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「来たるべき新卒失業者に対する公的職業訓練制度の不備」

(画像は事務系の職業訓練のイメージ)

NPO法人POSSE(ポッセ)では、さる7月31日に「若者のキャリアを守ろう!」シンポジウムを開催し、70名近くもの方にご来場いただきました。
このシンポジウムではNPO法人POSSE(ポッセ)が現在取り組んでいるハローワーク調査の中間報告を交えながら、離職の実態やパワハラなど違法状態が横行する職場の現状に対し、労働法を使って若者のキャリアを守ることの必要性について議論しました。
しかし、若者のキャリアについて考えるとき、そもそも就職できなかったり失業しているような層に対しての政策的・制度的な支援についても考えていく必要があります。そこで今回は新卒失業者と公的職業訓練という観点から必要な取り組みについてみていこうと思います。 

就職を希望する今春卒業予定の大学生の昨年12月1日時点の内定率は73.1%で、調査が始まった1996年以降、最低となったことが14日、文部科学省と厚生労働省のまとめで分かった。前年からの下げ幅も、過去最大だった昨年10月時点の調査と同水準の7.4ポイント減で、2000年前後の「就職氷河期」より厳しい雇用状況が改めて浮き彫りになった。                   (朝日新聞朝刊 1月15日)

このような厳しい新卒学生の就職状況に対する現状とはどのようなものなのでしょうか。

① 今までの若者の社会人生活のスタート
 これまでの若者は3月に学校を卒業し、4月に企業に入社するという「定期一括採用方式」によって社会人としての生活をスタートさせていました。大部分の若者が正社員として採用され、初任給は低くとも、やがて少しずつ昇進し、賃金も上がっていっていくという「年功賃金」のもとで、将来の生活設計を描くことができていました。また、定年までとはいかないまでも、「終身雇用」といわれる長期の雇用保障が暗黙に了解されていました。さらに技能養成についても、日本は企業内で技能を養成することが基本であったので、企業外での社会的な技能訓練システムが不備であっても、多くの若者は技能を身につけることができたのです。

②日本型雇用システムの縮小
 しかし、そのようないわゆる「日本型雇用システム」といわれる「年功賃金」、「終身雇用」、「企業内技能養成」といった仕組みは基本的には正規雇用の労働者にしか適用されず、派遣社員や契約社員といった非正規雇用の労働者はそのような枠組みから排除されていました。
90年代に入ると非正規雇用で働く人が激増し、今や3人に1人は非正規雇用で働いているといわれています。今までの非正規労働者は主に、主たる稼ぎ手である男性正社員の安定した収入に支えられた主婦や学生などが行う、「家計補助型非正規」といわれるような形態の働き方でした。しかし、90年代以降は本人自身が非正規労働者として主たる収入を得て生活をしていかなければならない「家計維持型非正規」が増加してきています。彼らの多くは「ワーキングプア」と呼ばれるような、フルタイムで働いても十分な生活を送ることができない状況に追い込まれています。
最近は様々な新自由主義的な改革により正規雇用の削減が進む一方で、非正規雇用が増加しています。その結果として、「日本型雇用システム」の適用範囲が縮小し、その領域に入ることができない人々への社会保障・社会政策の欠陥が明らかになってきているといえるでしょう。
 
③若者の状況
そういった中で若者の就労状況はというと、他の世代に比べて非正規雇用の労働者の増加が顕著です。非正規雇用労働者は低賃金、長時間労働、社会保障の欠落など非常に不安定な生活を強いられています。以前は大部分の若者は正規雇用として就職していましたが、90年代以降、企業の新卒採用の抑制が始まり、いわゆる「就職氷河期」と呼ばれるような厳しい状況も到来しました。今年のように企業から内定がもらえず、金銭的余裕がないために就職浪人などの手段がとれない場合は、社会に出て働かなければなりません。そのような場合、多くの人はアルバイトや派遣社員、契約社員といった非正社員として働かざるを得ない状況があります。
非正社員が多数を占め、高い失業率が持続するようになった今の時代、こうした非正社員や失業者に対する労働市場の整備は必要不可欠です。彼らが安定した職を見つけることができる仕組み作りを考えていく必要があるのではないでしょうか。

④職業訓練制度
 では、大量の非正規、無業の若者が低処遇のまま放置されている今の状況の中で、これからそこに今年の新卒失業者が流入するということになりますが、そのような人々に対してどのような対策が考えられるのでしょうか。今回はそれを「職業訓練」に絞って見ていきたいと思います。
 現在、非正規雇用や無業の若者は企業による職業訓練を受ける機会からほぼ排除されています。日本の職業訓練の主な担い手は民間企業と見なされ、若年労働者の職業訓練は新卒で正規採用された後に、各企業によって行われることを基本的に想定されています。その一方、公共職業訓練制度はというと、その多くが若者向けではなく、一定期間の労働経験をもつ求職中あるいは在職中の労働者が主な対象となっています。つまり、公的制度は主として、労働経験のある労働者の職の転換と移動をスムーズにするための職業訓練と、そのための資金提供を担うという位置づけになっているのです。結局、新卒あるいは若年労働者を対象とした本格的な雇用促進と公共職業訓練の法的枠組みは、これまでの日本社会には存在しませんでした。
 非正規や無業の若者の圧倒的多数は、企業外の各種の訓練コースや講座などに頼るほかないが、それらを受ける際の受講料や生活費などへの公的援助は、そのほとんどが雇用保険の受給資格者、あるいは被保険者期間が3年以上の者などを対象としているため、無業あるいは不安定な非正規雇用で働き始めた若者には手が届かないものとなっています。
 次に職業訓練制度自体が抱える問題をいくつか挙げてみましょう。まず第1に、現在、職業訓練を受けることができる定員自体が全く足りていません。そのため、選考が非常に高倍率になりなかなか職業訓練を受けることができないのです。第2に、たとえ職業訓練を受けることができたとしても、そこで学び、取得した資格が就職に役立つ水準のものではないことが多くあります。
 このように職業訓練を受けることができなかったり、受けてもその努力が報われない場合もあるわけです。また訓練中、就職後の資格取得に関しても、無収入状態で料金が取られるなどサポート体制も不十分といった問題点もあります。さらに、仮に就職できないままに訓練を終えてしまうと、もうスキル向上の機会はほとんどなくなります。
 このように現在の職業訓練制度は多くの問題点を抱えています。今年の新卒学生が無業、または非正規労働者として働き始めた時などに、安定した職への就業を促進するための、職業訓練や生活保障、資格制度の充実、資格やスキルの厳格な評価システムの構築といった制度の構築が急務です。

今までの日本型雇用システムが崩壊し、雇用の質・量がともに劣化する中で、企業横断的な外部労働市場の整備が緊急の課題となっています。具体的には非正規雇用や失業の状態にある人たちに「家計維持」をできる比較的安定した職への移動をサポートするための施策、すなわち職業訓練の種類や訓練定員の拡大、所得保障の付いた無償の職業訓練の拡充などが必要です。こうした公共職業訓練の量的・質的拡充に加えて、ユニオンやNPOの連携による労働市場の社会的規制、生活保護や医療制度といった社会保障全般の拡充といった3方向からの取り組みによって日本型雇用システム崩壊後の労働市場を整備していくことが今求められている取り組みではないでしょうか。



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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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