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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

雑誌『POSSE』で紹介されたベーシックインカム論をご紹介

ベーシック・インカムの全国ネットワーク「ベーシック・インカム日本ネットワーク(BIJN)」が設立されるそうです。

今日から行われるその設立記念シンポジウムの出席者の方から、雑誌『POSSE』のチラシをおいてほしいと連絡をいただきました。ベーシックインカムについて、雑誌『POSSE』でも幾度か取り上げているからだと思われます。本誌ではベーシックインカムをどのように紹介してきたのか、改めて解説します。

■ベーシックインカムの概要~福祉国家の限界と現代思想の観点から~

『POSSE』第5号掲載の山森亮「ベーシックインカムが生活保護よりも現実的な理由」では、ベーシックインカムが唱えられるようになってきた背景を紹介しています。まず、「完全雇用が達成できない」現代において、人々を労働に強制的に駆り立て、働かない人の生活を保障しないワークフェア、それに対する批判があるとされます。そして、欧米の社会運動が突き当たった福祉国家の限界、家事労働における問題提起などを指摘しながら背景を解説しており、入門として非常にわかりやすいインタビューになっています。

現代思想的な観点からは、『POSSE』創刊号の入江公康「労働と思想1 アントニオ・ネグリ」で、イタリアの思想家、アントニオ・ネグリによるベーシックインカム論を紹介しています。ここでは、ポストフォーディズム社会における労働の変容に触れ、日常的な瞬間においても「労働」をしているような社会においては、生きることそのものが「労働」になっているとして、権利としてベーシックインカムを要求するという運動が提起されています。

■指摘される日本におけるベーシックインカムの問題点

一方で、『POSSE』に掲載している文章の中では、本当に生活を保障する社会を実現できるのか、という観点からベーシックインカムを批判的に紹介している論文もあります。

『POSSE』第6号掲載の宮本太郎「持続可能な生活保障の戦略は、アクティベーションしかない」でも、ベーシックインカムに関連した議論がされています。宮本さんは、「脱官僚」がもてはやされる「行政不信」のなかでは、ベーシックインカム的とされる子ども手当が実現する一方で、保育所の拡充のような無償の公共サービス、現物給付が軽視されるのではないかと指摘しています。また、行政による公共サービスの提供についてはベーシックインカム推進派から画一的だと批判がありますが、これに対してNPOなど社会的企業によって当事者からの多用なニーズに応えられるとされており、単なる「民営化」と区別したうえで期待を寄せしています。

また、ベーシックインカムではなく、雇用の不安定な現代において持続的な雇用を実現して社会を循環させていくために、農業や介護など、人々の生命の基本を支えたり、新しいライフスタイルにそうような産業への転換が挙げられています。また、生涯教育や家族ケア、地域活動などへの「ソーシャルアクティベーション」も指摘され、安定した仕事が減少するなかで仕事を分かち合うことが提起されています。

同じく6号掲載の錦織史朗『ベーシックインカムが使えない4つの理由』では、ベーシックインカム運動における、市場経済の不安定さを抑制して生存を保障する脱商品化の観点の弱さを指摘しています。特に、福祉国家を実現してきたヨーロッパに比べ、企業を中心に社会が統合されてきた日本では、ベーシックインカム運動においてその危険性があまり理解されていないのではないかと警鐘が鳴らされています。

さらに6号では、若手研究者匿名座談会「マスコミがスルーした民主党改革の新たな「利権」」において、哲学・労働社会学・文化社会学などの観点からベーシックインカムの批判がされています。

一方で、アントニオ・ネグリのベーシックインカム論についても、昨年出版された新刊『Commonwealth』(コモンウェルス)においては、気になる指摘がされているようです。本書で彼が提起する資本主義における「改革要綱」では、「ベーシックインカムが第二のリストにおいてはじめて挙げられている」というのです。ネグリが戦略的に提起する「生政治的な生産」を重視する新しい「福祉国家」。そこにおけるベーシックインカムの役割とは何なのか? 本誌5号掲載の斎藤幸平「『コモンウェルス』におけるベーシックインカムの位置づけ」で論じられています。

このように本誌では、日本社会におけるベーシックインカムの意義について多面的に紹介してきましたが、今後もさらにこうした議論を紹介していく予定です。ぜひご注目ください。

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