見出し画像

NPO法人POSSE(ポッセ) blog

4月9日 富士通SE過労死裁判の勝訴確定!


3月25日、ある若者の過労死事件の行政訴訟の傍聴にNPO法人POSSE(ポッセ)スタッフが参加しました。

過労死で亡くなったのは、富士通の子会社(富士通SSL)でシステムエンジニアとして勤めていた西垣和哉さん(当時27歳)です。3月25日に原告である遺族側の勝訴判決が出まして、それから2週間のあいだ、FAXを送るなどして国側が控訴しないように要請する取りくみを和哉さんのお母様を中心に様々な団体に広く呼びかけ、実行していました。
(判決の概要は以前ブログでまとめました。http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/09e78611d09bad78c42642466798c2bbをご覧ください)。

そして昨日、厚労省の担当者へお母様が電話を掛けたところ、「控訴をやめる」決定をしたという旨の返答がありました。勝訴が確定したのです。
NPO法人POSSE(ポッセ)のブログでも、国が控訴しないようにFAXを送ることをお願いしていました。みなさまのご協力、誠にありがとうございます。

和哉さんは、神戸の専門学校を卒業後に入社しました。納期のしめつけがあったようで、1ヶ月で80時間以上の時間外労働が強いられていました。入社して1年半経ち、和哉さんはうつ病に罹患しました。それからは、病気が治らず休職と復職を繰り返すようになり、精神的な負担を抱えながら仕事をしていました。この頃の和哉さんのブログには、「このまま生きていくのは死ぬより辛い」という記述があります。そして、2006年1月26日、治療薬を過剰服用し、急性薬物中毒で亡くなりました。入社してから3年9カ月のことでした。
遺族は、労働基準監督署に労働災害の申請をしました。しかし、不支給処分となり、その後の不服審査請求も認められませんでした。そこで、2009年2月、国を相手に行政訴訟を起こしました。スタッフが傍聴した日は、判決が言い渡される日でした。

3月25日の判決は、和哉さんの業務と死亡との間に相当因果関係があるとし、労働災害であることを認めました。原告の勝訴でした。
過労死・過労自殺の事案は、業務と死因との因果関係を立証する責任が遺族(原告側)にあります。しかし、この因果関係を証明するのに必要な労働時間の記録などは、たいてい企業が管理しており、実際に立証するのは非常に困難だといわれています。亡くなった直接的なきっかけが業務ではない場合は、さらに難しいものです。たとえば、和哉さんの場合、直接的には治療薬を過剰服用したことが死を招きました。そうすると、死の原因は薬の過剰服用にあり業務ではない、と反論されるのです。

しかし、このような直接的な死因しか労働災害の判断対象にならないとしたら、職場の労働環境などの他の要因は無視されます。そして、劣悪な労働環境が無視されその責任追及がなされなければ、職場は改善されず、同じような悲劇は再び起こるかもしれません。労働災害の判断の際には、業務が必ずしも直接的な死因ではなくても、それと同じくらい死に影響していれば、業務と死との関係を考慮することが求められます。
そのような意味で、今回の判決は画期的でした。死の要因を薬の過剰服用と厳密に捉えるのではなく、業務が健康に与えたインパクトを見逃しませんでした。そして、地裁の判決が今回確定したことで、今後も同じような過労死の裁判が起きたとき争いやすくなり、本件のような過労死を二度と起こさないように、会社の労務管理が見直される可能性があります。このように、今回の判決が確定したことは、社会的に重要な意味をもっていると同時に、新たな「社会的規範」を形成したと言えます。

FAXを送るなどしてこの裁判を応援して下さったみなさまには、あらためて感謝いたします。本件では和哉さんの職場の同僚の方をはじめ、本当に多くの様々な人々、団体が裁判支援をしていったということが裁判結果に影響したと感じました。私たちNPO法人POSSE(ポッセ)は、今後も過労死事件の裁判に取り組み、過労死が起きない社会をどう実現するか考え、行動していきたいと思います。

****************************
「SE過労死、労災認定へ 厚労省が控訴断念」 2011年4月8日東京新聞

 厚生労働省は8日、川崎市の大手IT企業に勤務しながら2006年にうつ病で薬を過剰摂取し、死亡した元システムエンジニア西垣和哉さん=当時(27)=について、過労による死亡として労災認定する方針を固めた。
 西垣さんの母迪世さん(66)=神戸市=が09年、労災認定を求め東京地裁に提訴。今年3月25日、同地裁が判決で「配置転換に伴う著しい労働時間の増加など心理的負荷が重かった」として過労による死亡と認定していた。厚労省は8日、控訴断念を決めたが、理由については「個別事案のため答えられない」としている。
 判決などによると、和哉さんは02年に入社。地上デジタル放送のシステム開発を任されて以降、月100時間を超える残業をするなどした結果、不安抑うつ状態と診断された。06年1月、精神疾患の薬を過剰に摂取し、急性薬物中毒で死亡した。
 死亡の直前まで更新し続けたブログには「眠れない。死にたい」などと書き込んでいた。
(共同)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011040801001102.html



****************************
NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
____________________________________________________

NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「活動報告」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事