NPO法人POSSE(ポッセ) blog

3月23日カフェイベント報告

去る3月23日、ポッセのカフェイベントが下北沢のesCafe/Dining エスカフェ/ダイニングで行われました。今回は「LAW! DO! 法律を、知って、使って、サポートしよう」と銘打って、ゲストに神奈川県横浜労働センターの柳沼吉孝さんをお呼びしての講習会と、そのあとワークショップを行いました。当日は春のここちよい陽気のなかアットホームな空間で、活発な意見交換や質問が出され、実際に法律を使うにはどうすればいいのか、また周囲で困っている人をどうサポートできるのかといった、実践的な知識を身につける場となりました。

今回のセミナーの目的は、労働法を知って使えるようになろうということで、始めに、神奈川県横浜労働センターに勤務していらっしゃる柳沼さんにお話をうかがいました。働く際に最低限身につけておかなければならないポイントが多く、法律の使い方を具体的に知ることができました。具体的には①労働契約、②就業規則、③労働時間、④年次有給休暇、⑤給料(賃金)、⑥退職、解雇、雇い止め、の六つの項目についてお話していただきました。くわしくは、若者労働ガイドをご覧ください。


①労働契約
労働(雇用)契約は労働者が会社に対して労働力を提供することを約束し、会社がその対価として報酬を与えることを約束することです。労働者が「働きたい」と思い、会社が「雇いたい」と思い、合意が成立すれば労働契約が結ばれたことになります。
労働契約を結ぶ際の注意点としては、募集広告や求人票に書かれていた条件が、そのまま労働条件になるわけではないということ、また、契約は口頭でも成立しますが、あとで問題にならないように書面にしておくことが大切であり、書面にすることは使用者側に義務付けられている、ということでした。これはとても大事なことで、仕事ダイアリーの初めのページにも書かれています。後々トラブルになったときに、自分がどんな条件で働いているのかをはっきりさせるためにも、労働契約は必ず書面でもらい、保存しておきましょう。

労働契約を結ぶ際に確認しておく項目は、
・労働契約の期間
・就業場所と業務内容
・始業・終業時刻、休憩時間、休日
・残業の有無
・給料(賃金)の決定、計算方法、支払いの時期
・退職するときのルール
といったことがあります。仕事を始める前に必ず確認しておきましょう。

②就業規則
常時10人以上の社員(パート等を含む)を雇っている場合、会社は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。社員が十人よりも少ない場合、自分の職場に就業規則があるかないかを確認しましょう。就業規則とは会社内のルールのことで、賃金や退職金、労働時間などの労働条件や、会社の決まりごとが書かれていて、労働者だけでなく使用者もそのルールを守る必要があります。就業規則の内容を変えるときには、使用者は労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する人の意見を聞き、労働基準監督所に届け出なければなりません。重要な点としては、解雇は就業規則にのっていない事由ではできないということです。

③労働時間
労働時間は、使用者の指揮監督下にある時間のことで、準備時間や片付け、一定の仮眠時間も労働時間に含まれます。原則として一日の法定労働時間は八時間、一週間の労働時間は四十時間以内と定められています。(※労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者と書面による協定(36協定)をし、これを労働基準監督署に届け出た場合は延長が認められます)
時間外労働は、所定労働時間を越えて働くことで、法定労働時間を越えて働くと、その超過時間については、25%以上の割り増し賃金が支払われます。延長時間は、一週間15時間一ヶ月45時間などの限度があります。
深夜労働は午後10時から午前5時までの間に働くことです。25%以上の割り増し賃金が支払われます。
時間外労働でかつ深夜労働の場合は25+25で50%の割り増し賃金となります。
仕事ダイアリーなどを使って自分で労働時間を計算し、もらえるはずの給料と、実際の給料に食い違いがないか、一度調べてみるといいかもしれません。

④年次有給休暇
年次有給休暇とは、休日以外に、賃金をもらいながら休みを取ることができる制度です。アルバイト労働者や所定労働時間が短いパートタイム労働者にも、所定労働日数に応じて、年休は比例的に与えられます。
基本的に年休は事前に申告すれば取ることができます。つまり、「この日に休む」といいさえすれば取ることができます。当たり前かも知れませんが、後から年休を取ることはできません。風邪を引いて仕事を休み、後から年休を申請しても認められません。
また、基本的にいつでも年休は取れますが、事業の正常な運営を妨げる場合(例えば何人もの労働者が同一日に申請した場合など)使用者は年休の時季を変更することができます。ただ、年休の変更を使用者が行う条件はかなり厳しく、前々からその日に年休を取ることを伝えてあったにも係らず、当日忙しいから仕事に出てくれ、ということは認められていません。

⑤給料(賃金)
給料は「労働の対価として支払われるもの」で、法律上は「賃金」といいます。
「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」のですが、例外として法律で定められた、税金や社会保険などを引くことは認められています。また、寮費や組合費が引かれていた場合は、労使協定に定めがなければいけません。
また賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。特に非正規のバイトやパートを中心として、給料の不払いや、全額支払わない、など様々なトラブルが発生していますので、自分がいつどれだけ働いたのか、仕事ダイアリーなどにつけておいて、給与明細と照らし合わせて確認してみるといいでしょう。

⑥退職、解雇、雇い止め
退職とは就業していた労働者が、その職を自分から、もしくは、使用者と合意して辞めることを言います。実際に辞めるときは、就業規則を確かめてトラブルにならないように、行いましょう。
解雇とは使用者の意思で労働契約を一方的に終了させることを言います。解雇には合理的な理由が必要で、就業規則のどの解雇事由にあたるかを確認しましょう。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効とされます。「仕事ができないからクビ」といわれた場合、企業は十分な研修等を行ったかどうかなど、合理的基準がなければ無効になります。
また解雇するには事業主は少なくとも30日前に予告するか、解雇予告手当てを支払わなければなりません。計算方法はこちら

最後に、柳沼さんからのアドバイスとして、「何かトラブルになったときに使用者と対立するのを怖れないということと、自分を責めないことが重要だ」というお話がありました。使用者側の違法な行為に対して、「自分が悪いのだ」という自己責任論に陥るのではなく、怖れずに自己の正当な権利を主張することが大切です。実際に何らかの問題を抱えている方で、一人では何をして良いのか分からない、不安だ、という方は是非一度NPO POSSEまでご連絡ください。


柳沼さんの講演会の後は、ワークショップへと移行しました。
今回は「雇用保険」「労災申請」、「仕事を始めるにあたって」の三つのグループに分かれて、各班で実際に制度を使うにはどうすればよいのかの確認と意見や質問の出し合いを行いました。
「雇用保険」の班では、実際に現在、雇用保険の受給をしようと考えられているお二方からの相談を受け付け、対応策を協議しました。
「労災申請」の班では、労災申請の方法と、手続き上の問題点などを確認しました。また、LAW! DO!のキャンペーンを広め、法律を使えるようになって回りの人をサポートする人をもっと増やすことで、法律が当たり前に守られる社会にするにはどうすれば良いのか、といったことについて意見が出されました。
「仕事を始めるにあたって」の班では、柳沼さんのお話にあった、労働契約や就業規則のチェックなどの基本的なことの確認と、バイト先でのトラブルの事例などが出されました。また、バイト先で疑問に思うけど、なかなか人に聞けないことが出されました。
同じ時間帯に働いているのに、同僚と給料に差ができるのがいいのか?試用期間には定めがあるのか?労基法は適用されるのか?といったことについて質問がだされました。
また、大学が斡旋しているバイト先でトラブルが起こった場合、大学側は何も対応をしてくれない現状に、POSSEができることがあるのではないか、といった意見も出されました。

講演会とワークショップあわせて二時間ほどでしたが、POSSEらしく、法律を知るだけではなく使えるようになるにはどうしたら良いのか、という実践的で中身の濃いカフェイベントでした。

次回は5月24日にセミナーイベントを行います。今回参加できなかった方も、是非ご参加ください。
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