場所は、恵比寿LIQUIDROOM。今年あたまに10年以上ぶりに発売されたアルバム『らんど』のレコ発と銘打たれたものではなく、LIQUIDROOM創設からの何周年記念イベント。MCの内容からZAZEN BOYSの出演は恒例行事らしいことが判った。
猛暑の渋谷を闊歩、駅前で不意に催される大夏祭りの騒音に面食らい、ポケットから落としたスマホを首一面タトゥーの入った若いにーちゃんに拾っていただくなどありつつ、途中ファッションビルへ冷房目当てに逃げ込みながらも、なんとか会場へ到着。
わけあって心身ともに磨耗していたこの巨漢と待ち合わせてくれたのは、映画館バイトで知り合って数年来の仲であるキャパ広やすらぎ後輩女子。細身の彼女にまるで介助される老人のように付き添われゆっくり会場内へ。フェス慣れしている後輩女子、大変頼もしかった。
チケットは完売で当日券なし、遅れて入った場内は観客でぱんぱん。ひと目見て年齢層が幅広いことが分かる。なにくそとさも余裕のある顔を作って、後輩女子を空いているスペースへ誘導。人混みに焦り、緊張でくらくらと目の前が暗くなっていく感覚を覚えていることを必死で隠した。この後輩女子と会うたびに繰り返す悲しき恋愛変遷を聞いている間にバンドは登場した。
向井秀徳の白髪がかっこいい。カシオメンが最近のカシオメンそのままの佇まい。MIYAは沖縄でBleachを見て以来で懐かしい。松下敦の体躯、動きや呼吸の一つひとつが見逃せない。アレンジにアレンジを重ねた現在の「RIFF MAN」から演奏は開始された。
ライブハウスは何年ぶりだ。音圧が、得体の知れない興奮を呼び覚ました。
『らんど』収録曲の徹底した過酷さ、ハードさもあってか、暴れるような観客は一人もいない。みな思い思いに体の軸を揺らして楽しむ。必死で拍子を数えて聴いてるような俺みたいな奴はどれぐらいいたんだろうか。
『らんど』はほぼ全曲披露していたが、俺は「ブルーサンダー」「ブッカツ帰りのハイスクールボーイ」が特に好きで、どちらのプレイも最高だった。既存曲よりも『らんど』楽曲のうねりの方が自然に聴こえる。現在のメンバーのガッとくる感じはこれなのだ。「ポテトサラダ」で鍵盤を弾かない向井秀徳がバンドを文字通り指揮し、会場は笑いとキメの一体感でとんでもないことになっていった。恐ろしい。日本武道館の椅子が小さいことが懸念事項だが、やっぱり記念すべきライブは今後も見に行きたい。
この日は個人的に青春の『ZAZEN BOYS 4』の曲を多めに演奏していたが、4ピースの音以外の機器を用いずにロックのアレンジで披露された「I Don't Wanna Be With You」に皆驚いていた。寂寥感を伴う、電子的な負荷の強い四つ打ちの心地よい曲だったものが、さらにもの寂しさを増して迫ってくるギターが中心の別物に変わっていた。泣きのターンか、まずい!と隣の友人の存在を過剰に気にしながら涙腺を堪える。
大量の人間に囲まれている窮屈さや、その場から消え去りたくなるよう致命的な不安さはもう吹っ飛び、頑張ってここに来れてよかったと本当に思えた。こうして勝手に救われる人が何人もいるはずだ。皆に聴かれるバンド、心の底から羨ましい。
中盤のMCで、懇意にしていた銭湯からの裏切り、そして断絶を表明した抱腹絶倒のおやじトークを繰り広げてくれた向井秀徳、話の中でこれ以上は敵わんという局面になると「心のダンビラを抜いたよね」と口にしていた。腹から笑わされた。
松下敦のドラムは、リーダーの身体性にとことん忠実で、しかしその場の予期できない流れ、広がりをしっかり押さえ付けて自分の元へ回収していく、まるで機械による格闘技を観戦しているような壮絶なスタイルだ。動画の小窓などからは到底伝わらない迫力を実際に体感出来た。最高に楽しかった。
極東ピーコックは3rd Album『匣』を全国リリースし、レコ発をせずに潜伏中。
事情が事情で、空白の期間について自分から何か言うことは憚られるものの、確実に言えることといえば、次のアルバムを制作しているということだ。
デモは半分以上あがっていて、岡田さんの作る曲は、ちゃんと腰を据えて前を向いていると感じられる素晴らしいものになっている。
これもまた、時間をかけて仕上げたい。
生きてるねーお前らと言われるように。
猛暑の渋谷を闊歩、駅前で不意に催される大夏祭りの騒音に面食らい、ポケットから落としたスマホを首一面タトゥーの入った若いにーちゃんに拾っていただくなどありつつ、途中ファッションビルへ冷房目当てに逃げ込みながらも、なんとか会場へ到着。
わけあって心身ともに磨耗していたこの巨漢と待ち合わせてくれたのは、映画館バイトで知り合って数年来の仲であるキャパ広やすらぎ後輩女子。細身の彼女にまるで介助される老人のように付き添われゆっくり会場内へ。フェス慣れしている後輩女子、大変頼もしかった。
チケットは完売で当日券なし、遅れて入った場内は観客でぱんぱん。ひと目見て年齢層が幅広いことが分かる。なにくそとさも余裕のある顔を作って、後輩女子を空いているスペースへ誘導。人混みに焦り、緊張でくらくらと目の前が暗くなっていく感覚を覚えていることを必死で隠した。この後輩女子と会うたびに繰り返す悲しき恋愛変遷を聞いている間にバンドは登場した。
向井秀徳の白髪がかっこいい。カシオメンが最近のカシオメンそのままの佇まい。MIYAは沖縄でBleachを見て以来で懐かしい。松下敦の体躯、動きや呼吸の一つひとつが見逃せない。アレンジにアレンジを重ねた現在の「RIFF MAN」から演奏は開始された。
ライブハウスは何年ぶりだ。音圧が、得体の知れない興奮を呼び覚ました。
『らんど』収録曲の徹底した過酷さ、ハードさもあってか、暴れるような観客は一人もいない。みな思い思いに体の軸を揺らして楽しむ。必死で拍子を数えて聴いてるような俺みたいな奴はどれぐらいいたんだろうか。
『らんど』はほぼ全曲披露していたが、俺は「ブルーサンダー」「ブッカツ帰りのハイスクールボーイ」が特に好きで、どちらのプレイも最高だった。既存曲よりも『らんど』楽曲のうねりの方が自然に聴こえる。現在のメンバーのガッとくる感じはこれなのだ。「ポテトサラダ」で鍵盤を弾かない向井秀徳がバンドを文字通り指揮し、会場は笑いとキメの一体感でとんでもないことになっていった。恐ろしい。日本武道館の椅子が小さいことが懸念事項だが、やっぱり記念すべきライブは今後も見に行きたい。
この日は個人的に青春の『ZAZEN BOYS 4』の曲を多めに演奏していたが、4ピースの音以外の機器を用いずにロックのアレンジで披露された「I Don't Wanna Be With You」に皆驚いていた。寂寥感を伴う、電子的な負荷の強い四つ打ちの心地よい曲だったものが、さらにもの寂しさを増して迫ってくるギターが中心の別物に変わっていた。泣きのターンか、まずい!と隣の友人の存在を過剰に気にしながら涙腺を堪える。
大量の人間に囲まれている窮屈さや、その場から消え去りたくなるよう致命的な不安さはもう吹っ飛び、頑張ってここに来れてよかったと本当に思えた。こうして勝手に救われる人が何人もいるはずだ。皆に聴かれるバンド、心の底から羨ましい。
中盤のMCで、懇意にしていた銭湯からの裏切り、そして断絶を表明した抱腹絶倒のおやじトークを繰り広げてくれた向井秀徳、話の中でこれ以上は敵わんという局面になると「心のダンビラを抜いたよね」と口にしていた。腹から笑わされた。
松下敦のドラムは、リーダーの身体性にとことん忠実で、しかしその場の予期できない流れ、広がりをしっかり押さえ付けて自分の元へ回収していく、まるで機械による格闘技を観戦しているような壮絶なスタイルだ。動画の小窓などからは到底伝わらない迫力を実際に体感出来た。最高に楽しかった。
極東ピーコックは3rd Album『匣』を全国リリースし、レコ発をせずに潜伏中。
事情が事情で、空白の期間について自分から何か言うことは憚られるものの、確実に言えることといえば、次のアルバムを制作しているということだ。
デモは半分以上あがっていて、岡田さんの作る曲は、ちゃんと腰を据えて前を向いていると感じられる素晴らしいものになっている。
これもまた、時間をかけて仕上げたい。
生きてるねーお前らと言われるように。