心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

ナイチンゲールナイチンゲール,あるいは発想の残滓は梅雨に漂う

2007-07-02 13:36:00 | 精神医学・精神病理学
●関連エントリ
【事例研究】革新的な発明・発見には常に先行者が存在する【症例研究】
プレイと解釈――事例研究について徹底的に考えまくる,六月病という名のエントリPART1
兄と弟――事例研究について徹底的に考えまくる,六月病という名のエントリPART2
インタールード――事例研究について徹底的に考えまくる,六月病という名のエントリPART3
特殊と普遍――事例研究について徹底的に考えまくる,六月病という名のエントリPART4
中立性と現実――事例研究について徹底的に考えまくる,六月病という名のエントリPART5

…………

はい,というわけで,ハーマ芋煮! psy-pubでっす。

まあ先々週にやったシリーズ,これが実に大反響を呼んでおりまして,どこで大反響を呼んでいるかというと,主に自分の中で大反響を呼んでおりまして(タハハ),なんとなくその残滓が今も漂う梅雨のアンニュイな午後なんでありんすよ。

で,それに関連して,とある方が教えてくれた(というか紹介していた)この本を読んでみようと思ってます。


看護実践から看護研究へ―『看護のなかの死』から何を学ぶか看護実践から看護研究へ―『看護のなかの死』から何を学ぶか
薄井 坦子

日本看護協会出版会 1994-03
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看護,といえば,今風の言い方をすればコメディカルの代表的な職種,でありますが,個人的には,現場色の濃いイメージ(という言い方も変ですが)がありまして,そういう場においては常に「実践と研究の間」というところが問題になってくるわけでして,これまた個人的な感覚でいえば,医師と医学研究の関係よりも,心理職と心理学研究の関係とかなり似てくるような感もあるわけですね(もちろん異なる部分は多いですが)。

実はまだ読んでないので,内容にはちょっと言及しかねるのですが,本書のスタイルが成書『看護のなかの死』という実践色の強い書籍を読みながら,実践と研究を考えるというユニークな構成になっているようで,興味をそそられます。類稀なる実践を一実践に終わらせることなく,それを研究へと発展(あるいは昇華)させていく,その過程において,重要となるのは何か。そのヒントが隠されてるような気がしたりしなかったり。まあ看護のことはよくわからないですけどね。


看護のなかの死看護のなかの死
寺本 松野

日本看護協会出版会 2001-11
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これがその原典になるわけですが,あわせて読もうかな,と。著者名が「寺本松野」とこれある種「島崎藤村」ですよねなんてツマラナイことはさておいて,ターミナルケアということになると,宗教的な観点(宗教そのものではなく)つうのが,もうどうしても入ってこざるをえないような気がするのですが,まあやっぱり入ってくるようです。それが良いとか悪いとか,そんなことは軽々しくいえようはずもなく,ただ必然的に入ってくるんですね。まあ読んでみますよ。

ちなみに上記の薄井先生,こういう本も書かれており,なんとなくそのスタンスが推測されます。


科学的看護論科学的看護論
薄井 坦子

日本看護協会出版会 1997-07
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逆説的ですが,科学で語りえぬことがあるからこそ,科学的であることの重要性がある,ような気がします。気がするだけかもしれませんけど。


看護の原点を求めて―よりよい看護への道看護の原点を求めて―よりよい看護への道
薄井 坦子

日本看護協会出版会 1987-04
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さすがにちょっとここまで読もうとは思わない(というか読んでもわからないでしょうし)けど,一応覚え書いておきますね。

まあ看護,といわれると,一般市民としてましては,ナイチンゲール,でして,近代看護学の立役者,として今なお尊敬を集めているそうですね。

フローレンス・ナイチンゲール---Wikipedia

まあ僕の知識なんて,学研まんが伝記シリーズ『ナイチンゲール―戦場の天使』(よこたとくお)レベルなんですが,改めて,Wikipediaを読んでみると,意外とカバーできてるじゃないかという発見もありつつ,1820生-1910没ということは,ダーウィンやファーブルなんかとほぼ同世代,徹底観察と科学的分析(統計)の導入などを鑑みると,(きっとそういう評価は既にあるのだろうけど)結構ヴィクトリアン・サイエンティストのフレーバーが漂ってる感じもしてきました。おお! 俄然興味がでてきたヨ。一般にはヒューマニズムの人というイメージで(僕だけか?),もちろんそういう側面もありつつ,その功績が精神論ではなく語られ得るというところはすごいですよね。


看護覚え書―看護であること・看護でないこと看護覚え書―看護であること・看護でないこと
フロレンス・ナイチンゲール 湯槙 ます

現代社 2000-01
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そのオリジナル,今も必読の古典になっているようです。せっかくなので,学研まんが以上の知識を仕入れていこうかなと。

そしてまたまた,薄井先生ですが,


ナイチンゲール言葉集―看護への遺産ナイチンゲール言葉集―看護への遺産
ナイチンゲール 薄井 坦子

現代社 1995-07
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名言フェチとしては,これはちょっと読んでみたくなります。

以上,斜めすぎる角度(ある種真正面)から,看護のことを知ろうとする素人すなわち俺,オイオイオイオーイ,という気になるかもしれませんが,まあそこは生暖かく見下して頂ければ幸いです。

ほとんど直接的には臨床心理カンケイなし,みたいな感じですので,最後にコジツケでこれを。


看護のための精神医学 第2版看護のための精神医学 第2版
中井 久夫 山口 直彦

医学書院 2004-03
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まあどうもこうもないんですよね,いまさら僕ごときが推薦するまでもなく,たくさんの方が紹介したり絶賛したりしており,広く知られたド名著なわけですが,精神医学入門として,普遍的な内容で,死ぬまでに一度は読んだらいいし,一度読んだら死ぬまで読み続けられる(やや大げさか?),稀有な書かと思われます。「看護できない患者はいない」,至言というか,私なんぞが何も言いようもないですけど。

ちなみに刊行の際に座談会が『週刊医学界新聞』上で行なわれておりまして,WEB上で読めます。

【鼎談】「精神医学」と「精神看護」の出会い 中井久夫氏を囲んで---週刊医学界新聞

個人的にいいなと思ったのは,患者の暴力についてのやりとり(以下抜粋)。

中井 僕は暴力を受けたことはほとんどありません。ただ,ある看護婦さんが患者に叩かれて不穏になって,「患者を退院させてほしい」と言ってきた時のことですが,私の取るべき道は1つだろうと思い,彼のところへ行って,「君は女性しか殴れないのか」と挑発しました。そしたら,僕にパンチを繰り出してきました(笑)。「おお,君は男も殴れたな」と握手して帰ってきましたが。

宮本 暴力を受けないためには,ある程度状況を読み取って,よけいな刺激はしないとか,近づかないということでしょうか。

中井 その話をすると長くなるので1つだけ申しますと,相手から自分たちがどう見えているか,ということを考えることでしょうかね。

まあこの宮本先生が,このやりとりにおいて「状況を読み取って」いるとは思えないのですが,たぶんきっと読者に配慮して(中井先生の論点をわかりやすくするため)のことだと思います。そうであってほしい!(そのままだとしたら意味がわからない)。それにしても,中井先生の返答の端的さはすごいですねえ。

ちなみに,昨今,看護研究において注目されているのが,いわゆる質的研究でして,臨床心理学然り,対人援助という観点に切り込んでいく場合,職種普遍の困難さがきっとあるのか,なんか工夫がいる,ということなんでしょうかね。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ナイチンゲールナイチンゲール(巻き舌風) (カカ)
2007-07-03 00:07:03
看護師向けに書かれた精神医学系の優れた本は、看護の現場ですぐに生かせることを第一に配慮され、簡潔でわかりやすくまとめられたものが多い気がします。書き手の言葉が、読み手である看護師にしっかりと届くように意識され磨かれている感じもあり、そういう文は、強いですよね、やさしい強さというのか。しっかりと地に足がついている…それにしても看護師さんの大変さや凄さは本当に…こういう雑誌とかのhttp://www.nissoken.com/jyohoshi/hc/2007/index.html見出し読むだけでもう…
Unknown (psy-pub)
2007-07-03 11:46:23
>書き手の言葉が、読み手である看護師にしっかりと届くように意識され磨かれている感じもあり

実践的知性の暗黙の共有,そういうのもあるのかなと思ったりします。わからないのですが。中井先生の本にしろ,看護師向けに書かれたからこそ,この含蓄深い内容になった,そんな気がするのです。

……

で,まったく関係ないですが,カカさんのコメントの投稿日付が「2007-07-03 00:07:03」になってるのですが,これ惜しい! 「2007-07-03 20:07:03」だったらヨカッタのに……。
名言フェチに捧ぐ (カカ)
2007-07-05 23:41:16
名言フェチならこれがあったジャマイカー!

『「芸」に学ぶ心理面接法』(前田重治)

サリヴァン・フロイド・池田数好・古澤平作・小此木啓吾・北山修・武田専・下坂幸三・成田善弘・神田橋條治・河合隼雄・小倉清・土居健郎・西園昌久・牛島定信・鑪 幹八郎らの名言・語録を通して、心理面接のコツを伝授しようという企みの箴言集。

読むだけで面接がうまくなったような気になるのが困っちゃう!
けど面白い!

心理学者以外の名言には、筒井康隆・大江健三郎・寺山修司・赤瀬川原平・木下順二・谷崎潤一郎・山崎正和・三島由紀夫・白州正子・中村雄二郎・ラム・中村光夫・世阿弥・藤山直樹・スタニスラフスキイ・マルタン・篠田一士・ベーコン・コリングウッド・バシュラール・桑原武夫・・ミヒャエル・エンデ・パトリシア・ライトソン・オグデン・渡辺保・鈴木忠志・ホイジンガなどなどによるおいしい言葉が、精神分析学的風味に味付けられてテンコ盛り!
Unknown (psy-pub)
2007-07-06 16:40:19
>『「芸」に学ぶ心理面接法』(前田重治)

前田先生の本,良いですよね。
http://www.amazon.co.jp/dp/4414401887/

個人的には前田先生,世阿弥をやりたかったんだろうなと,その欲望がステキだと思ってます。

もちろん静的な名言も好きですが,名言の空気も好きで,そういう意味では,

心理療法の基本―日常臨床のための提言 (村瀬嘉代子・青木省三)
http://www.amazon.co.jp/dp/4772406557

の宝庫っぷりは尋常じゃないです。

……どっちも初学者にはそのよさが十分には分からないのでは,とも思いますけどね。

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