「悲しみの涙はいらない」
水原とほる・著イラスト・ヤマシタトモコ フロンティアワークスダリア文庫
2008年5月20日初版 262ページ 552円+税
最近、文庫ばかり読んでいることに気がつきました。
通勤の電車の中くらいしか読書の時間が取れないので、持ち運びやすい文庫につい手が伸びちゃうんですよね。ノベルズも買ってるんですけど、たまるばっかり・・・。
ストーリーは・・・
母親に捨てられ、義父の借金のカタとして金融業を営む国枝に引き渡された遙。その美しく儚げな容貌で借金返済のために売春を強要されてきた。男達からの
陵辱に耐えるため、固く心を閉ざしていたはずなのに、気まぐれに自分を抱いた国枝の言葉に何故か傷ついてしまう。端整な顔立ちだが冷たい目をした国枝の冷
酷さに怯えながらも、垣間見える彼の孤独と優しさに遙の心は揺れ動き…。
あらすじはネット書店のセブンアンドワイさんから転載しました。
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=32053921
水原作品は私の好みではないんですけど、妙なエネルギー(作者の思い込みの強さというか・・・)を感じるので、本屋に新作が並んでいると、つい、手が伸びてしまいます。全部買っているわけではありませんが。
今回は、裏表紙のあらすじを読んで、水原作品の主人公らしく、不幸のドツボで売春させられる可哀想な作品なんだろうと思い、まぁ、こういう不幸な主人公のお涙頂戴モノはキライではないので、読んでみることにしました。
主人公・遥(受け)の境遇は、あらすじにあるように悲惨です。無理やり売春なんて、吉原の遊女のように悲しいではありませんか。
しかし、遥は三週間後にはあっさりと国枝に身請けされてしまうのです。
遥の遊女な境遇はお試し期間並みの短さでした。
その後、国枝の愛人となるのかと思いきや、
「愛人だと?未成年の子どもをか?あいにく、おまえのような薄汚れたガキを愛人にするほど抱く相手に困っているわけじゃない」(P65)
というわけで、遥は10畳の部屋にプライベートの風呂までついた立派な部屋に住まわされ、高校にも通わせてもらうことに。
国枝は遥に手は出さないし、そもそも週に2~3日しかこのマンションには帰って来ません。
家事はメイドサービスがやってくれるのですが、ある晩、深夜に帰宅した国枝に、遥かがオムライスを作ります。国枝にとって、オムライスは思い出のある料理だったようで、二人の心は少し近づきます。
このエッチがない状態に編集者がGOを出したのだろうかと思っていたところで、国枝が遥を寝室に呼び、ガチュン。
というのも、「借金がある身なのに、快適な暮らしをさせてくれて、高校にも行かせてくれてありがとう」と遥が言ったところ、国枝の機嫌を損ねてしまった ようで「礼を言う必要などないことを思い出すといい。俺はボランティアをやっているつもりはない」((P84)という運びになったのです。
P65の台詞と矛盾していることにはこの際、目を瞑りましょう。
その後、遥と国枝は時々、セックスするようになります。
遥は学校で友達も出来、遥と国枝は時たまセックスをしつつ、小康状態・・・・・・のような感じが続きます。
しかし、友達だと思っていた中井は案の定、遥に惚れ、遥に告白したところに国枝がやって来るというお決まりな展開。
国枝は遥を手ひどく扱う・・・という水原ワールドにようやく突入かと思いきや・・・あれれ???アマアマです。
さらに、国枝は自分が養護施設の出身だと遥に告白。遥かは国枝が毎月、施設に仕送りをしていること、どうしてヤクザになったのか、そしてオムライスにま つわる話を聞き、もともと国枝を「理解したい」と思っていた遥でしたが、当然のように恋心に変わり・・・とってもスウィートなBLなのです。
そしてお決まりのように、国枝が刺され、刺されたけど当然の如く軽傷で愛を確かめあって終り・・・と、あまりにも定番のハッピーエンドで物語は締めくくられ、正直なところ拍子抜けしてしまいました。
水原先生は、定番の素材を、文章のテクニックを駆使して読ませるタイプの作家さんではないと勝手に思っています。今回の作品は「小さくまとまった」感が強くて残念です。
書く順番は前後しちゃったんですけど、月村先生の「もうひとつのドア」を読んだ翌日にこの「悲しみの涙はいらない」をよんだので、つい、比べてしまいました。
どちらの親に捨てられ、借金を背負った17歳の少年が主人公ですが、ヤクザから売春を強要されるという水原作品のほうが、設定だけを見ると「ドラマ性」 はあります。しかし、「もうひとつのドア」のほうがドラマチックに仕上がっています。設定だけに頼らず、キャラクターをきちんと描いたところで差が出たの かな・・・と思います。
こういう話はほかの作家さんでいくらでも読めるので、あの狂おしいばかりに独りよがりな水原ワールド、カムバーック!!
【攻め】国枝政信 ?歳 ヤクザ 一人称「俺」
【受け】上野遥 17歳 高校生 一人称「僕」
【ボキャブラリー】性器=もの アナル=窄まり 精液=熱いもの
わりと直接的な表現はないですね。受けのヨガリ声も「ひぃ」っとか痛い系が殆んど。
【タグ】ヤクザモノ
水原作品は私の好みではないんですけど、妙なエネルギー(作者の思い込みの強さというか・・・)を感じるので、本屋に新作が並んでいると、つい、手が伸びてしまいます。全部買っているわけではありませんが。
今回は、裏表紙のあらすじを読んで、水原作品の主人公らしく、不幸のドツボで売春させられる可哀想な作品なんだろうと思い、まぁ、こういう不幸な主人公のお涙頂戴モノはキライではないので、読んでみることにしました。
主人公・遥(受け)の境遇は、あらすじにあるように悲惨です。無理やり売春なんて、吉原の遊女のように悲しいではありませんか。
しかし、遥は三週間後にはあっさりと国枝に身請けされてしまうのです。
遥の遊女な境遇はお試し期間並みの短さでした。
その後、国枝の愛人となるのかと思いきや、
「愛人だと?未成年の子どもをか?あいにく、おまえのような薄汚れたガキを愛人にするほど抱く相手に困っているわけじゃない」(P65)
というわけで、遥は10畳の部屋にプライベートの風呂までついた立派な部屋に住まわされ、高校にも通わせてもらうことに。
国枝は遥に手は出さないし、そもそも週に2~3日しかこのマンションには帰って来ません。
家事はメイドサービスがやってくれるのですが、ある晩、深夜に帰宅した国枝に、遥かがオムライスを作ります。国枝にとって、オムライスは思い出のある料理だったようで、二人の心は少し近づきます。
このエッチがない状態に編集者がGOを出したのだろうかと思っていたところで、国枝が遥を寝室に呼び、ガチュン。
というのも、「借金がある身なのに、快適な暮らしをさせてくれて、高校にも行かせてくれてありがとう」と遥が言ったところ、国枝の機嫌を損ねてしまった ようで「礼を言う必要などないことを思い出すといい。俺はボランティアをやっているつもりはない」((P84)という運びになったのです。
P65の台詞と矛盾していることにはこの際、目を瞑りましょう。
その後、遥と国枝は時々、セックスするようになります。
遥は学校で友達も出来、遥と国枝は時たまセックスをしつつ、小康状態・・・・・・のような感じが続きます。
しかし、友達だと思っていた中井は案の定、遥に惚れ、遥に告白したところに国枝がやって来るというお決まりな展開。
国枝は遥を手ひどく扱う・・・という水原ワールドにようやく突入かと思いきや・・・あれれ???アマアマです。
さらに、国枝は自分が養護施設の出身だと遥に告白。遥かは国枝が毎月、施設に仕送りをしていること、どうしてヤクザになったのか、そしてオムライスにま つわる話を聞き、もともと国枝を「理解したい」と思っていた遥でしたが、当然のように恋心に変わり・・・とってもスウィートなBLなのです。
そしてお決まりのように、国枝が刺され、刺されたけど当然の如く軽傷で愛を確かめあって終り・・・と、あまりにも定番のハッピーエンドで物語は締めくくられ、正直なところ拍子抜けしてしまいました。
水原先生は、定番の素材を、文章のテクニックを駆使して読ませるタイプの作家さんではないと勝手に思っています。今回の作品は「小さくまとまった」感が強くて残念です。
書く順番は前後しちゃったんですけど、月村先生の「もうひとつのドア」を読んだ翌日にこの「悲しみの涙はいらない」をよんだので、つい、比べてしまいました。
どちらの親に捨てられ、借金を背負った17歳の少年が主人公ですが、ヤクザから売春を強要されるという水原作品のほうが、設定だけを見ると「ドラマ性」 はあります。しかし、「もうひとつのドア」のほうがドラマチックに仕上がっています。設定だけに頼らず、キャラクターをきちんと描いたところで差が出たの かな・・・と思います。
こういう話はほかの作家さんでいくらでも読めるので、あの狂おしいばかりに独りよがりな水原ワールド、カムバーック!!
【攻め】国枝政信 ?歳 ヤクザ 一人称「俺」
【受け】上野遥 17歳 高校生 一人称「僕」
【ボキャブラリー】性器=もの アナル=窄まり 精液=熱いもの
わりと直接的な表現はないですね。受けのヨガリ声も「ひぃ」っとか痛い系が殆んど。
【タグ】ヤクザモノ