何日続くかな

心に移ろいゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくる場所

いにしゃるデルタ

2006-01-01 01:02:21 | Weblog
街灯も疎らな県道。
アクセルを踏み、長い坂を登っていく。
車速は40キロ丁度。夜の片側一車線としては、少し遅いくらいだ。
後ろから煽られつつも、回転数、車速はそのままに保つ。
フロントガラスの向こうには、暗い色のアスファルト。ライトに照らされた中央線が、緩やかなカーブを知らせる。
もう少しで、坂も終わりだ。
アクセルを緩める。
スピードメーターの針が、ゆっくりと下がっていく。
視界から、中央線が途切れる。
そして……
頂点で車体が跳ね、サスが大きく沈み込む。
直滑降かと思うくらいに急な下り坂。
上がる車速を押さえ込むため、シフトを速に落とす。
タコメーターの針が跳ね上がり、エンジンが唸りを上げる。
しかし、車速は下がらない。スピードメーターは緩やかな加速を伝えてくる。
ブレーキペダルを甘く踏み込みながら、シフトをさらに1速へ。
反応無し。
車速が高すぎて、ATの保護機能が働いている。
だが、もう少し減速すれば、1速に落ちる。
その時だった。
坂の麓にある緩やかなS字を直進してくる対向車。そのライトが、冷たい夜気を切り裂いたのは。
相手は中央線を踏み越えている。このまま行けば、衝突は必至。
反射的にブレーキを踏み込み、ステアリングを左に切って回避。
その瞬間。
車速の低下を検知したATが、ギアを1速へ落とす。
駆動輪である後輪に急制動がかかり、急速にグリップ力を失う。
旋回の横Gに負け、フロントミッドシップ配置のエンジンを中心に、テールが右に流れ出す。
瞬時にカウンター(逆ハンドル)を切って逆モーメントを得、テールの横滑りを抑える。
しかし、息をつく暇はない。対向車の車列が迫っている。
右前輪が中央線を踏む直前、再び左に切って回避。
スタッドレスタイヤが悲鳴を上げる。
急旋回。
大舵角で切られた前輪に、車体の慣性エネルギーが集中。サスが沈み込み、安全値を超える接地圧で、タイヤがアスファルトを噛む。
ガラス越しの視界が右に流れ去り、横Gに車体が軋む。
ロックtoロック2.5回転の標準的なステアリングが、ロックの弾みに跳ねる。
その瞬間、ボンネットの見切りが悪い、ゲームのような視界に、今度はガードレールのポールが大写しに。
衝突を覚悟しながらも、反動に逆らわず、ステアリングを力任せに切り戻す。
絶望的な大きさまで迫ったガードレールが、左に飛んでいく。
さらにカウンター。
ミッドシップのエンジンを中心に回るリアを抑え込み、2、3度蛇行を繰り返し、何とか車線に引き戻す。
この間、約10秒。
再びアクセルを踏み込む。
グリップを回復した後輪が力強く路面を蹴り、何事もなかったかのように車体は加速していく……

……ってなことがありました。
因みに、車はよりスポーティーになる前の初期型セレナ。
足回りはどノーマル。軽量化も何もしてませんが、ミッドシップ・リアドライブのエンジン配置はかなりの安定性でしたね。
ホントに、エンジンを中心に回るんですもん。
この子もまだまだいけますね。