道楽のいろはを教えようという風変わりな指南所に弟子入り志願の男がやって来た。米屋の息子だという。さて、どれくらい素質があるものかと、師匠が「今年は随分と雨が降りましたが、米の相場はどうですか?」と尋ねてみたところ。
道楽指南所
「道楽指南所」へ米屋の息子来りて、「お弟子になりたき」と師匠に近付になり、一つ二つ話の上にて、師匠、息子に向ひ、「さて当年は、肝心の時分、いかふ雨が降りましたが、米の相場は何ほどでござる」。息子、「ハイ、サレバ、一向存じませぬ」。師匠、「ハア、よつぽど、お下地がある」。
『寿々葉羅井』(安永8年 1779)
道楽指南所
「道楽指南所」へ米屋の息子来りて、「お弟子になりたき」と師匠に近付になり、一つ二つ話の上にて、師匠、息子に向ひ、「さて当年は、肝心の時分、いかふ雨が降りましたが、米の相場は何ほどでござる」。息子、「ハイ、サレバ、一向存じませぬ」。師匠、「ハア、よつぽど、お下地がある」。
『寿々葉羅井』(安永8年 1779)