけれど、まだ始めていないこと。
 お酒の勢いも手伝って、コロコロと笑いながら、普段は話さないような日常の些細なことも語り続けていた。
 そんな陽気な彼女にだんだん違和感を感じ始めた時、ふと笑顔を閉じ、彼女は目を伏せて言った。
 「そろそろお店を出ようか。ちょっと歩きたいな。」
 店を出ると2月の冷たい風が二人を通り抜けた。
 声をかけても曖昧な返事で、それまでの上機嫌が嘘のように、思いつめるような表情でゆっくりと宛てもなく歩いた。
 冬の澄んだ空気と二人の間に訪れた静寂が突き刺さるように心を貫く。
 どれほど経っただろう。
 街の喧騒から少し外れた公園に入り、奥のベンチに座ろうと彼女の瞳が告げた。
 周りには誰も居なかった。
 空には満月が輝き、並んで座る二人を照らしているだけだった。
 彼女は着けていた手袋を外し、徐ろに俺の両手を取り自分の頬と手でそっと包んだ。
 「小さい頃から手が温かかったからね。こんな寒い日は、友達がぬくもりを取りによく手を繋いできたよ。その度に背中に何度も寒さが走ったこと、いまでもよく覚えてる。」
 そう言いながら、彼女の確かに温かな手が俺の冷えた手を温めていた。そして同時にぬくもりを取り戻した俺の手が次第に彼女の冷たい頬を温めた。
 「始めからこうやっていれば、どちらかだけが寒くなることもなかったのにね。」
 「ごめん。」
 咄嗟に出た言葉だった。
 彼女に無理をさせていたのは俺だ。わかっていてどうにも出来なかった、いやそれも言い訳で、どうにもしてこなかったのも俺の責任だった。
 「ずるい。謝らないでよ。」
 「・・・ごめん。」
 大きな目からこぼれた一筋の涙で手が濡れていく。
 しばらくして深く息を吸い込んだ後、手を離して彼女がつぶやいた。
 「もう別れましょう。」
 別れは、彼女から切りだされた。
 嫌だ、別れたくないなどと言える立場ではない。彼女に寂しい思いをさせて、悩ませてきたのは他でもない自分なのだから。
 だけど、彼女に対する気持ちは決して嘘ではない。
 もう少し傍にいてほしい。もう一度やり直せないか。
 身勝手だとわかっている。けれども、彼女だって想いは俺と一緒じゃなかったのか。
 そう問いかけそうになった時、彼女は立ち上がり背を向けたまま言った。

 「月が…綺麗ね。月の明かりは綺麗ね。」

 彼女の声は震えていた。
 全身全霊で語ったその言葉は、ただ愛していると告げていた。
 「もう別れましょう。」
 背を向けたまま、二度繰り返された別れにもう何も抗えなくなっていた。
 「ごめん。ありがとう。」
 それが、最後にようやく言えた言葉だった。
 後ろから彼女をしばらく抱きしめると、その場を去って行った。
 満月の夜に二人の面影だけを残して。
 
 
 
 
 
 
  


ラブソング

2013-01-22 00:44:47 | ブログで奏でる詩
ほんの偶然
あなたの指先と私の指先
一瞬かすめた旋律に
全身が熱くなる

あなたの声が
ドラムとなって
静かだった胸の
ビートを上げてたきつける

目の前がキラキラと
狭く私に迫ってくるよ
包囲網から逃れられず
掠れた声で歌うでしょう

精一杯のラブソング

love

2013-01-22 00:15:37 | ブログで奏でる詩
深い闇に包まれて
手探りで歩んでいた
見えない棘や
霞んだ呼吸に
傷付きながら歩んでいた

そんなとき
すぅっと差し込んだ光
揺らめく中に
確かに輝くあなたの笑顔
ずっと知っている
そんな風に感じた笑顔

いつかまた見失って
夜の街をさまよっても
一度信じた光は
胸の内で生きる
あなたの笑顔は生きる

深い闇に包まれて
手探りで歩んでいた
あなたの笑顔を抱えながら
いつまでも歩んでいた

記憶の包装紙

2012-12-07 13:03:50 | ブログで奏でる詩
静かに時が流れて
いつかの恋を忘れてしまっても
それはただ
記憶をそっと包んだだけで
好きだった気持ちや
傷付いた痛みや
愛おしくてキラキラした時間や
涙のあたたかさは
ずっと胸で生きている
戻れなくても
いつかの恋は生きている

悲しい雨

2012-09-25 17:26:29 | ブログで奏でる詩
揺るがない想いが
貴方を重くさせているのなら
風に乗ってこのまま
何処かへ流れてゆきたい

春の蒼、夏の緑
秋の紅、冬の白
流れ着いた先で
苦しいほど染まってみるよ

いつか形もわからないほど
変わってしまうのでしょう
悲しみだけが昇華できず
歩んだ道を濡らしてゆく

揺るがない想いが
貴方を重くさせている
後に残るのはただ
質量を持った悲しい雨

猫の旅

2012-06-27 00:28:39 | ブログで奏でる詩
幸せは歩いてこない
って小鳥さんに言われてね
だから、自分で探しに出たよ
空を飛ぶことはできないけれど
てくてくと探しに出たよ

普段行かない細い路地も
ちょっと背伸びが必要なところも
遠く遠く離れた場所も
頑張って探してみたよ

初めは何もなかったけれど
よぉく探してみたら
キラキラしたものや
味わったことがないものを
たくさんたくさん見つけたよ

それでも何か足りなくて
どうしてだろうと河辺に座り
涼しげに泳ぐ魚さんに
幸せの場所を訊ねたよ

でもね
幸せは歩いてこない
って、魚さんも言うんだ

ボクはてくてく探したよ
小鳥さんのように飛べないし
魚さんのように泳げない
幸せは雲の上や水の中にあるの?
だったらボクは探せないや…

悲しくて寂しくて
ボクはおうちに戻ろうとした
細い路地も
もう慣れてしまった大人の場所も
振り返らずに戻ろうとした
ただただ懐かしいおうちへ
ボクのおうちへ

だけどあまりに遠くに来すぎて
てくてく、てくてく歩いても
ボクのおうちへは戻れなかった
幸せもおうちも
ボクには探せなかったんだ

枯れた涙の代わりに
降りしきる雨が頬を濡らしたとき
ボクはようやく気付いた
幸せは歩いてくるものではなくて
もうそこに在るものなんだって
探すものではなく気付くものだって

旅の終わりの冷たい夜に
ボクはようやく気付いたよ
幸せもおうちもあの時在ったこと
ボクはやっと気付いたよ