F & F嫁の “FFree World”

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Easy To Love

2008年06月29日 | Cinema & Musik

F log


Standards, Vol.8



  Standards, Vol.1   Who Can I Turn To?
  Standards, Vol.2   The Masquerade Is Over
  Standards, Vol.3   I Had The Craziest Dream
  Standards, Vol.4   Something I Dreamed Last Night
  Standards, Vol.5   All The Things You Are
  Standards, Vol.6   Laura
  Standards, Vol.7   You Don't Know What Love Is






“ easy ” のつく曲が好きだ。
「 Easy Living 」  「 It's Easy To Remember 」  「 I Fall In Love Too Easily 」・・・
そして 「 Easy To Love 」 




 Easy To Love (1936)
                      Cole Porter

   You'd be so easy to love
   So easy to idolize
   All others above
   So worth the yearning for
   So swell to keep every homefire burning for

   We'd be so grand at the game
   So carefree together
   That it does seem a shame
   That you can't see
   Your future with me
   'cause you'd be oh, so easy to love




第 8 弾は好きな作曲家の双璧、コール・ポーターの Easy To Love にしてみた。
ちなみにもう一人は、ジェローム・カーンである。




歌うは サラ・ヴォーン


いわずと知れたジャズヴォーカル界の大御所である。
1961 年録音のアルバム 「 After Hours 」 から。


あ、トップ写真の左側ね。間違えないように (爆)


一般的にイメージされるジャズ歌手となると一番近いのはサラではないだろうか。
原曲を鋭くフェイクするのが持ち味のサラだが、このアフターアワーズというアルバムでは、
ギターとベースだけをバックにリラックスした歌唱を聴かせる。
アフターアワーズとは、ミュージシャンが仕事として出演した後、自分達の楽しみとして
セッションすることを言う。


サラは自らのフィンガースナップで歌い始め、So worth ~ からウォーキングベースが加わる。
そしてそのままワンコーラス歌ってしまうのである。それも比較的原曲に忠実に。
ツーコーラスからはギターが入るが、リラックスした雰囲気はそのまま。
同じメロディ、同じ歌詞を 2 回繰り返すわけだが、さすがに 2 回目はメロディをフェイクする。
しかしそのフェイク具合が絶妙なのである。
特に We'd be so grand at the game の部分は超カッコイイ!!
そのカッコよさの前には shame すらもご愛嬌である


ジャズは即興演奏の音楽といわれる。
いわゆる 「 アドリブ 」 だが、それを本当の意味で楽しめるのは音楽を奏でる人、
ミュージシャンだけなのではないかと思う。
音楽的素養がない一般人である F は、即興演奏といっても原曲の名残りが感じられるのが好きだ。
歌をフェイクするのも、これくらいさりげなくやってくれると嬉しい。
この曲はヴァースも美しいが、アフターアワーズということであれば省略もやむを得ないであろう。



さて、同じサラ・ヴォーンでこんなのはどうだろう。    
20年後、1981 年録音の 「 Send In The Clowns 」
カウント・ベイシー・オーケストラをバックに朗々と歌い上げたアルバム。
この中で Vol.5 で取り上げた All The Things You Are はもの凄いトラックである。


前述のジョニ・ジェイムスは、ジェローム・カーンの高度な曲を素直に歌うが、このサラの歌は
出だしからフェイク、フェイク、フェイクの嵐で、低音から高音へ自由自在に駆け巡る。
こちらを最初に聴いたらどんな曲だかさっぱり分からんだろうなぁ。
この曲におけるサラの歌唱をして、次のように表したジャズ評論家がいた。


「 サラはこの難曲を相手に自分の相撲を取りきっており、気持ちがよい 」


この評を見て大爆笑したと同時に、ものすごく納得もした。
確かにサラ・ヴォーンの美点にあふれた 「 横綱級の歌唱 」 だろう。
ただ、その電車道(もういいって)を楽しむ為には、やはり原曲を知らなければならず、
その為にもソングブック的な録音は絶対に必要だと思う。


カワイコちゃん歌手が好きな F はどこに行ってしまったのだろう






 さて演奏は、ローランド・ハナ トリオ


Easy To Love の名演は数あれど、基本的にピアノトリオが大好きなのでこの演奏を選んだ。
あ、先程も書いたけどいかにも別嬪女性ヴォーカルのようなジャケットは フェイク だからね。


            ほんとうのハナさんは こういうお顔


1959 年録音のこのアルバムは easy to love とこの曲がタイトルチューンとなっている。
ピアノトリオの王道ともいうべき選曲、演奏の素晴らしさはもちろんだが、このジャケットが
魅力となっていることも否定できまい。


さてハナのピアノで聴く easy to love だが、普通の演奏とは少し異なる。
イントロの後、テーマを奏でその後はアドリブ、最後にテーマを再奏して終わるのがパターンだが、
この演奏は最初に短いリフの後、いきなり即興演奏に入ってしまうのだ。
easy to love のメロディを一度も弾かずにである。


すぐ分かるのは粒立ったハナのピアノの美しさと、ベン・タッカーの重低音ベース。
快速なテンポで飛ばすカッコイイ演奏である。おもわずハナ自身も声を上げてしまうくらい。
アドリブとはいえ、ハナの弾くのは曲のメロディを随所に散りばめた分かり易い即興。


3 分 39 秒の短い演奏だが、快調に弾きまくるハナのおかげで充実感一杯。
2 分 30 秒位からドラムの 4 バースを 2 回繰り返す。
そして 2 分 55 秒、つまり残りが 40 数秒になって初めてハナは easy to love のメロディを弾く。


ところが You'd be so easy to love So easy to idolize All others above と上の歌詞で
いうところの 3 行目までのメロディを弾いたら、残りはまた飛翔してしまうのだ。
すぐもう一度 1 行目から弾き直すも、また 4 行目以降は自由自在。


つまりせっかく 3 分かけてたどり着いたメロディをまともに弾かないのだ!!
しかし原曲大好きな F であるが、不思議と変には思わない。
たとえメロディの何分の一しか弾いてなくても、これは 問答無用に easy to love なのだ。
このアルバムではカーンの Yesterdays も大大大好きな演奏である。




テーマを焦らして・・・という点ではこれも同じ。 
ビル・エバンスの 「 Explorations 」 から、How Deep Is The Ocean ? ( 愛は海よりも )
アドリブから入るのは同じだが、こちらはイントロすら無し。
やはり最後 1 分を切ってから美しいテーマがまずはシングルトーンで奏でられる。
いや~エバンスの左手はカッコイイねぇ。テーマ後半などたまりません!!







 さらに混沌としていくこの連載、どこまで続くのやら・・・






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2 コメント

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Unknown (バントウ)
2008-06-29 17:14:44
とても面白く拝読いたしました。

僭越ながらぜひコメントさせていただきたかったのは以下二点。

●アドリブと原曲が織り成す美しい綾について、ちょっと見方が変わるかもしれない「Easy」が付く演奏。
トランペッターのリー・モーガン Lee Morganがヴィージェイ・レーベル Vee-Jayに残した「エクスプービデント Expoobident」っちうアルバムの2曲目の「イージー・リヴィング Easy Living」、Fさんはもうご存知かもしれませんが、今回のお話の流れにしっくりくる「何か」があるような気がします。
最近はこの音源もウェブで聴けちゃうんだなあ・・・
http://www.vee-jay.net/

●ローランド・ハナのアトコ盤ジャケの美女。
ここだけの話、ローランド・ハナってこのおねいさんだと思っていました中学生の私。ハナ=女性、ってお前は風大左衛門かと。
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感謝感激 (F)
2008-06-29 23:39:37
バントウさん、こんばんわ。


いつも駄文におつき合いくださりありがとうございます
表面を撫でているだけでお恥ずかしい限りです。

リー・モーガン・・・彼のペットの音は大好きです。
ただこのアルバムは未聴でした。
Vee-Jay のサイトから試聴しましたが、ここぞというところでフェードアウトで
エディ・ヒギンズのタイトルチューンもカッコイイし、探してみようかしら

アトコのハナちゃんには、私も思いっきり騙されました。
このジャケ写でたぶらかされた青少年は数多いでしょうね

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